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世界中の本好きのために

辻野晃一郎

Profile

1957年、福岡県生まれ。慶応義塾大学大学院工学研究科修了、カリフォルニア工科大学大学院電気工学科修了。ソニーにてVAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等のカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月に退社。翌年、グーグルに入社し、その後、グーグル日本法人代表取締役社長に就任。2010年4月にグーグルを退社し、アレックス株式会社を創業、現在に至る。 著書に『成功体験はいらない』(PHP研究所)、『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』(新潮社)がある。

Book Information

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ネット時代のキーワードは「直接」


――本の業界もいろいろな変革が起きています。


辻野晃一郎氏: 電子化の流れは、なかなか進まない時期もあったかもしれませんが、最近は一気に進んでいるんじゃないでしょうか。読者にとっては窓口が増えるわけだし、本も読まれなくなってきていて、そういった流れの中で、できるだけ多くの人たちに読んでもらうためには、紙と電子媒体の両方で広まっていくのはいいことだと思います。私の本も電子書籍になっていて、私自身も利用しています。iPadとiPhoneを使っています。

インターネットの時代になって、やっぱり「直接」ということが大事になってきた。物販でいうと直販。だから書籍もできるだけ、間に中間搾取するような人たちを入れないようにした方がいいと思います。直接読者と作者がつながっていくような関係がインターネットのいい面ですから。

例えば先ほどの話にあった、テスラモーターズは元々、直販なのです。でも全米の車の代理店販売組合のようなところが政府に働きかけて、テスラモーターズの直販を禁止しているわけです。利権、既得権を持った人たちというのは常に存在していて、その人たちが変革を邪魔するというのが、世の中のパターンとなっています。だけどそこを乗り越えていかない限りは、変革は起きません。本に関しても古い習慣で凝り固まっている部分があるから、色々な人たちが少しずつ変えていこうとしているのです。Googleも同様です。

新しい技術とともに、変わる概念


――「本」は、どのように変わると思いますか。


辻野晃一郎氏: いずれは「本」というのは、なくなるかもしれないと考えています。今はiPadやiPhoneなど、自分の肉体とは別のデバイスを手に持って使うというような使い方ですよね。それが、その次はGoogle Glassのようにウェアラブルになって、両手を他のことで使いながら、メガネの先に像が結ばれていて、そこで本を読んだりすることができるようになるかもしれませんよね。そこまでは電子書籍の出番かもしれません。でもその先にあるのは人工知能。データやプログラムが脳細胞の中に働きかけるといった研究もあります。

例えば眼球がなくても、直接脳の中に信号を送って、撮像デバイスが作った像を結ばせることができれば、物理的には目は見えないけれど、見えるようになるわけじゃないですか。それが目の見えない人を救う1つの方法となるかもしれません。これから10、20年の間に、そういう時代がくる。だから本もそういう形で、直接、脳の中に情報をインプットするという手段ができれば、今のような本の読み方はなくなるかもしれません。1冊まるごと直接データを脳の中に入れて、脳がそれを認識することによって読書が完了するわけです。

――新技術にどう対応していくか、今後の課題ですね。


辻野晃一郎氏: コンピューターやインターネットによって、明らかに人類は進化しています。自分たちが創造したものによって、エンパワーし続けているのが人類の歴史。江戸時代などには、そういったものはなかったわけだから、情報量でいうと比べものにならないぐらいの情報をGoogle検索1つで引っ張ってくることができるのです。知識量、情報量という意味では、人類は進化を遂げました。さらにテクノロジーがどんどん進んでいくから、そのスピードも上がっていますし、その活動を補うためのエネルギー需要もどんどん増えています。

しかし化石燃料などは、一旦使ってしまうともう戻らないし、石油も「いつかなくなる」と言われています。それで今は、シェールオイル・シェールガスのように、岩盤にしみ込んだ原油を採取するというようなテクノロジーが進んできています。でもこのまま進むと、いつか地球が崩壊するかもしれません。つまり、人類は滅亡に向かって加速していっているのです。モラル、教育水準の低い人たちが、経済至上主義で勝手なことをどんどんやっています。昔だったら国内で留まっていたような問題が、今は世界の問題となってしまっています。

――世界的な課題解決に、日本の経験が役立ちそうですね。


辻野晃一郎氏: はい、日本は「課題先進国」と言われています。日本は今まで、公害の問題から始まって、人類が経験しなければいけないような難題に一通りぶち当たって、それを解決してきた。行きついたのは平和主義。色々な意味で、日本はロールモデルとなることができる国ですし、それを世界に伝えていくことが大事な作業だと私は思うのです。

あと、自分と同じ世代にも、セミリタイアとかリタイアモードになっている人たちが多いので、そんな人たちにも「自分にもできるんだ」というような勇気を与えたいですね。あと、若い人たちがもっとチャレンジするように、自分の感じてきた色々なことを、伝えたいと思っています。

――これから先、どのように変わっていくか楽しみですね。


辻野晃一郎氏: はい、日本から世界へ向けて発信したいと思います。ただ、今は小さな会社を興して、自分の問題意識でやっているだけですし、展望を描くのは何か評価してもらえるような結果が出てきてからの話だと思います。まだまだです。株主や顧客、社員もいるわけだから、その人たちに対する責任をきちんと果たすということ。それをきちんとやっていかない限りは、何も語る資格はありません。その延長線上に新しい事業の基盤というのをきちんと作りあげていきます。

(聞き手:沖中幸太郎)

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