大石裕一

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大阪府立大学工学部数理工学科卒業。iOSアプリ開発専門の(株)フィードテイラー代表取締役。IT企業ながら残業禁止で副業を推奨する考え方に注目を集める。ハフィントンポスト日本版で副業についてブログ執筆中。代表アプリは天気予報アプリの「そら案内」など。100%子会社のSYNCNEL(株)では法人向けファイル共有サービスを開発/販売している。

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Book+ は PDFやコミックデータの管理と高速閲覧に特化した電子書籍リーダーです。管理のし易さと読み易さに徹底的にこだわって、独自機能を多数搭載しています。

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自炊したPDFを読むため、理想のアプリを開発


―― Book+を開発されたのはどのようなきっかけだったのですか?


大石裕一氏: いわゆる「自炊」というのを好きでやっていたんですよ。『日経ビジネス』とか『日経トレンディ』とかの雑誌を裁断してはPDFにして、iPadで読んでいて、著名なアプリを色々使わせていただいたんですけれども、「ちょっと違うな」というもんもんとした思いがあったんです。それで、せっかく自分の会社がiPhone、iPadのアプリ開発しているのだから、作ってみるかということで社内で開発のプロジェクトをスタートさせたんですね。

――既存のアプリへの不満というのはどんな部分に対してでしたか?


大石裕一氏: 一つはファイルの管理ですね。通常、WindowsでもMacでも、ファイルシステムという概念で、ツリー構造でファイルを管理しているにもかかわらず、PDFをiPadで読もうとなった途端に「本棚」モデルなんですね。確かに本なのでメタファーとして本棚という入れ物があるのはいいんですけど、結局、頭の中ではフォルダ、ツリーを無制限に作れる階層構造で管理している。なぜ、階層構造に制約のある本棚のメタファーにわざわざ落とし込まなければならないのか、という思いがあったんですね。色々な本を自炊していたからかもしれないんですけれど、手元のマシンで整理をすると本棚モデルでは追い付かないわけです。それなら、ファイルシステムをそのまま持ってくればよいということで、MacのFinderライクなインターフェースを持ってきた。社内の人間もそういう風に思っていた人間がいて、その人間が担当のエンジニアなんですけれども、ファイラーを作ることから始めて、自炊したPDFをもっと管理しやすくしようとしたんです。ただ、Book+のファイラーを気に入っていただいている方もいらっしゃるんですけれども、i文庫さんとか、コミック系のビューワーは幾つもあって、やっぱりそちらもすごく人気で、本当に人それぞれですね。本棚モデルの方が簡単でとっつきやすいっていうメリットはあるのかなとは思いますね。

――PDFの管理に関して、ほかに工夫した点、強みはありますか?


大石裕一氏: 管理のしやすさは、探そうと思うPDFにたどり着きやすいということです。普段Macをお使いでしたら多分おわかりいただけると思うんですけれども、Finderには、検索条件が埋め込まれたスマートフォルダっていうのがありますが、そういうフォルダを自由に作ることができるようになっています。例えば『日経ビジネス』というキーワードを含むPDFだけが勝手に入って来たり、直近3日に1度でも開いたことのあるPDFを集めたりする。そうすると読みたい瞬間に『日経ビジネス』の最新号にたどり着くことができます。そのような管理のオペレーションを可能にしているのが特徴です。また、Book+の中にある全PDFの中で、あるキーワードが含まれるPDFを一覧で出す機能は評価していただいています。それと、スマートフォーカスと呼んでいる機能。これは、私自身がiPhoneで、電車の中でつり革を持ちながら片手で『日経ビジネス』を読みたくて、それを実現するためのインターフェースで、段組のコンテンツを読みたい場合にワンタップで終わらせられないかという発想で作りました。ダブルタップすると拡大するというユーザー体験は根付いているので、それを延長するような概念で、ダブルタップの2回目の指を離す前に読みたい領域を設定して指を離すと、そこが読みやすい大きさに表示される、ズームの支援機能みたいなものです。読み進めて、戻って、というのが全部片手で終わるので、そういうことをされる方にはご評価いただいていると思いますね。

端末は出そろったが、いまだ「電子書籍元年」?


――ご自身で自炊もたくさんされているということですが、デバイスはどういったものをお使いですか?


大石裕一氏: iPhoneとiPadがメインですね。koboも持ってはいるんですけど、まだ全然使っていないですね。積読ならぬツンコボになっています。

――koboを使っていない理由は何かありますか?


大石裕一氏: 読書体験としてスムーズ、スマートじゃないなあという感想を持ったんですよね。Appleのデバイスのユーザー体験と比べるとちょっと質が落ちる。届いて箱を開けて読書を始めるところまでのプロセスが、ちょっと違うんじゃないかなという気がしたんです。コンテンツの数をそろえることに奔走しているばかりで、ユーザー不在の感じが見え隠れするので。最近の例だと、新しい書籍一覧っていうのがkoboの楽天さんのサイトに掲載されているんですけど、ウィキペディアのコンテンツをそのまま1冊の書籍データとしているだけみたいなことを平気でやっていたので、それはないよと。結局、iPhone、iPadを使ってPDFで自分で読むか、一つのアプリでコミック全部読めるようなアプリを買ってっていう感じが多いですね。

――iPad、iPhoneとkoboの違いというのは、理念の違いなんでしょうか?


大石裕一氏: ユーザーのことを考えているかどうかだけだと思いますね。もうちょっと読書端末としてしかるべく備わっているものがあるんじゃないかなという点ですね。

――端末が出そろったこともあり、いよいよ電子書籍が出版業界を変えると言われています。電子書籍の可能性についてはどのようにお考えでしょうか?


大石裕一氏: 多分、10年たっても「今年は電子書籍元年だ」って言っていると思うんです。何も変わらないのではないでしょうか。半ばあきらめの感じでとらえていますね。端末が出るたびに「元年」と言っていましたが、さんざん失敗してきていますからね。今回もちょっとなあ、という感じはありますね。技術的なキーワードに書籍の業界の人たちがみんな引っ張り回されているという状況で、しかも引っ張り回されているということにもあんまり気づいていないような感じをお見受けするので、国内では無理ではないかなという感じがあります。

著書一覧『 大石裕一

この著者のタグ: 『開発者』

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