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世界中の本好きのために

中島隆信

Profile

1960年生まれ。 慶應義塾大学経済学部卒業。 現在は、慶應義塾大学商学部教授を務める。商学博士で、応用経済学を専門としている。 また、大相撲にも造詣が深く、日本相撲協会「ガバナンスの整備に関する独立委員会」委員も務めた。 日経・経済図書文化賞を受賞した「障害者の経済学」や、「オバサンの経済学」(共に東洋経済新報社)、 「大相撲の経済学」、「お寺の経済学」(共にちくま文庫)、「これも経済学だ!」、 「子どもをナメるな―賢い消費者をつくる教育」(共にちくま新書)、「刑務所の経済学」(PHP研究所)、 「こうして組織は腐敗する」(中公新書ラクレ)など、数多くの著書を執筆している。

Book Information

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書評委員が本を手に取る基準


――研究室に雑誌をたくさん集められていますが、書店には頻繁に通われていますか?


中島隆信氏: 最近はもっぱらインターネットの書店を利用しています。今、僕は読売新聞の書評をやっているので、送ってくるのもありますし、読書委員会に出ると本が置いてあったりするので、仕事で強制的に読まされる部分はあります。だから自分で書店に行って読みたいものを探す機会はあまりないかもしれませんが、書評をする機会を与えていただいて、ずいぶんいい本にもめぐり合いました。

――本を手に取る基準はございますか?


中島隆信氏: 書評の仕事では、読書委員会のメンバーの中に経済学者は僕しかいないので、僕の責任かなと思って手に取ります(笑)。それ以外ではタイトルがまず重要です。「どういう視点でこの本は書かれているのか」「どのぐらい著者が深く考えたのか」ということ探りながら、新しい視点や考え方を提供しているかということを見ます。ただ、読書委員会では中を深く読み込むわけではないので、全部もち帰った後にしっかりと読みます。もちろんタイトルだけで売ろうとしている本もありますが、中身を少し見ればすぐ分かると思います。本を選ぶ時には、メッセージ性があるかないかという点は非常に重要だと思います。

活字のもつ力を大切にしたい


――電子書籍が普及し始めたという状況の中で、今後の編集者・出版社の役割をどのように考えられていますか?


中島隆信氏: いい書き手を見抜く力をもっていただきたいです。今はあまりにも情報量が多すぎて、本を読む側、情報を受ける側にとって、取捨選択にかかるコストがものすごく高くなっています。だから簡単に書けて、売れるものにどうしても行ってしまいがちですが、恐らく本は、字を通して頭の中に入ってくるという意味では、テレビの映像や漫画とは全然違うと僕は思います。楽しみという点で言えば漫画は大事ですが、自分の血となり肉となるような知識を身に付けるという点では活字は外せないと思います。

――能動的に読むということが重要だということですね。


中島隆信氏: 僕はそう思っているので、活字のもっているその力を、もっと編集者の人も大切にしてほしいです。僕自身は、今まで非常にいい編集者の方に恵まれてきましたが、世の中にどんどん本が出ていく中で、「1つ1つの字、文章をどこまでじっくり考えて活字にしたのかな」ということをちゃんと評価できるような人が、編集者になっていただけるといいと思います。

――電子書籍はご利用されていますか?


中島隆信氏: 僕は、本を読みながら付せんを付けますが、後で「どこに書いてあったかな」とそれを探すのに苦労するのが、書評の仕事では一番困ります。だから検索機能のある電子書籍だとありがたいなと思います。あとは、本がどんどんたまっていってしまうので、電子書籍にはその点に関してはメリットがあると思います。僕はハードウエアというよりは、むしろ中身がしっかりと伝わればいいと思っているので、それが本という形であろうと電子媒体であろうと、あまり抵抗がありません。だから今まで「電子化してもいいですか?」と言われた時は全部オーケーしています。

――研究論文に関しては、ほぼ電子化されているのでしょうか?


中島隆信氏: 1990年代ぐらいから全部電子で、論文をコピーするということはなかった。書籍はあまりもってなくて、ほとんどが論文ですが、論文も要は中身だから、それが紙だろうと画面上であろうと、あまり関係ありません。もちろん本を書く立場からすると、本という形として残るというのはなかなかいいものだなとは思うんです。だけど、読む側からすれば、特にこだわりはあまりないのかもしれません。

図書館での予約待ちより、安く電子書籍を買ってもらうシステムを


――電子書籍だからこそできるものもありますね。例えばBOOKSCANでは、音声読み上げ機能などを実装しておりまして、大変ご好評いただいています。


中島隆信氏: 弱者に対して優しい商品を作ると、結果的にそれが新しいマーケットを作るということがあると、僕も何かの本で読んだことがありますので、そういう視点から考えていくというのは大事なことだと思います。目が見えない、耳が聞こえないなど、そういう方が最初からあきらめているようなことを、技術によりクリアすることによって、実はほかにも潜在的にそういうサービスを必要としていた人がいたということですね。我々も、目の使えない状態におかれることもあるわけだから、そういう場面でも使うことができます。

――そのほかに電子書籍に望まれることはありますか?


中島隆信氏: 図書館がベストセラー的な本をたくさん入れてしまうので、本来ならば書店さんを通じて買われていくはずの本が、図書館の順番待ちのような感じになってしまう。それは僕も非常に気になっています。1500円と高いからいう理由で、1冊の本を3人が図書館で借りるのならば、それよりも、その3人が電子書籍で500円の本を買ってくれる方がよっぽどいいと思います。図書館は研究書などなかなか買えないような高い本や貴重な本などを置くのはいいと思いますが、ベストセラーや新書を置かないでほしいと僕は個人的に思います。
あと、電子書籍に僕が望むのは、絶版やこれ以上刷らないという本が電子書籍で手に入るようにするということです。特に我々の分野だと、学術書など学生に読ませたい本があっても「もう手に入らない」ということもあります。もちろん大勢の読者がいないわけですから1000冊、2000冊増刷するというのは恐らく無理だとは思いますが、電子書籍ならば増刷の必要がないわけなので、そういうものは電子書籍として版権を安く買い取って電子化していただきたいなと思っています。

経済の面白さを理解してもらう活動を行っていく


――今後はどのような展望を描かれていますか?


中島隆信氏: 僕は経済学者としては2本足でやっていこうと思っていて、1本の方はいわゆる経済学研究で、もう1本は一般の人にちゃんと経済学の面白さ、大切さを分かってもらうようなものを本で執筆するといった活動を行っていこうと思っています。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 中島隆信

この著者のタグ: 『経済』 『考え方』 『モチベーション』 『書店』 『図書館』 『経済学者』 『活字』

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