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世界中の本好きのために

池田紀行

Profile

1973年横浜生まれ。事業会社、マーケティング会社、ビジネスコンサルティングファーム、マーケティングコンサルタント、ネットマーケティング会社クチコミマーケティング研究所所長、バイラルマーケティング専業会社代表を経て現職。キリンビール、P&G、トヨタ自動車などのソーシャルメディアマーケティングを支援する。宣伝会議、JMA(日本マーケティング協会)講師。『ソーシャルインフルエンス』『キズナのマーケティング』(アスキーメディアワークス)『ソーシャルメディアマーケター美咲Ⅰ/Ⅱ』『Facebookマーケティング戦略』(翔泳社)など著書多数。専門分野においてメディア取材や連載など、各種メディアでも活躍中。

Book Information

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ソーシャルメディアとしての電子書籍


――本と出会う場、買い方などにも変化が出てくるでしょうか?


池田紀行氏: 本屋さんというのは、すごく良い刺激のある場ですよね。本は、編集の方と著者が、いかに手に取ってもらうかと、一球入魂でタイトルや装丁を考えています。本屋に行くと、本と向かい合って、興味がある、ないを一瞬で判断するわけですが、それはすごく良い体験というか脳の刺激になると思うんです。自分が今何に興味があって、興味がないのかということを外的な刺激によって気付かされる。いつも行く本屋さんだと動線が決まってきてしまって、目的の棚まで最短距離で行ってしまうことも多いのですが、いつもなら行かないようなコーナーに行くことも大事で、そういう時に新たな発見があったりもします。そういった新しいキッカケが電子書籍の世界で作られると良いですよね。Amazonでも、「この商品を買った人はこんな商品も買っています」というレコメンドがありますが、そこに過去の購買データを基にしたマッチングだけでは見えてこないものを、演出できるとすごいことだと僕は思います。普通なら絶対この本に興味は持たなかったけれど、読んでみたら「なるほど!」と多くの気づきを得ることがある。電子書籍が、今までにはない本と人の関係をつくれたら、全く新しい世界ができるんじゃないかと思います。

――電子書籍にはソーシャルメディアとしての可能性もあるということでしょうか?


池田紀行氏: そうですね。人間の興味は難しいもので、意識していないと、テレビCMはスルーされるし、雑誌の広告も目に入らない、ネットで検索もしてくれない。でも、仲の良い友だちが、TwitterやFacebookでタイミングよく投稿していたりすると、新たに興味がわくこともある。ネットの広告は、ラストクリックといって、最後にクリックして買ってくれた流入経路が評価されます。そんな中、ソーシャルメディアは、一番最初の興味のとっかかりをつくるファーストクリックを生んでいるんじゃないか、という仮説があります。最初に興味を持ってもらう、出会いを作るというソーシャルメディアの可能性と、本が組み合わさると、より人生が豊かになるんじゃないかと思います。
どういう趣向や好み、価値観を持っている人が、どのような思いでどんな本を読んだのか、あるいは、どこで読むのをやめてしまったのか。そういった、いわゆるビックデータから、最適なレコメンデーションができると、とても面白いんじゃないでしょうか。あと、読んだ後に「この本は素晴らしかった」「途中でやめちゃった、なぜならば」といったものが、簡単に記録できていくと、より精度が上がるような気がします。



待たれる「編集者2.0」の出現


――本の作り方、編集の仕方も変わってくるのではないかと思いますが、編集者はどのような存在だと思われますか?


池田紀行氏: 僕は昔から編集者さんとのご縁には恵まれているんです。読者の視点に立って、「こういう風に書きましょう」とか、「順番を入れ替えましょう」などといって、別の視点を与えてくれたり、視野を広げてくれます。僕は編集者がいなかったら、今までの本は全て出版できなかったとすら思っています。だから、僕の場合、著書は全て編集者の方との共著といった感覚があります。
今、Amazonでは、自分で電子書籍が出せるようになっていますが、皆が書けるようになるほど、編集されたコンテンツの価値はむしろ上がると思っています。本屋に並んでいる本ですら全部読めないのに、この忙しい日常の中で、誰なのかも知らない素人が書いた本を読んでくれる人なんて少ないですよね。読まれる本や文章は、プロの編集によって成る。だから、編集者の価値はより一層上がっていくと思います。

――電子書籍の編集者には、今までの編集者と異なる資質が求められるでしょうか?


池田紀行氏: LINEの執行役員である田端信太郎さんが、昔は情報を「噛む」時代で、今は情報を「飲む」時代だとおっしゃっていて、「まさにその通り!」だと思っています。10年前の新聞やブログの時代なら、まとまった文章を10分くらい読んで、噛んで情報を咀嚼してくれたけど、今のニュースフィードやタイムラインの時代は、ものすごいスピードで情報が流れて行くので、どんな良いことが書いてあっても、噛まなきゃ飲み込めない文章は読み始めてすらもらえません。目に入った一瞬で「おもしろそうだ」「自分に関係がありそうだ」と思ってもらえ、クリックした後は30秒~2分くらいで1つの情報を飲み込めなきゃダメ。そのように、情報の取得に対する態度が変わってきている中で、「飲む編集コンテンツ」を作れるプロフェッショナルはますます必要になって行くと思います。例えば、本は200ページ、10万字という噛む情報の典型ですが、10分の1の1万字で値段が150円という形態もあるかもしれません。流通コストや印刷コストなどが下がって、電子書籍ならば固定費や在庫コストがほとんどかかりません。編集の手間は、1冊作るのに10分の1にはなりませんが、飲むコンテンツを作ることに長けた編集者と著者が組めば、新たな電子書籍のマーケットが立ち上がっていくかもしれません。情報の取得環境に合わせた「編集者2.0」という感じの人が出てきたら、150円の電子書籍で300万部売る、なんていう次世代のヒットメーカーが出てくるかもしれませんよ。

――読者が良質なコンテンツを選ぶことの難しさもあるのではないでしょうか?


池田紀行氏: 今のネットはPV至上主義だから、とにかくクリックされることが重要とされます。だから、「何々をするための6個の法則」などベタな釣りタイトルが多いわけですが、みんなそのうち学習します。読者が釣りタイトルや釣り記事にだまされなくなり、既存のレビューシステムの弱点(一部の強い意見に全体の評価が引っ張られてしまうこと)が解決されたとき、本当の電子書籍の未来が広がっていく気がします。

――ご自身の、今後の作品の構想をお聞かせください。


池田紀行氏: 僕は本に育てられました。だから、これからも、読むだけじゃなくて、書く側でもありたい。自分の人生を変えてくれた本というものを通して、恩返しをしていきたい、そんな気持ちです。これからも、自分が感じたこと、体験したことを形式知化して、人に伝えるということを続けていきたいと思います。2014年1月に、共著で新刊を出す予定がありますが、いずれはマーケティング以外の本も書きたいと思っています。いま英語を勉強しているので、1年後には『40歳から英語がペラペラになる方法』という電子書籍を80円くらいで売っているかもしれません(笑)。

(聞き手:沖中幸太郎)

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この著者のタグ: 『チャレンジ』 『コンサルティング』 『ソーシャルメディア』 『マーケティング』 『変化』

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