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世界中の本好きのために

たかのてるこ

Profile

「世界中の人と仲良くなれる!」と信じ、60ヵ国を駆ける旅人。 映画会社の東映に勤める傍ら、プライベートで旅した映像をテレビ局に売り込み、本人が〈旅人〉と〈制作〉を兼任した旅番組(『銀座OL世界をゆく!』シリーズ)として放送する等、ユニークな活動を展開。デビュー作『ガンジス河でバタフライ』は、今や旅立つ若者の“旅のバイブル”となり、スペシャルドラマ化もされ話題に(のちにDVD化)。

2011年7月、18年勤めた東映を退社し独立。世界中の人々の魅力や、日本のすばらしさを伝える、ラブ&ピースな“地球の広報”として、紀行エッセイの出版、TV、ラジオ、講演、大正大学の非常勤講師など、幅広く活動中。
公式ホームページ】 【TABI-LIFE

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旅に恋してリアルに出会う



会社勤めの傍ら旅を続けるうち、思いがけず〈旅人・エッセイスト〉になり、“旅好きのバイブル”となるような本を出していた。2000年に出版された、たかのてるこさんのデビュー作『ガンジス河でバタフライ』は、15万部超の人気を誇る旅エッセイとなり、読者の熱い要望に応えてついに電子書籍化されるほどになっている。「好きなこと」をライフワークにして60カ国を駆け巡る、旅への熱い思い、1人旅の効用、意外な交友関係、本にツッコミを入れる独特の読み方など、とことん話していただきました。

インドで映画館が揺れるほどの一体感で踊る人々を見て、東映に入社


――たかのさんは、つい先日、海外から帰ってきたばかりとお聞きしましたが、どちらへ行かれたのですか?


たかのてるこ氏: 今年の正月はハワイのカウアイ島で迎えたんですが、その後、取材でインドへ行ってヨガ&アーユルヴェーダ、帰ってから南米へ行って‥‥おかげさまで旅ガラスな日々です(笑)。南米へはピースボートに招待されて、今回初めて乗ったんですが、船旅の前後に、ブラジル、アルゼンチン、チリ、ニューヨークを寄り道してきました。

100日かけて世界一周するピースボートには、池上彰さんとか鎌田實さんとか、いろんな分野のスペシャリストが入れ替わり立ち替わり乗ってきて、船上で講演されるんですが、私もそのひとりで、飛行機でブラジルまで飛んで港で合流し、船上で3日間講演してきたんです。朝から社交ダンスをレッスンしてるグループがいたり、太極拳やってたり、ヨガやってたり、みんな好きなことをやってて、いろんな世界があるんだなぁと思いましたね。

――船上では、どんなお話をされたんですか?


たかのてるこ氏: 「一人旅の素晴らしさについて」ですね。ピースボートに乗っているお客さんは、ひとりで海外を旅する勇気はないけど世界中行ってみたい、という人が多いので、ピースボートに招待してもらったのに、「今度はぜひ、ピースボートではなく、ひとり旅をしてみてください」と熱く語ってきました(笑)。
ピースボートに乗れば世界中に行けますが、たとえば1週間の船旅を経て、ようやく次の国に着いても、その国で下船できる時間がたった1日だったりするので、もったいないなぁと思って。

――1人旅の魅力はどんなところにありますか?


たかのてるこ氏: ひとりで旅をすると、現地での出会いが多いことですね。たとえば、ツアー旅行だと、ガイドさんもお客さんもみんな日本人で、ずっと日本人と一緒にいることになるので、現地にどっぷり浸かることができず、日本の快適さの中から外国を眺める、みたいな感じになってしまいますよね。
昨夏、原点回帰で久しぶりに1人旅に出て、ヨーロッパ21ヵ国を約2ヵ月かけて鉄道で回ったんですが、やっぱり一人旅はいいなぁとつくづく思いました。

――自由自在に海外に行かれているように見えますが、もともとはどんなお子さんだったのでしょう? 昔から旅が好きだったんですか?


たかのてるこ氏: もうすごく気が小さくて。今も基本は小心者ですが、旅をするようになって変わってきましたね。子どものころから、旅にはずっと憧れてました。絵本やアニメに、旅の話がよく出てきますよね。『桃太郎』とか『金太郎』、『一寸法師』、海外の童話も『ジャックと豆の木』、『アラビアンナイト』、『ガリバー旅行記』とか、最近のアニメでも『ワンピース』、昔で言うと『銀河鉄道999(スリーナイン)』、古今東西、おとぎ話とかアニメは、旅をモチーフにしたものが殆どですよね。

『桃太郎』でも『ルパン3世』でも、旅に出る時、初めは1人じゃないですか。それで途中でキジや猿とか愉快な仲間たちに出会って道連れができたり、旅先での出会いや別れがあって、ひと回り大きくなって帰ってくるストーリーですよね。だから、海外へひとり旅に出て、小心者の自分とオサラバしたい!世界を股に駆けるような旅人になりたい! と思ってました。まだ、“旅は男の特権”みたいなイメージがありましたけど。

――たかのさんのご登場でだんだん女性も旅に出るようになってきたと思います。はじめ映画会社に就職されていますが、どんなきっかけだったんですか?


たかのてるこ氏: 学生時代のインドひとり旅がきっかけですね。当時、ちょうど就活前だったんですが、インド人は、映画館で歌ったり踊ったりしながら映画を見るんですよ。特に、大ヒットしてる映画の場合はものすごいフィーバーぶりで、映画館が本当に揺れるんです(笑)。それを見て、こんなに老若男女の気持ちをひとつにして、一緒にハラハラドキドキさせることができる映画っていいなと思って。

――その時の体験を『ガンジス河でバタフライ』という本に書いて話題になられたわけですが、本当は映画よりも旅がお好きだったんですか?


たかのてるこ氏: 就職する時は、旅の仕事か映画の仕事か迷ったんです。まぁ迷うも何も、就活を始めてみたら50社以上の会社に落ちて、受かった会社に入っただけなので、迷うこともなかったんですけど(苦笑)。当時、したり顔の大人が、「一番好きなものを仕事にすると、趣味ではなくなって、好きなことを失うよ」なんて言う人がいて、旅が嫌いになったらどうしようと悩んだりしましたね。旅を仕事にするといっても、出版社に入れば、海外取材に行けるかも、ぐらいしか思いつかなくて。映画会社と出版社を受けまくって、唯一拾ってくれたのが東映だったんです。

――それが大きなターニングポイントになったと思われますか?


たかのてるこ氏: きっと、生まれ変わっても東映に入りますね。東映に入ってなかったら、こんな風になってなかったと思いますから。でも、生まれ変わって東映に入っても、やっぱり18年と3ヶ月と10日で辞めると思います(笑)。辞めたことを1ミリも後悔していないけど、入ったことも後悔してないです。もう本当に、ちょうどよかったと思います。忙しくて退屈する暇もない、あっという間の18年でしたし。

よしもとばななさんのアドバイスで、旅をライフワークに!


――29歳の時に『ガンジス河でバタフライ』でデビューしてから、会社員と作家の二束のわらじを履かれるわけですが、生活はどう変わりましたか?


たかのてるこ氏: 私はテレビ番組のプロデューサーをしていたんですが、休日出勤も当たり前、土日も常に電話がかかってくるような、ずっとオン状態の仕事だったんですね。だから、二束のわらじを履くようになってからは、もっと忙しくなって、プライベートは殆どなかったです。旅に出るチャンスが巡ってくる度に、その旅の経験を本にしていましたが、最後の方は3年に1度ぐらいしか旅に出られなくて‥‥。

会社を辞めてからは、旅に出られるようになったのが、一番の変化ですね。旅をライフワークにしたことで、私が変わったというよりか、人が私を見る目が変わった気がします。「ピースボートに乗りませんか」とか「インドでヨガ取材してみませんか」なんて話、会社員を続けていたら、絶対来なかったと思いますから。

――書かれるようになった直接のきっかけは、何だったのでしょう?


たかのてるこ氏: 友だちのよしもとばななさんが、あるとき銀座でランチを食べている時に、「てるちゃんは、人がなかなか経験できない面白い旅をしているんだから、それを形にした方がいいよ。てるちゃんの旅を、友だちのカメラマンに撮ってもらって、テレビ局に売り込めば、それがライフワークになるよ!」ってアドバイスしてくれたんです。

誰も知らない、私のようなOLが海外を旅したところで、果たして旅番組として成立するのかなぁと思いつつも、旅を表現したいと思ってもんもんとしていたので、よしもとさんの助言ですっかりその気になりまして。休みを10日間取って、大学の同級生だったカメラマンの友だちと、インドを行き当たりバッタリで旅しました。で、帰ってきてから、仕事の合間を縫って、インドの旅映像を編集してテレビ局に持ち込んだんです。なかなか企画が通らなかったんですが、2年後、ようやく自分の旅番組として深夜にオンエアすることができまして。会社員時代、数年に一度でしたけど、プライベートで旅した映像を編集して、自分の旅番組を作ってOAできたのは、会社員生活を続ける上で、すごく大きなモチベーションになりました。その後、全6作、DVD化することもできましたし。

――その、自作自演の旅番組がきっかけで本を書くことになられたわけですが、初めての本はすんなりお書きになれましたか?


たかのてるこ氏: 旅番組を見た編集者の方から「本を書きませんか?」と声をかけて頂いて、酔った勢いで「書きます!」と言ったものの、なかなか「書く」という作業に馴染めなかったですね。文章を書いたこともなかったので、初めの本を書き上げるのに2年もかかりました。

――むしろご自身では、しゃべる方が楽でしたか?


たかのてるこ氏: それまでは、旅から帰ってくると、友達ひとりひとりに旅の土産話をしてたんです。旅の写真を見せながら、「この国でこんな人に出会って意気投合して、家にお呼ばれしてね」みたいな感じで。旅の話を聞いてくれる友達がいつも、「こんな面白い話、私だけが独り占めして聞いているのが、もったいないぐらいだよ!」と言ってくれていたので、それが本を書く上で、すごく励みになりましたね。

初めは書くことに迷いもあったんですが、初めての本、『ガンジス河でバタフライ』を出したら、メールやお手紙をたくさん頂いたんです。それからは、私がいろんな国での旅の体験を書くことで、読んでくださった人が、その国や旅に興味を持つきっかけになればいいなぁと思いましたし、いろんな事情で今は旅ができない人でも、つかの間の旅気分を味わったり、未知の世界を一緒に旅してもらえたらいいな、と思うようになりました。

――文章を書くのは大変でしたか?


たかのてるこ氏: 仕事が忙しかったので、家に帰るのはたいてい夜中でしたけど、初めて本を書くことになったときは、毎日数行でも書くようにしてました。友達と気晴らしにお酒を飲みに行くのもガマンして、2年間、自分が先生で自分が生徒の文章教室に通っていたような感じでした。友だちにも「書く!」と宣言してしまったので、友だちから電話がかかってくると、いつも「どう? 書いている?」とか言ってくるので、みんな編集者みたいでしたね(笑)。

たかのさんの本を読んで、旅立つ人や国際結婚する人も


――たかのさんの本は、旅で出会った普通の人たちの写真がちりばめられているのが印象的です。そこにリアルなライブ感があるんですが、作品を出す時に、何か心がけていることはありますか?


たかのてるこ氏: 一番よく言われるのは「一緒に旅をしている気分になりました」という感想ですね。「読み終えると、自分の旅も終わってしまうような気持ちになって、読み終えたくなかったです」とか言ってもらえると、私も旅の最終日、よく(この旅が終わらなければいいのに!)と思ったりするので、あぁ一緒に旅してくれたんだなぁと思って、本当にうれしいですね。前に、85歳のおじいちゃんからお手紙をいただいて、「本を読んで、映像が頭にありありと浮かび、私も一緒にガンジス河でバタフライしました!」と書いてあって、(ええ!? おじいちゃん、死んじゃうよ!)と思ったりしましたが(笑)、ありがたかったですね。

――インドは、初めて行かれたころとは変わってきましたか?


たかのてるこ氏: インドの田舎は、全くと言ってもいいいぐらい、変わっていないですね。今も10億頭以上の野良牛がいて、牛の多さはハンパないですし(笑)。自然の中で動物も人間も一緒くたになって混沌としている風景は、たぶん100年後も変わらないだろうと思います。

でも、インドは行くたびに新鮮で、毎回驚かされる国なんです。インドに行ったのは今回で6回目だったんですけど、インドのことを自分はまだまだ何も知らないなと思うぐらい、新しい発見の連続でしたね。

――『ガンジス河でバタフライ』の冒頭に、「旅は恋に似ている」と書かれていましたが、今でもドキドキ感はありますか?


たかのてるこ氏: 本気で旅に恋してるんだと思います(笑)。恋も愛も情もあって、ずっと連れ添う友人であり、人生の師匠でもあるし。昔はバイトも長続きせず、自分のことを飽きっぽい性格だと思ってたんですが、旅に関しては飽きることがないですね。

――たかのさんの本を読んで旅に出たという人に、実際にお会いになったことはありますか?


たかのてるこ氏: 講演会で本のサイン握手会をさせて頂くことが多いんですが、私の本を読んで一人旅に行ってきたという方に出会う度に「よくぞご無事で‥‥」と思います(笑)。前に、講演会に子どもを抱いたお母さんがいらして、「たかのさんの本に影響されてラオスを旅して、ラオス人と恋に落ちて結婚しまして。今、そのダンナと里帰り中なんですが、これが子どもです」なんて言われて驚きました。チベット人やラダック人と結婚した人もいたし、考えてみれば、私が本に書いた国を旅して、その国の人と恋に落ちて国際結婚して、子連れで来てくれた読者の人に結構会ってますね。私が本を書かなければ、もしかしたらこの子はこの世に生まれてなかったのかなぁと思うと、ちょっと不思議な気分になります(笑)。今、東京や大阪といった都市では、国際結婚が10組に1人の割合になっていて、日本全体でも多い年には16組に1組位が国際結婚なんです。日本人が日本人とだけ結婚する時代は終わったんだなぁとつくづく思います。

電子書籍は、汚せないし、一緒に年をとらないから愛着が湧かない


――旅先でも資料を読んだり、執筆のための作業は何かなさいますか?


たかのてるこ氏: ノートに、今の気持ちを忘れないようにメモしたりしますが、原稿は日本に帰って来てから書くようにしています。リアルタイムでブログを書くなんて、もったいなくて、そんな時間があったら、1分1秒でも表に出て、その国を感じていたいですね。

――iPadは使われますか?


たかのてるこ氏: iPadは旅先では重いので、使ってるのはスマートフォンですね。昨夏、宿をほとんど決めずにヨーロッパ21ヵ国を50日間かけて鉄道でまわったんですが、ヨーロッパに強かったテレコムスクエアのWi-Fiをレンタルして持って行って、めちゃめちゃ重宝しました。以前は、ノートパソコンを持っていったこともあったんですが、旅先で宿を探したり、メールをチェックするのに、これさえあれば十分だ! と思いましたね。

――『ガンジス河でバタフライ』も電子書籍化されて、旅先でも読めるようになりました。ご自身は電子書籍にご興味はありますか?


たかのてるこ氏: 読んでもらえるのはとても有難いですが、旅先では私の本を読むよりも、1分でも1秒でも多く、日本ではできない、その国での体験してほしいですね。目的地に着くまでの機内で、旅へのワクワク感を盛り上げるために読んでいただけたら一番有難いです。私個人は、電子書籍はまだ読まなくてもいいかなって感じです。

――たかのさんご自身は蔵書を電子化する必要は感じませんか?


たかのてるこ氏: 仕事柄、本を買いまくるので、仕事部屋の壁面は全部本棚ですし、本であふれかえってます。今はなんとか収まっていますが、今後も増え続けることを思うと、電子書籍に頼る日が来るんですかねぇ。まだ想像がつかないですが。

――お読みになるのは旅の本が多いのですか?


たかのてるこ氏: 旅の本というか、自分が旅した場所に関する本を読むことが多いです。最近は日本を旅する機会も増えて、去年、高野山へ行って宿坊に泊まって、般若心経の写経したり瞑想したりプチ修行をしたんですが、その時は、仏教や空海の本を読みまくりました。もともと、チベットを旅したり、ダライ・ラマに会いに行ったりと、仏教のファンなので、読み出すと止まらなくて。

その前はアイヌのシャーマンに会いたくて北海道を旅したのですが、アイヌの文化の本を読んだり、「アイヌ神謡集」という、アイヌの人たちの中で歌い継がれてきた神話を読んだりしました。「アイヌ神謡集」は、自然と調和して生きていたアイヌの暮らしがいきいきと描かれていて、キツネの神様やコウモリの神様が出てくるんですが、アイヌの人たちの豊かな精神文化に触れて、胸がキューンとするような話がたくさんあって。

――電子書籍だと、「キューン」となれませんか?


たかのてるこ氏: 電子書籍にどうして移れないかっていうと、私は本を読むとき、本に3色ボールペンで線を引いたり、折ったり、いろいろ書き込んだりするんです。たとえば、「アイヌ神謡集」には、自然界のフクロウや海や、いろんな神様が出てくるんですが、神様も嫉妬したり、すごく人間臭かったりするんですね。で、私はいつも本を読みながら、本を書いた人に話しかけたりツッコんだりしているので、共感したところに「わかるわかる」とか、驚いたときに「えーっ!?」とか、グッときたところにハートを書き込んだりするんです。

電子書籍も書き込みできるんでしょうけど、紙の本のような感じでは汚せないですよね。だから、愛着が湧かないような気がするんです。汚れがないということは、年を取らないっていうことですよね。たとえば、友達がいわゆるアンドロイドになってしまったら、相手だけずっとティーンのままで、いつも肌つるつるでシワひとつないと、一緒に年を取ってるという感覚が持てないですよね。

その点、紙の本は、だんだん古くなっていって、20歳の時に読んで影響を受けた箇所には、折り目がついてて、20歳の時の書き込みがあるんです。次に読み返す時のことを考えて、頭から読み返す時間がないだろうと思って、よかったところに折り目を付けたりしてるんですが。そこを読み返すと、(当時の私もここにグッときたんだな)と思ったり、(今はこっちの文章のがグッとくるから、ここに青色ペンで線を引いておこっと)とか思えていいんです。紙の本には、自分が年を経ていくように、一緒に年を重ねていくよさがありますよね。

本と映画と旅の3つは、自分にとっての魔法のランプ


――本を読む人は減ってきていると感じることはありますか?


たかのてるこ氏: 哀しいかな、世代によっては、一生本を読まない人もいると思います。コンビニで雑誌は買うけど、1冊の本を読むことはない、みたいな人っていますよね。それは映画に関しても同じで、一生本屋さんに行かないのと同じように、一生映画館に行かない人もいますよね。

映画でいうと、だいたい1年間に1人の人が1本の映画を見るぐらいの計算になるらしいんですけど、学生時代、名画座に通っていた頃は、私は1年に100本は映画館で映画を見てました。つまり、私が100本映画を見てるってことは、99人の人は1本も見ていないってことですよね。本も同じで、私は本をたくさん買うので、すでに一生読めないくらいの量を買っているかもしれないですが、私がたくさん本を読む分、読まない人も大勢いるんでしょうねぇ。

――そんなに本をお持ちなんですか?


たかのてるこ氏: 本との出会いも一期一会なので、「この本を読みたい!」と思った気持ちを忘れたくなくて、「ほしい!」」と思ったら、つい買っちゃうんです。今は読む時間がなくても、いつか読みたい! と思って、増える一方で(苦笑)。

――たかのさんにとって本はどんな存在ですか?


たかのてるこ氏: 夢を叶えてくれる、魔法のランプですね。旅も私にとって、そのときどきの夢を叶えてくれる魔法のランプみたいな存在です。たとえば、この世で一番恐ろしい国だと思っていたインドを旅して、ガンジス河でバタフライするというアホな夢を叶えたり、仏教に興味を持ってチベット文化圏を旅して、仏教のファンになったり、ラテンな生き方にあやかりたいと思って旅したキューバでは、最高に愉快なアミーゴ(友だち)を作ったり。日常という長期スパンではむつかしくても、短期決戦の旅先では、目的に対して気持ちがまっしぐらだから、そのとき「自分が欲しているもの」が手に入るんです。



旅と本、映画。この3つが大好きです。どれだけお金を注いでも、惜しいと思わないジャンルがあると心強いし、これからも貢げ続けるでしょうね(笑)。本は、自分が何にでもなれて、どこにでも行けるところが素晴らしいなぁと思いますし、この3つは私にとって最強の魔法のランプですね(笑)。

――旅に必ず持っていくものはありますか?


たかのてるこ氏: 旅の安全を守れるよう、貴重品袋と、旅用の財布ですね。「地球の歩き方」と組んで、旅アイテム「TABI-LIFE」を立ち上げて、旅グッズを作ったりもしているんですが、自分がずっとほしいと思っていたものを作ったら、おかげさまで2万個の大ヒットになりまして、他の旅人もほしかったモノだったんだなぁと思って(笑)

旅貴重品袋は、Tシャツやジーンズの中に入れても蒸れないよう、外側はオーガニックコットン、汗をかいてもパスポートや紙幣が濡れないよう、内側は撥水加工のポリエステルで作りました。旅財布の方は、落とさないようにチェーン付きで、旅先で出会った人にサインやイラストを書いてもらったりして思い出を刻めるよう、撥水加工を施した綿布で作ったんです。細部にこだわって作ったので、めちゃめちゃ愛用してますね。

――今後は旅を通して、どんなことをしていきたいですか?


たかのてるこ氏: 私の本を読んだ方から、「元気が出ました!」とか「ひとり旅に出て最高の思い出ができました!」なんていうメールやお手紙を頂くと、効くっていう方がいらっしゃるということは大きなモチベーションなので、効く人がいる限り、ずっと書き続けたいですね。

旅ほど面白い、「参加型の総合エンターテイメント」はないと思うので、どんな人にもオススメしたいです。最近のデータでは、旅をする人は、旅をしない人に比べて、認知症になる確率が8分の1になるとも言われてますし、旅は心と体の健康に本当にいいんですよ。日本では毎年、自殺する人が3万人もいますが、旅に出るとプチ挫折の繰り返しなので、心が折れにくくなりますし、死ぬくらいなら、有り金かき集めて、旅に出てもらいたいです。

古くは小野妹子とか、明治時代でも岩倉具視とか、100年くらい前までは、選ばれた、限られた人しか海外へ行けなかったのに、普通の庶民がようやくこんなに気軽に海外に行けるようになったのに、旅に出ないなんてもったいないと思います。老若男女、万人に旅を勧める、「地球の広報」でありたいと思っているので、ひとりでも多くの人に旅立ってもらえるキッカケになるような本を書いていきたいです。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 たかのてるこ

この著者のタグ: 『旅』 『海外』 『健康』 『エッセイ』 『きっかけ』 『ピースボート』 『国際結婚』 『夢』

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