読者の幸せへ繋がる本を
――そんな想いは、数々の本に記されています。
西出ひろ子氏: 私は、編集者に限らず、お仕事でご一緒させていただく方は、常に一心同体の関係でないとイヤだという考えがあるので、同じ気持ちで動いてくれる人と仕事をしたいと思っています。想いの共有ができていない事で、過去には本の世界を信じられなくなる事もありました。ところが、4冊目の『完全ビジネスマナー』の担当の方は、私の気持ちを汲んでくれた素晴らしい編集者でした。初鹿野剛さんとの出会いで、「こんな人もいるし、やっぱり本は良いものだ。これからも書いていきたい」と思いました。
――本で伝えたいこととは。
西出ひろ子氏: 読者の方に幸せになってもらいたい、それに尽きます。本が、読んだ人の人生を幸せにできる存在であってほしいと思います。ビジネスマナー系の本であれば、お仕事でみなさんが成功して、そして「成功=幸せ」につなげてほしい。自分自身、幸せになりたいという思いがすごく強かったんです。実は弟も、4年前に父と同じ亡くなり方をしました。同じ親の元で育ちましたが、弟の場合は、マイナスに行ってしまいました。その人のものの考え方で、人生は変わっていくということ。それを身近な家族で体験しているので、同じような環境の方にマイナスにはなってほしくないという思いがとても強いです。
落ち込むような、どん底の経験をしてもいい。若い時はどんどん泣けとみんなによく言っていますが、後々それを、プラスに転じていってほしいですね。その気持ちをいつも本のどこかで伝えようとしています。
――日本を超えて中国でも、出版されています。
西出ひろ子氏: その『一周快楽礼儀』は上海ブックフェアで売り出して、全体の売り上げ3位になり、メディアからの取材がすごかったです。セミナーも3日間連続でさせてもらい、小さなお子様から、お年を召した方まで、幅広いジャンルの方にお越しいただきました。ある学生が、インタビューで、「大学でもマナーの授業があるけれど、型ばっかり。西出さんの言っているマナーはそうではなく、気持ちからのものだったから、理解もしやすく納得ができた」とおっしゃってくれました。「心、気持ちは、どの国の人も同じなんだ」と思いました。しかも中国の方からもそうやっておっしゃっていただけたことは、本当にうれしかったです。今ニュースで中国などを語る時、一方的な見方のものも見受けられますが、そういった決めつけ方、考え方はしないでほしいなと思います。どの国にも様々な考え方や色んな人がいるのですから……。
道しるべになってくれる本を
――西出さんにとって、本とはどのような存在ですか。
西出ひろ子氏: 自分の道しるべというか、どういう方向に生きていけばいいのかということを教えてくれるきっかけとなっています。特に20代での経験と、20代で読んだ本が、その後の人生を作り上げているので、大事に思っています。私は当時からすごく男性的で、『成功の扉』という翻訳本が大好きでした。当時は、独立して成功したいという気持ちがありました。あと、加藤諦三先生の本はほぼ持っていると思います。親のことや、職場での人間関係、恋愛など、悩みがとても多かったので、加藤先生の本は強く心に響きました。私にすごく影響を与えたのは、前原滋子先生の漫画です。『杏&影 結婚日記』などが、私を作り上げている、という感じです(笑)。
――電子書籍も使われているんですね。
西出ひろ子氏: はい。iPadなどは、いつでもどこへでも持っていけて、使えますよね。電子書籍だったら、紙の本とは違い、何十冊、何百冊持ち歩けるというところでも、とても便利だと思います。あと、持ち歩くことで安心感があるんじゃないかなと思うのです。「あれってなんだったっけ?」、「あそこに何が書いてあったっけ?」と思った時に、すぐその場で調べられるのが、とてもいいと思います。
でも、紙の本にも良さがあります。何事もそれぞれに利点があり、それぞれにマイナスがあるので、どちらかというのではなく、やはりいい物、いいことをどんどん、伸ばしていけばいいと思いますし、どちらも好きなように使えばいい。上手な使い分けも大事なことですよね。
お互いを思いやる事=マナーを広め続ける
――何事にも両面がある、使い方次第ということですね。執筆に限らず、今後マナーを伝えることによって、世の中をどのように変えていきたいなと思われていますか。
西出ひろ子氏: マナーというのは、恥をかかないために覚えておかなきゃ、というような自分自身を満足させるためのものではありません。マナーは全てのことにつながると思います。マナーを伝えることは、トラブルのない社会を作るということ。世界中、お互いがお互いを思いやって生きていれば、トラブルは絶対に起きないと思うのです。それをマナーで伝えていくことが、私の使命だと思っています。生きているということは、何かしらの使命があるということ。だから私は、必ずしも表面上のマイナスがマイナスではないと私は思います。
このKOOちゃんは、本を書く時も一緒にいます。9歳のラブラドールもいます。今はなるべくこの子たちと一緒にいる時間を作ろうと思っているんです。癒やされますし、落ち着きますね。実は、KOOちゃんの右手は肉球がありません。ドッグシッターに預けていた時に骨折させられて、結果、断脚になってしまいました。右手の肉球がないので、義足でお散歩しています。専門家に預けていたのに大けがをしてしまったので、仕事に対する責任感をみなさんに持ってほしいですね。命を預かる仕事をしている人たちに対しては、特にそう思います。そういうことも今後は伝えていきたいと思っています。
それから、離婚や自殺などの社会的な問題を抱えている方々に、「私も同じ。気持ち1つで人生は変わるから、がんばろうよ」と伝えたいです。また、政治家、教師、ドッグトレーナーなど、そういう先生と呼ばれている人たちのマナーを強化したいとも思っています。そのために、マナー教育推進協会という社団法人を作りました。例えば医師の言い方一つで、患者さんがあがったり、傷ついたりということもありますよね。上から目線は良くない。相手の立場に立ったものの言い方や、表情、態度など、先生と呼ばれる人たちが見本を示すことができれば……この日本はきっと良くなっていきます。
(聞き手:沖中幸太郎)
著書一覧『 西出ひろ子 』