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世界中の本好きのために

鬼塚忠

Profile

1965年、鹿児島県生まれ。 大学在学中に英国留学し、卒業後2年間かけて世界40か国を放浪。1997年より2001年まで海外書籍の版権エージェント会社「イングリッシュ・エージェンシー」に勤務。映画の原作、ビジネス書、スポーツ関連書籍など年間約60点の翻訳書籍を手掛ける。その後、日本の作家エージェントを志し、2001年、アップルシード・エージェンシーを設立。現在はエージェント業務の他、自身でも小説を執筆。手がけた作品が映画化、舞台化されるなど、「本」の枠を超えて注目されている。著書に『Little DJ―小さな恋の物語』(ポプラ文庫)、『花いくさ』(KADOKAWA)、『恋文讃歌』(河出書房新社)、『鬼塚パンチ!』(KADOKAWA)など。

Book Information

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自分が面白いと思うものを売りたい



鬼塚忠氏: 海外の全く知らない文化を日本で誰よりも早く触れられるということで、はじめは楽しかったのですが、だんだんとつまらなくなっていきました。ハリウッド映画の原作のエージェントをやって『アルマゲドン』という映画の原作の権利が高い金額で売れた。でも私は、字幕もない来たばっかりの映画を見て、「暴走族のあんちゃんと土木作業員のあんちゃんが組んで、隕石をぶち壊して地球を救うって、荒唐無稽も度が過ぎるんじゃないか」と思いました(笑)。その頃からだんだん自分でいいと思わないものを売ることに対して嫌気がさしてきたんです。

そこで、コンテンツを自分で作ろうと思って社長に言ったのですが、社長は、日本で海外作家のエージェントをするのがミッションだと考えていて、その姿勢を崩さなかった。だったら独立するしかない。はじめから独立したかったわけではなく、自分のしたいことをするために必然的にそうなりました。会社の規模を大きくすると、自分の知らないものが出版されて、自分の手の届く範囲ではないところで、社員が勝手に売っていくことになる。それは不本意なので、規模の追求をしないと決めました。

――その後は作家のエージェントとしてヒット作を連発することになります。


鬼塚忠氏: 昔、出版の業界は「偉い人が偉そうに時代を見て仕事をする」と言われていて、それは違うと思っていました。自分の好きなものをやってウケるのが一番ですからね。でも、今はやっぱり時代を見るというのも重要だと思います。電子書籍も現れるし、出版不況で、どんどん出版の市場が小さくなっています。作りたいものが年を経るごとに作れなくなってくる。15年間とか20年間かけてやりたいと考えていたものを、5年間ぐらいに凝縮して捨てていかないと、その後どうなるかわからない。個人的にも自分のやりたいことを、この3、4年間ぐらいに凝縮しています。出版業界にいる人の99%は危機を感じていると思うのですが、その中の半分ぐらいの人はもうだめだと思っていて、半分ぐらいの人はそれをどう打開していこうかを考えている。5、6年前ぐらいまでは、紙に印刷をしてISBNを付けて流通を通して流すということが絶対条件だった。今それにこだわると落ち込むばかりです。違うことを考えていかないと、収益の上がらない仕事になっていくので、出版を中心に映画や舞台など、幅広いコンテンツを扱っていかないとと思っています。

――鬼塚さんご自身も書き手として活躍されています。


鬼塚忠氏: メインの仕事はあくまでエージェントで、余った時間を自分のために本を書くことに充てている感じです。先日、ある人の出版記念パーティーに行ったら、ある新聞の拡張員が「人が知らないことを書かないと価値がない」って言っているのを聞いて、なるほどと思いました。次にお会いしたテレビショッピングの構成作家が「30分で1億5000万売れたよ。私の文章力はすごい」って言う。そしてバラエティー番組の構成作家に会うと「私の文章で何万人の人がテレビの前でゲラゲラ笑っている」と言っていました。そこで、文章の価値を考えました。私の『海峡を渡るバイオリン』はドラマになりましたが、テレビで1400万人、DVDや再放送で600万人、合計2000万人の人が見て、600万人が泣いたとプロデューサーが言っていました。それを聞くとものすごいエクスタシーを感じます。本は10万部でも「バンザイ」って言える。でもドラマ化されたことで600万人を泣かせた。これがもしリアルだと、目の前の一人に伝えることがやっとです(笑)。そう考えると、執筆欲がすごくわきます。「社会のためになることを」とは考えていません。結果的にはそういう風になるのかもしれないのですが、世間を騒がせたいとか楽しませたいということが第一です。



世界に羽ばたこう



鬼塚忠氏: 特に女性と子ども向けの感動させるものを書きたいですね。以前『Little DJ~小さな恋の物語』を読んだ女子高生からファンレターを頂いたのですが、その手紙の私からの返事に、高校生だけでなく理事長までもが感動してくれて、卒業式で全校生徒の前で読んでくれたらしいのです。

――どのような内容だったのでしょう。


鬼塚忠氏: 高校生は「医療関係のなんとかに絶対なる」と、強気なことを言います(笑)。目標を持つのは大いに素晴らしいことですが、私は「けれどあなたは人生の何も知らない。今から目標を作ることもいいのだけど、目標だけを定めるとそれ一つしかない狭い考えになってしまう。だから、もっともっと世界を見なさい」と伝えました。「人生で大きなチャンスは必ず巡ってくるから、その時にチャンスをチャンスであると見極める力と、そのチャンスを見極めた時にそれをものにする力や教養を付けるために、日ごろから勉強してください」と書きました。

――目標に向かって「頑張れ」ではないのですね。


鬼塚忠氏: 「楽しく生きよう」ということしかないですね。人生はあまりにも短い。私は私で楽しく生きるので、あなたはあなたで楽しく生きてくださいということです。ビジネスパーソンは、もちろん仕事ができること、お金を持っていることは重要ですけれども、いくら仕事ができてお金があっても、文化について何にも知らないといい人生とは言い難い。どんなに忙しくても、ちょっとぐらい本を読んでくださいと言いたいです。お話しして面白い人になってほしい。金稼ぎも重要ですが、バランス感覚を持って、つまらない人間だけにはなってほしくないですね。

私自身の楽しみの先にある挑戦は世界です。コンテンツで世界を目指したい。うちの会社は社員が私を含めて四人いて、つまり四つの頭脳と八本の手を持っている。この頭脳と手で、できるだけ多くのことを深く、その中で芽があるものを少しずつ伸ばして世界に持っていきます。黙っていけば保守的になっていきますから、できるかできないかは別として「挑戦する」ことが重要なのです。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 鬼塚忠

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