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世界中の本好きのために

上山信一

Profile

1957年、大阪生まれ。京都大学法学部卒、米プリンストン大学国際公共政策経営大学院修了。旧・運輸省、マッキンゼー(共同経営者)等を経て、2007年より現職。専門は、企業・行政機関の経営改革および地域再生。2005年以降、 大阪市市政改革推進会議委員長などを歴任し、現在は大阪府・市特別顧問。愛知県政策顧問、新潟市都市政策研究所長も務める。著書に『大阪維新――橋下改革が日本を変える』(角川SSC新書)、『自治体改革の突破口』(日経BP社)、『行政の経営分析――大阪市の挑戦』(時事通信出版局)、『行政の解体と再生』(東洋経済新報社)など多数。

Book Information

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再編集能力が発展するネット時代


――書き手として出版業界の変化について感じられていることはありますか?


上山信一氏: 私はこれまで時事通信社の『地方行政』という専門雑誌で、専門家向けの記事をたくさん書いてきました。それを束ねて再構成して本にしたり、講演などで話してきた。そうこうしているうちにネット時代になって、本の書き方が変わった。最近はメルマガとかブログを基にして、本でも見開きで一つの話が完結するスタイルになってきています。また、本のスタイルがデジタル化しているのです。10年ぐらい前に私が書いた本は、いわばドイツ風で、章立てが非常にシャキッと構造化されていて、1章から読まないと分からない。最近の本はどこを開いてもそこのセクションだけ読んでくださいみたいな、そういった作りに変わってきた。体験談も、プロジェクトの仕方、経過を時系列に書くよりも、ここは肝だと思った話を切り取ってスナップショット的に出す。今、日経ビジネスオンラインでやっているのもその実験。まさにスナップショット的な提言で、面倒くさい話はいちいちレクチャーしない。それでいて世間にある薄っぺらい改革論に横ヤリを入れる趣旨なんです。だからイライラする読者も多いみたいです。「正統派の改革派じゃない」とか。すぐに「アメリカでは」と言うような連中からすると、おかしいということになる。最近の米の話なんかは、「どう見ても守旧派じゃないか」とも言われます。おもしろいのは業界通の改革派と守旧派の両方から突っつかれること。でも、気にせず一般の人が素朴に思っているところにストレートにはまるということを目指しています。だから私がやっていることは、ずっと「裸の王様シリーズ」なんです。

――電子書籍などが発展していますが、メディアの変化で読み方も変わってきますね。


上山信一氏: 検索機能の存在が凄く大きいのだと思います。例えばヤギと休耕田の話を書いたことがありますが、ヤギに関する本を検索すると、ほとんどが畜産の本です。しかし1割は米作りに関するものだったり、検索すると新しい発見が出てくる。ほかにも世の中の人のマインドシェアがどこにあるのかが分かる。インターネットだとインタラクティブなコメントが返って来たり、知的活動の相手が広がることは良いことだと思います。
あと、今までは持ち運びやすさから新書や文庫がよかったけれど、電子ブックになると1冊2冊という単位の意味がなくなる。電子ブックは、巻物みたいなものになるかもしれません。雑誌の連載シリーズみたいに、エンドレスに流れていく。だからこうなるともう書籍か何かよく分からない。それから、日経BPオンラインの実験では、私が専門誌や本で書いた文章のエッセンスを抜き出して、再度一般向けに出していく。過去の文章の組み替えなんですが、今の文化とデータにあてはめて出していく。あるいは行政改革とか農業政策というので書いていた論文を、アグリビジネスという横軸でもう一回再編集して見直す。そこに発見があったりするのでインターネットの活用で編集という概念も、変わりつつあると思います。

――ブログやTwitterも開設されていますね。


上山信一氏: あれは実は守旧派に攻撃されないのと、頭の固い新聞記者たちに誤解されないようにするためです。まちがった記事に対してはきちんとあそこで反論しておく。マスメディアから身を守るためのツールといった感じです。ですがTwitterとブログには、あまり反応は期待していません。それにTwitterは質がいまいちで、あそこに適当にコメントする人は、何を考えているのかよく分からないところもあります。

様々な専門家とコンサルチームを作りたい



上山信一氏: これからは著者の方がある意味、早く進化すると思います。書き方としては、ITを使った書き方に変わっているわけです。最近の経験の話であっても、トレンディーじゃないといけないし、ネットでわかる程度のことは超えていないといけない。だから必死になって再編集や取材をする。または自分の頭の中でクローリングをやるとひらめきが出てくる。これからはチームワークでやらないと書けないことが増えるでしょう。私の連載記事でも、編集者とライターの人がいる。ライターは一般人の素朴な疑問を投げかけてくれる。それにそって話の組み立てをやる。私はビジネスモデルという切り口で米だのアイスクリームだのについて、編集者としゃべっていく。編集者は売れるかどうかを考える。この3人の組み合わせはもの凄くパワフルです。3人で話していると一見関係のないものがつながってきて過去のプロジェクトの倉庫の棚卸しをやっている感じです。こうして新しいテーマで記事を書くと知らない人から反応が来たりで、それでまた新しいテーマになって、その人と一緒に仕事をする。



――これから、ますます新たな活躍の場が開けてくるのではないかと思いますが、今後の展望などはありますか?


上山信一氏: ものごとには自然な流れというものがありますから、展望やビジョンを立てるのはあまり好きじゃないんです。むしろ、それなりの蓄積があるので、その蓄積を使う意味のあるプロジェクトをしたいと思っています。組織を相手に改革をやっていくということ自体は変わらないでしょう。ただ、チームワークのメンバーはちょっと広げたいと思っています。私がこれまでチームを組んでやってきたのは元マッキンゼーの人や弁護士、会計士や銀行員がほとんどです。でも今後は医者や建築家、料理人、デザイナーなど、色々な職種の人とコンサルティング的なチームを組みたい。面白いと思います。今までと全然違う人たちとチームを組んで、建物を造るとか、お店の設計をするとか。あとは逆に大きな国家戦略の見直しとかもぜひやってみたいです。

(聞き手:沖中幸太郎)

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この著者のタグ: 『大学教授』 『コンサルティング』 『出版業界』 『イノベーション』 『原動力』 『留学』

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