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世界中の本好きのために

中島隆信

Profile

1960年生まれ。 慶應義塾大学経済学部卒業。 現在は、慶應義塾大学商学部教授を務める。商学博士で、応用経済学を専門としている。 また、大相撲にも造詣が深く、日本相撲協会「ガバナンスの整備に関する独立委員会」委員も務めた。 日経・経済図書文化賞を受賞した「障害者の経済学」や、「オバサンの経済学」(共に東洋経済新報社)、 「大相撲の経済学」、「お寺の経済学」(共にちくま文庫)、「これも経済学だ!」、 「子どもをナメるな―賢い消費者をつくる教育」(共にちくま新書)、「刑務所の経済学」(PHP研究所)、 「こうして組織は腐敗する」(中公新書ラクレ)など、数多くの著書を執筆している。

Book Information

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数学が好きだったが、理数系に進まず経済学部へ


――経済学を研究していこうと思われたというのは、きっかけはあったのでしょうか。


中島隆信氏: 理科系に進むということを考えていませんでしたが、僕は中学・高校時代から数学が好きだったので、文系の中でも一番数学的なものを使うのは経済学だということで経済学に行きました。研究者になるつもりはあまりなく、大学のゼミに入ってコンピューターを使って計算をやっていたんですが、それが面白かったので大学院に行き研究を続けることにしました。

一般的な本を書き始めた偶然


――学術論文とは違った一般向けの本を書くようになったきっかけは何だったのでしょうか?


中島隆信氏: 全く偶然としか言いようがないです。『大相撲の経済学』を書く前に東洋経済新報社から『テキストブック経済統計』などの教科書をいくつか出していて、編集の方と付き合う機会があって、たまたまその時に「大相撲で経済学の本を書けそうだな」とひらめいたんです。それで担当者にメールを送ったら、相手の方も「すぐに話を聞かせてくれ」ということで話が進みました。だから『大相撲の経済学』は僕がもち込んだ企画なのです。どうせ書くならあまり専門的なものではなく、一般の人に分かってもらえるように易しく書こうと思ったのです。

――タイトルや、「力士も会社人間だった」という文なども、編集者の方とのやり取りから生まれたのでしょうか?


中島隆信氏: まさにそうでした。相撲界というのは、例えば彼らは一升瓶を1日で空けてしまう、食べる量がすごいなど、いかに特殊で変わった人たちがいるのかということが、一般的には面白がられるので、相撲を特殊化したがる。そうすると、彼らが変な連中であるかのように刷り込まれますし、そういうことを伝えることが、大相撲を伝えるメディアの役割のようになっています。でも、僕はあの特殊な世界の人たちが、いかに普通なのかということを示したかったわけで、そこがほかの本と決定的に違うところだと思っています。

書く時のモチベーションが一番大切


――経済学というものを根幹にして語られていますが、先生の中では執筆に対するどのような思いがございますか?


中島隆信氏: 書く時のモチベーションのもっていき方というのが大事だと思っています。頼まれて書かなければいけない原稿に関しては自分でやる気も起きるけれど、書き下ろしの原稿などは、普段の仕事と直接関係がないので、はっきり言えば書いても書かなくてもいいかもしれない。そういうものを書く時にやる気を高めていくには「よく分からないものをこじ開けたい」「こういう見方で見るとこんなに面白いんだ」というようなものを自分なりに見つけることが大事なのです。

――書いている先生ご自身も書きながら楽しむという感じでしょうか?


中島隆信氏: 楽しむというよりはテンションが上がって、書いている時はまさに興奮状態です。またそういう状態で書かないと、文章が生き生きとしないのです。僕の場合は執筆が始まるとすごく集中するので短い時間で書きます。

執筆テーマは、すべてが1つにつながっている


――先生が本のテーマに選ぶ基準は何でしょうか?


中島隆信氏: すべてつながっているような感じがあります。例えば大相撲からお寺のテーマに移る時は、必然的なつながりはなく、『大相撲の経済学』を書き終えた後に編集の人と「次は何にしましょうか」とそういう感じで話していました。当時、僕は財務省の研究所で非営利組織の研究をやろうとしていたので、「宗教法人がいいかな」ということで、身近なお寺をテーマにやってみようと取材を始めたのがきっかけです。ただ、1冊の本にするには面白いことを色々と並べるだけではだめで、そこに核になるものが必要です。『お寺の経済学』の場合は核になったのが沖縄のお寺でした。ゼミの学生で沖縄出身の子がいたので、沖縄のお寺についてと聞いてみたら「沖縄のお寺はいわゆる檀家がいない。どのお寺もみんな小さい」という話だったので沖縄に取材に行きましたが、あまりにも本土のお寺と違うので驚きましたし、沖縄のお寺の姿に本土のお寺の将来像を見たような気がして「これは本になる」と直感的にひらめきました。檀家制度がないとこうなるよということのすべてが、沖縄のお寺に集約されていたわけです。

――「偶然」と「たまたま」という言葉がキーワードで出ましたが、何か必然を感じるような出会いもありましたか?


中島隆信氏: そういう出会いもあります。障害者をテーマにした経済学を書いたのは、自分の子供が障害者だったからなのですが、それを経済学的視点から見ることはあまりしていませんでした。でも、ある程度子供が大きくなって、親として子供の障害を客観的に見る立場に立たされるようになって初めて『障害者の経済学』というのができるのではないかと思うようになりました。もう少し前だと子供に対する思い入れが強すぎて、暑苦しい本になっていたような気がしますので、障害者の本を書くのには、その頃がタイミングとしてもちょうど良かったと思っています。当事者たちが読めば納得できるのかもしれませんが、その問題を当事者だけでシェアしているだけではだめで、一般の人、関係のない人に理解してもらう、読んでもらうということが大事だと僕は思っていますから、自分自身が一歩引いたところから見ていなければ世間一般の人には理解してもらえないと感じています。

著書一覧『 中島隆信

この著者のタグ: 『経済』 『考え方』 『モチベーション』 『書店』 『図書館』 『経済学者』 『活字』

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