マナーとは、相手への思いやりを表現すること
企業・病院研修やビジネスマナー、マナーコンサルティング、マナー講師養成、マナーライフなどを行うHIROKO ROSE株式会社の代表取締役も務められる西出ひろ子先生。マナーコンサルタント、マナー講師として幅広くご活躍され、書籍の執筆の他、メディア出演も多く、また映画「るろうに剣心」のマナー指導などもされています。「マナー」とは何か、この仕事を志すようになったきっかけ、渡英のこと、なぜ笑顔を絶やさないのか、西出さんの人生に迫って伺ってきました。
マナーの心は、世界に通じる
――9月に新刊『できる大人の気くばりのルール』が発売されましたね。
西出ひろ子氏: 一年半ぶりの新著です。普段は企業に対するマナー全般のコンサルティングをしていて、店舗の空間作りから、マナーに則した制服作りなど、マナーを軸に活動しています。私の考えるマナーというのは、「相手の立場に立つこと」制服作りも相手の立場に立った時に、どこにポケットをつければいいか、色も重要です。
十人十色という言葉があるとおり、10の色があれば10の人がいる。その人=色なんです。同じ紺色でも微妙な違いがありますよね。それは人にも言えることで、それぞれ微妙な違いがある。講師として、マナーを伝える人として、そういった微妙な違いをきちんと見る、見抜けること。そのためにも色はとても大切なのです。
――色に着目するようになったのは。
西出ひろ子氏: 生徒さんから「どんな色のメイクをすれば良いか」とか「どんな色のリクルートスーツを着ていけばいいのか」という質問をされるようになった時に、「いい加減なことを言っちゃいけないな」と思って、28歳の頃から、色について勉強しはじめました。いざ色の勉強を始めると、本当に奥深いということがわかりました。それが、私の今のマナーの考え方にも通じています。
――西出さんのマナーを軸にした活動は日本だけではなく、世界でも広がっていますね。
西出ひろ子氏: マナーの心は世界共通なのです。例えば挨拶をする時、日本ではおじぎを、海外では握手をすることが多いなど、マナーの型や所作は国によって違いますが、なぜ「挨拶」をするかというその心、気持ちは世界共通、というのが私の考え方なのです。海外でお仕事をする時には、とにかく「心の部分はみんな一緒だよ」というところからスタートするので、ありがたいことに、受け入れてもらいやすいのです。
――西出さんのマナーに対する哲学は、どのように醸成されたのでしょうか。
西出ひろ子氏: 渡英経験でマナーについて考えさせられた事が大きなきっかけです。一番関心をもったのは、考え方。男女などの区分けではなく、とにかくみんな「人」だということ。自分と人、自分と動物、自分と自然、という感じ。男だからとか女だからとか、そういった考え方ではありません。
知らない男女が家をシェアして住むというのは、イギリスではよくあるのですが、そこで必要になってくるのは、「人としてきちんと相手と向き合う」ということ。とても勉強になりましたし、それまでの自分が変わったなと感じました。イギリスでの経験は今の仕事の出発点とも言えます。
父との約束を守って、東京へ
――自分が変わった、というのは。
西出ひろ子氏: 実は、どちらかというと人に向き合うどころか、結構暗い子だったんです。5つ離れた弟ができてからは、しっかりしなくちゃという気持ちになりましたし、小学校3年生の時に学級委員をさせられたことで豹変したんです(笑)。何か責任感のようなものが芽生えたのかもしれません。それ以来、強さが出てきて、中学生の時は、いじめっ子に詰め寄って謝らせたりしたこともありましたね(笑)。
――責任感が、西出さんの芯をつくっていったのですね。
西出ひろ子氏: 中学校の時はテニス部のキャプテンだったのですが、成績も学年で3位以内に入っていました。目立ってしまったのか2年生の時にひどいいじめにあったりもして、中学校では色々ありましたね。
――教育熱心だったのですね。
西出ひろ子氏: 3歳からピアノを習っていて、小さい頃の夢はピアノの先生だったほどなので、本当は音楽の高校へ行きたかったのですが、「音楽では将来、食べていけない」と親から反対されて、普通の高校へ行くことになったんです。反抗心から高校では勉強しなくなったのです。厳しい側面もある親でしたが、意外な事に「大学の4年間だけは日本の政治・経済・文化の中心である東京で生活をして、色々な物を見て触れて戻ってこい」という父の考えもあって、東京の大学へ進みました。当時、『源氏物語』が好きで、光源氏も好きだったので、国文学科へ進みました。
著書一覧『 西出ひろ子 』