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世界中の本好きのために

加東崇

Profile

2000年、株式会社CSK総合研究所入社。主にゲームのリアルタイムグラフィックス技術の開発に従事し、Wii、PS3、Xbox360など様々なプラットフォームでの開発を経験。主に携わったゲームは、セガのVirtuaFighter5など。2009年に渡米しNAMCO BANDAI Games Americaを経て、現在はシリコンバレーでMobiRocket,Inc.を設立し起業。

App Information

Bookman Pro

BookmanはPDFリーダーとコミックリーダー両方の機能を兼ね備えた高速で高機能な電子書籍リーダーです。
PDFや漫画ファイルはいつでも好きな時にiPhone/iPod Touchで読む事ができます。

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日本の『電子書籍元年』はいつまで続くのか。Amazonが日本で電子書籍を始めれば、ユーザーが電子書籍を読む環境が整ってくる。



加東崇さんは、2000年、CSK総合研究所へ入社。ゲームのリアルタイムグラフィックス技術の開発に従事し、Dream Cast、PS2、Xbox、Wii、PS3、Xbox360などでの開発を経験された開発者でいらっしゃいます。主なゲームはセガの『VirtuaFighter5』など。2009年に渡米しNAMCO BANDAI Games Americaを経て、シリコンバレーでMobiRocket,Inc.を設立。現在iPad用アプリ『Bookman』を開発中です。開発者として電子書籍を身近に感じていらっしゃる加東さんに、『Bookman』の開発秘話や、電子書籍の未来についてカリフォルニアにあるオフィスにてお伺いました。

使いたいアプリを自分でつくるということ


――今現在、加東さんは『Bookman』という、電子書籍のリーダーを開発されていると思うんですが、その開発のお話なども伺えますか?


加東崇氏: Bookmanは主にスキャンしたPDFにフォーカスして、PDFとzipファイルなどを快適に読めるようにするために開発した「電子書籍リーダーアプリ」です。スキャンしたPDFファイルは、PDFの中身がほとんど画像で構成されているため、普通のPDFと比較するとサイズがとても大きいため、スキャンしたPDFファイルをiPadで読もうとすると、読み込む時間がすごくかかる。だから、スキャンしたPDFファイルにフォーカスして、その問題を何とか解決したいと思いました。

Bookman は、読み込み時間をストレスなくできるように、高速に同期するというのが特徴的なPDFリーダーです。iPadが発売された2010年の4月にiPadを手に入れて何をやりたいかといったら、僕はゲームの開発なども出来ますが、なにより自分が持っている書籍をiPadの中で読みたいと思ったんです。特に仕事柄プログラミングの書籍の資料は、500ページあるような分厚い本が多い。それを何冊も持ち歩きたくても、バッグの中に1冊しか入らないという限界があったので、何とかしたいと思った。僕は会社だけではなく、家でもプログラムを書きますから、会社でも家でも同じ本が必要になる。会社、家とどちらの場所でも読みたい時に、本を電子化するというのが一番いい方法だと思いました。それでiPadが発売された時に試しにやってみたんです。
その当時に既に出ていた様々なアプリケーションを購入して確認してみましたが、その当時、ページを1回めくるのに数秒待たなければいけなかった。「これじゃあ使い物にならない」という分かった時に、技術的には、たぶんページをめくる速度は、工夫すれば改善できそうだというのは何となく想像はできましたし、同時に僕は、iPhoneやiPadのアプリケーションの開発にも興味を持っていたので、いい機会だから自分で作り始めてみようと思ったんです。

ゲーム業界で培った技術、ノウハウを、活用する



加東崇氏: iPadが発売されて2週間後から、 Objective-Cの勉強を始めて、作り始めて、比較的スムーズに開発できました。PDFを高速に表示するという部分だけに最初はフォーカスして、数日でプロトタイプを作れた。そのプロトタイプのアプリケーションを友達に見せてみたら「これApp Storeに出しましょう」ということになって、勢いでそのまま申請に出すことになりました。
Appleに申請して、審査を通ってApp Storeに出ました。App Storeに出たということは、一気に世界中にリリースされることですから、反響が大きかったですね。色々なユーザーさんからメールをたくさん頂きました。iPadでやりたいことの中で、電子化した本を読みたいということが結構な割合を占めていたということだと気づいて、これだけの反響を頂けるんであれば、本格的に開発を続けてみようということで、以降開発を続けています。最初のバージョンはサンプルプログラムのようなものでしたが、そこから開発が始まりました。

――メモリの管理なども、とても大変ではないでしょうか?


加東崇氏: そうですね。その当時iPadでもメモリ256MB。iPadのOSの仕様なんですけれど、メモリが足りなくなると、クラッシュするんです。それを防ぐことができないので、アプリケーションの開発者側でできることとしたら、いかにメモリをあまり多く取らないように、負担の少ない中でいかにやりくりするかというところで、そこの技術はまさにゲームの開発と同じような形です。
ゲームの開発も限られたメモリの中で、メモリオーバーしたらそのオーバーした分を確保する手段は存在しませんから、ゲームが動かなくなってしまう。そういうところを事前に計算して、サイズがこの位だったら大丈夫とか全部決めてやりますし、速度の点に関しても、1フレーム分は大体16ミリ秒なんですが、その16ミリ秒内にゲームの1画面を全部レンダリングしたり、キャラクターのAIを動かしたりという、全ての処理を完了しなければいけない。そういったシビアな世界なので、ゲーム業界の中で速度を高速にするというノウハウはたくさんあります。そういったノウハウを応用して、例えばユーザーが何もしていない時にデータを読み込みに行って、その出来上がった先にレンダリングしておいた絵を画面に表示するような形にすれば、実際ユーザーが読む時のタイミングでは、ただ1枚絵を出すだけなので、ページめくりを高速にできる。Bookmanでも、事前に計算を済ませておくという手法を取ることで、高速化を実現しています。

限られた環境の中で最高のパフォーマンスを


――そうなってくると、バックグラウンドでの処理がかなり複雑になってくると思うんですが、そこもマルチスレッドの方式でされているんですか?


加東崇氏: そこも運良く、僕がゲーム業界でやっていた時というのは、PS3やXbox360など、CPUがマルチコア化されてきた時代なんです。そのマルチコア化したものに対して最大限の性能を発揮させるには、全部のコアをうまく使い切るというノウハウが必要でした。ゲーム業界にいる時に、そういう考え方ややり方には慣れていたので、「いつもの仕事」という感覚で、それをそのまま応用しました。
ただ僕はその時にはiPadでアプリを作るという経験がなかった。だからユーザーインターフェースの方はすごく苦手な分野でした。最初のバージョンは、いわゆるiPhone、iPadでよく見るようなアプリのデザインではなく、本当に独自の、良くないデザインで作っていました。ですから、苦手な部分は作り始めてからユーザーのご意見やご要望を聞いて、学びながら、苦労しながらどんどん改善していきました。



――Bookmanは早いだけではなく、動作が気持ちよくできていますね。


加東崇氏: ウェブ上のインターフェースは、パソコン上で動くので環境がばらばらなので、スムーズには動かしづらいというのがありますが、ハードウエアがiPhoneやiPadのように、ある程度固定される環境だと開発側としては、調節はしやすいです。逆にAndroidだと難しそうだとは思います。

――Bookmanはかなりオリジナルに作り込まれているという印象を受けました。


加東崇氏: そうですね、とにかく高速にめくれるというのが、最初特徴になっていたので、それを突き詰めて、実際の本みたいに読めるようにしたいと思ったんです。実際の本を読む時には、バラバラめくるじゃないですか。雑誌とかの場合、そういうようなこともしたいなと思うと、1ページ1ページスライドしていると大変なので、本みたいに一気にバラバラっとめくれたり、1ページずつでもめくれたり、両方対応できるようにと考えて、今のような状態になりました。

――読むだけではなく、メモができる機能などが少しずつ拡張されていますね。


加東崇氏: そうですね。僕は、英語の勉強を今でもずっとやっていますが、英語の文章を読んでいてわからない単語があった時、その時点で1回調べて覚えますが、ページが進んでいくと忘れてしまうことがあります。その経験を踏まえて、iPadで読む時はせっかく色々と電子的なことができますから、1回書き込みやマークをしたら、そのページにいつでも簡単に戻ってこられるようにしたいと思ったんです。今iPad版では、タグテーションをつけたページにボタン1つでポンポン飛んで行ける機能があります。これは、特に学習する時には便利な機能になっています。1回読み終わった後に「復習しよう」と思ったら、最初のページからそのタグテーションしたページだけを順番にどんどんページを飛ばして読んでいけるんですね。これは僕が個人的に気に入っている部分です。

――なるほど。3D系のプログラマーの方は、こういったパフォーマンスが出るようなアプリケーションが得意なのですね。


加東崇氏: そうですね、そういう部分には結構こだわります。エンジニアとしても、この限られた環境の中でどこまで最高のパフォーマンスを出せるかというのは、すごくやりがいのある部分です(笑)。

『ポケコン』との出会い


――iOS以外でも個人として、プログラムを公開されたことはあるんですか?


加東崇氏: ツールのアプリは、学生の時に3Dのデモプログラムを公開していました。その時はXboxの1が出ていた頃です。それに相当するグラフィックスのビデオカードがあって、それをパソコンに差して、限界まで突き詰めて「ここまで出せたぞ」っていうのを自慢したりすることが好きでした。もともと学生の時もずっと3DCGのレンダリングに特化してやっていたので、ツール作りとかはあまりやっていませんでした。
大学は経営情報学部で、経営情報の「経営」の方には興味が全然なかったのですが、「情報」の方でプログラミングの授業がありました。3Dに関しては独学で、自分で作ったアプリケーションとかを先生に見せて、僕から先生に説明するという感じでした。プログラムは高校生の時から興味を持ち始めて、BASICとかC言語を使えるようになっていました。
僕が高校生の時に、友達がプログラミングの本に載っていた小さなプログラムのゲームのコードを全部入力したものが、ポケットコンピュータ(プログラムを自分達で書くことによって様々な動きをさせることができるようになっている機械)で動くのを見せてもらった時に「何だこれ、すごい」と衝撃を受けて、自分も作り始めました。「こんな面白いものがあるんだ」と、どんどん好きになって、独学で研究を進めていったんです。

――では、そのお友達が最初にプログラムに関心があったんですね。


加東崇氏: そうですね。その人に最初は教わったりしました。最初は画面で右ボタンを押したらアスキー文字が出るとか、そういう基本的なところから始まって、それ自体がすごく楽しかったですね。だからミニゲームを作って友達に遊んでもらうっていうのがとても楽しくて、それでプログラミングを勉強していって、結果ゲーム業界に入ったという流れです。僕の高校の時は、パソコンっていうとPC98とかPC‐9821とか、画面が256色とかそういう時代です(笑)。その時はパソコンもすごく高かったので「買って」って言っても買ってもらえなかったし、初めてのPCがPC‐9821でした。

――その時代から、BASICでそこから3Dに行かれるというのは、いばらの道ですね。


加東崇氏: BASICって、絵を表示するとかの簡単なコマンドが最初から用意されているんですよ。だから絵を出すというのはすごく簡単で、最初は2Dのゲームをちょこちょこやっていましたが、時代の流れは3Dになってきていました。プレステやセガサターンは、僕が高校の時に発売されたので、ちょうどその流れに合わせて雑誌とかでも3Dの話題が色々出てきていて、そういうものを見ながら勉強して、自然の流れで3Dになっていきましたね。そこからiOSにつながるんです(笑)。
僕はずっとゲームをやっていたのに何でいきなり電子書籍リーダーなのかというと、単純にiPadっていう新しいデバイスにすごく興味があったのと、もともと何かを作って誰かが喜んでくれるというのがすごくうれしくてプログラマーになったという経緯があったので、そこは全く変わらずに共通しているんです。Bookmanを作って人に見せたら友達が喜んでくれて、自分の奥さんとかも喜んで、「じゃあ使うよ」って言ってくれて、まずは身近な人達のために色々機能をつけましたし、色々なユーザーの方々から要望を頂いたら、そういう方々を喜ばせたいから機能を付け加えていったりしたんです。

どの国の人にも、シンプルかつ快適にストレスなく


――Bookmanに色々機能がありますが、何かこだわりのようなものがあればお聞かせいただけますか?


加東崇氏: スキャンしたPDFを快適に読めることが優先順位としては第1です。こだわっていたのは、あまりごちゃごちゃした機能は入れずシンプルな状態を保ちつつ、一目見て使い方がわかるということを意識しました。シンプルかつ快適にストレスなくということです。

――Bookmanはアイコンや色々なUIの工夫によって、アイコンで直感的にわかるようになっていますが、その辺も試行錯誤されましたか?


加東崇氏: そうですね。最初のバージョンは英語版で出していました。App Storeに出すということは世界に公開するということですし、その時自分がアメリカにいたということもあって、最初から世界の人達をターゲットにすることは意識していました。実は英語がそんなに得意ではないので、細かな文章で説明することは苦手なんですよ。だからアイコンプラスちょっとしたシンプルな一文で伝わるようなことを意識していました。そして、できるだけ日本固有の機能などは入れないようにしました。例えば日本とアメリカとの違いでいうと、縦書き横書きがあるので、ページをめくる方向を変えたりすることが必要になりますが、これは基本的に全部オプションで選択できるようにして、「どの国の人でも使えるように」ということを意識して作っています。

世界中から来るユーザーリクエストに対応する


――色々なユーザーの意見を取り入れていくということなんですが、それは公開しているメールアドレスにリクエストが来るのでしょうか?


加東崇氏: そうです。Bookmanのホームページに問い合わせのフォームがあるので、そこ経由でいろんな国の人からリクエストがきます。日本人よりも、アメリカ人からの方が多いですね。いろんな国の方からメールが来ているんですが、みんな英語でちゃんと書いてくれるので、厳密にどこの国の人かというのはあまりわからないんです。メールアドレスがフランスだったりとかドイツだったりとか、バラバラですね。不思議とそのユーザーさんの国の言葉で書いてくるという方は少ないくて、日本語か英語が主です。リクエストに応えながらバージョンアップを繰り返し、今はバージョン3になりました。

――それでは、頻繁に来るリクエストは実装を終えたという感じでしょうか?


加東崇氏: そうですね。まだちょくちょくは来ますが、おおむね実装できたと思います。

――リクエストに関してはお一人で全部対応をされているのですか?


加東崇氏: そこがなかなか大変なところの1つなんです。メールでのサポートは、一人で開発している場合、そこに結構な時間はかかるので大変です。数で言うと、1週間で20通、30通です。リクエストとは別に、単純に褒めてくれる方もいらっしゃいます。特にアメリカの方とかは「褒める」というのがみんなすごく好きですね。そういうメールは、本当にうれしいですよね。そういうことが自分のモチベーションにつながって、次のアップデートにつながります。
リクエストに関してなのですが、Bookmanはあくまでシンプルな電子書籍リーダーとして必要な機能を最低限入れた上で、ユーザーの方からの要望をいただいて、すでに実装されている機能と似たものでも、そのアイデアを基により洗練させて公開していきます。だからほとんどがユーザーのみなさんの意見を取り入れた結果なんですね。逆に自分の意見を取り入れている部分があるとすれば、本当に全部の機能を入れてしまうと複雑になってしまいますから、「シンプルを維持するために、その機能は入れられない」という判断ですね。

今後は、Bookmanをマルチプラットフォーム対応にしたい


――今後の課題といいますか、今バージョンアップのためにされていることみたいなものを伺えますか?


加東崇氏: 今後の課題としては、PCやMacでも読めるようにしたいなと思っています。それは何故かというと、電子書籍はAmazonで全部購入してKindleやMac上で読みます。後半の電子書籍についての話と被りますが、Amazonで買ったものはもちろんiPadでも読めるし、Kindleでも読めるし、クラウドリーダーというAmazonが出しているブラウザ上のリーダーでPCでもMacでも読めます。僕の用途としては家にいる時はiPadとかKindleで読むんですけど、会社にいる時はパソコンで、電子書籍の技術資料も画面に表示しておきながら作業したいので、ブラウザのクラウドリーダーで読むんです。だからパソコンで見られるというのは、かなり便利だなと思っています。



今スキャンしたPDFをパソコンで見ようとしても、iPadみたいな感覚で見られるわけじゃないから、そこを何とかしたいなというのがあります。それはユーザーの方からの要望も多いですね。マルチプラットフォームの対応になってくると、次にストレージを共通化して1ヵ所に置いて全部で見られるようにしたいんですが、クラウド化ができればすごくいいなと思っていて、色々調査はしています。そこで難しい問題が、個人で開発している状態だと、クラウドの有料サービスを作ったとしても、セキュリティーとか信用とかで危ないとこがある。技術的には解決できたとしても、色々難しい面は多いので、そこは大きな課題で思い悩むところですね。

――そうですね。後、クラウドでストレージを取っていると、定額課金みたいな形になりますよね。


加東崇氏: 今Dropboxとか色々あって、価格も徐々に落ちてきてはいるんですが、もう少し電子書籍とかに特化して、電子書籍をただ置いておくだけとか、画像を置いておくだけとか、ある程度使用目的を特化させればもう少し安くはできるだろうというので考えています。

――それを本当に実現させるには、さらに手が増えないと難しい感じですね。


加東崇氏: そうですね。プラットフォームを1つ増やすと、プログラミング言語が変わってしまうので、そこは個人の開発者にはすごく難しいところですね。

――iOS版のBookmanに絞っての機能改善はお考えですか?


加東崇氏: 今は今後大きな機能が入るっていうのはあまりないのですが、細かな不具合の修正だったりはやっていますね。

電子書籍の普及で感じるメリット


――電子化や電子書籍の普及で今と昔、変わったと思われることはありますか?


加東崇氏: 僕の経験の中では、本当にメリットばかりです。1つは気軽に本を買えるようになったこと。今までは注文してから何日か待たなくちゃいけないかったので、急いでいる時とかは大変でしたが、今はプログラムしていて「ここもう少し詳しく調べたいな」という時に、Amazonで関連する本を探して、購入したらその場で、その瞬間に読めるようになる。そういう部分が、今までとは全然違って、時間がかなり短縮されて効率的になりました。例えば英語の書籍を読む時に、今までだと別のアプリや「英辞郎」などを開いて、英語のわからない単語を調べたりしていたけれど、AmazonのKindleだったらその単語をタップすれば辞書が出てきて、その画面の中ですぐ把握できるので、これも時間の短縮につながっているし、すごく便利です。

後は、環境を選ばずに読めるようになったということですよね。先ほどもお話ししましたけど、家にいる時は中ぐらいのサイズのKindleやiPadでソファに寝転がりながら読む、外にいる時、誰かと待ち合わせで暇だなっていう時とかはiPhoneで読む、会社にいる時はクラウドリーダーで読むことができる。それによって自分が本を持ち歩くっていうことを考えなくてよくなった。持ち歩かなくても、どこでも本はあって、ネットさえあれば見られる。特にiPhoneは常に意識せずに持ち歩いている状態だから、最低限iPhoneがあればどこででも見られます。
その場所に合わせた最適なデバイスで読めるようになったというのは本当に大きいですね。逆に昔と変わらないという部分では、英語の勉強の時などで、書き込む必要がある書籍を読む時は、僕は今でも紙のものを買っています。書き込む場合って、やっぱり実際に書き込めるサイズじゃないと不便です。拡大してから書き込むというのは大変だし時間がかかる。どんどん書き込んで、少しずつボロボロになっていく感もすごく好きです(笑)。「これだけ頑張って色々勉強したぞ」とかそういうのもわかりますよね。書き込む必要があるものに関しては紙の本を使っています。

――書いた方が覚えやすいとかそういうのもありますよね。


加東崇氏: もちろんKindleとかでも、ちょこちょこ線を引いたりとかはできます。でも、記憶に残るのはどちらかというと、自分で手書きした方が記憶に残りやすいですよね。
アメリカに住んでる日本人にとっての電子書籍のメリットは、日本の書籍を日本の価格のまま購入できることです。今までは日本の書籍を買おうとすると、アメリカにある日本語の書籍を扱っている本屋さんに行って購入する。でも値段が1.5倍ぐらいして、高いんです。だから『ジャンプ』とかもあまり買う気にはなれないんです。でも今では日本の電子書籍のストアで、日本で発売された日にそのまま日本の価格で購入できるので、距離を感じずに見ることができるようになった。それは大きいです。だから外国にいる人にとってはすごくメリットがあると思います。
それと、Amazonに限った話かもしれないですけど、プライムっていう有料のメンバーサービスがあって、それに入っていると月に1冊無料で好きなのを読めるので、そういうサービスもいいですね。新刊を読めたりするんですよ。そういうメリットばかりですね。

電子書籍の未来として、予想できること


――今後電子書籍と言われるものというのはどのように進化していくと思いますか?


加東崇氏: 今アメリカは先行してAmazonの電子書籍が出ているのでイメージはわきやすいんですけど、便利であることは確実にわかっていて、後は時間の問題で自然にどんどんみんなに浸透していくものだと思います。僕の想像では、良い意味で2、3年後ぐらいにはあまり話題にもならないくらいに普通なことになっているんじゃないかなと。例えば今音楽をiTunesで購入できて、CDを買わなくてもそのまま直接聴けるとか、誰ももう話題にすらしない。そういう感覚で電子書籍も当然のように普通に買えて、どこでも読めるという風になるんじゃないかなと思います。



音楽と違うのはインターフェースが変わること。音楽はCDであろうとMP3ファイルであろうとイヤホンで聞くことには変わらなかったから、移行は比較的簡単だったと思うんですが、電子書籍は紙で読むものから、iPadなどのデバイスに変わるので、そこは結構大きな違いです。ほとんどが電子書籍になるということはなくて、やっぱり紙も並行して出版され続け、大きな割合で残っていくとは思います。
デバイス側に関して僕が期待しているのは、Amazonから購入した電子書籍がAmazonのデバイスでだけ読めるという風になっていると、機能には不満があります。Kindleは便利ですけど、色々不満点もあって、こういう部分を改造したいなあというのもある。今はそういうことができないので、いずれはサードパーティー向けにAPI(プログラミングインターフェイス)とか公開してもらえるようになれば、いろんな本を読むためのソフトウエア・アプリも出てきて、勉強する時はこのアプリとか、単純に小説とか読む時はもっとシンプルなこっちとか、ユーザーの好みとかに応じて使い分けができるようになればいいなと思います。

――Googleクロームのアドオン(ソフトに機能を部分的に追加する小さいソフト)のような感じでしょうか?


加東崇氏: そうそう、そういうのに期待したいですね。日本の方については、電子書籍元年がいつまで続くのかというところですね(笑)。なかなか本命が立ち上がらない。
日本って電子書籍を買う時に迷いが出ませんか?「ここのストアで買って大丈夫かな、ずーっと将来まで読めるのかな」って。電子データだから永久に残るはずなのに、そのストアが閉じたらもう読めなくなっちゃうという心配があるし、アプリケーションはずーっとバージョンアップしていくのかという不安もある。ストアにビューアーがひも付いているので、それもすごくユーザーからすると問題ですよね。Amazonでは、ユーザーさんは購入することに対しての不安はなくなるとは思うんですが、後はもう少し色々欲が出てきて、もっと使いやすいビューアーを作ってくれとかそういうフェーズになっていくと思うので、早くそうなってほしいですね。

――では仮に今Amazonのビューアーでプラグインが出たら、またBookmanバージョンを作りますか?


加東崇氏: やっぱりAmazonもね、ページ送りが遅いんですよ(笑)。1ページずつしかめくれないし、ページジャンプする時とかも探すのが大変だったりと色々不満点はあります。シンプルな機能を維持しているというのはわかるんですけど、もうちょっと自分で改良できればと思いますね。

著書一覧『 加東崇

この著者のタグ: 『開発者』

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