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世界中の本好きのために

梶原しげる

Profile

1950年神奈川県出身。早稲田大学からラジオ局文化放送にアナウンサーとして入社。現在はJFN「ON THE WAYジャーナル梶原しげるのトーク to トーク」をはじめ、テレビ、ラジオで活躍。 その一方で大学院に進学。認定カウンセラー、健康心理士、シニア産業カウンセラーの資格を持ち、東京成徳大学応用心理学部客員教授・同大学経営学部講師も務める。「口のきき方」「すべらない敬語」「即答するバカ」「ひっかかる日本語」(全て新潮新書)など著書多数。「日経BPネットBizカレッジ~プロのしゃべりのテクニック」好評連載中。

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気になるものに徹底的に「ひっかかる」と、そこに宝が見つかる。



テレビ番組の司会、ナレーターやラジオパーソナリティーとして、その声を聞かない日はないといっても過言ではない梶原しげるさん。フリーアナウンサーとしての活動のほか、大学院で臨床心理学を修め、カウンセラー、コミュニケーションやメンタルヘルス等ビジネス・コンサルティングの分野にも活躍の場を広げています。梶原さんに、芸能界やアカデミズムの「一流の人」との交流を通じて得た物の見方、読書遍歴や電子書籍の将来などについて伺いました。

一般人の視点で、「一流」のすごさを紹介したい


――アナウンサーとして多忙な中、大学院で心理学を修められるなど、色々な分野で活躍されていますね。


梶原しげる氏: 僕みたいな凡才は、しゃべり手としてスキルをブラッシュアップするだけではよくわからないことがあるんです。放送の世界で、芸人さんたちと色々なことをやる時、「いったい、ここで行われていることは何なのだろう」ということを、客観的に引いて見ようと思ったんです。それまでは、とにかくうまくやらなきゃいけないとか、ウケなきゃいけないということしか考えなかったんですけど、今は人間関係のやり取りとか、こういう仕掛けでこういうことをやっているんだなということが見えて面白いですね。

――具体的に心理学がアナウンサーとしてのお仕事に通じるところはどこですか?


梶原しげる氏: 精神科クリニックで、非常勤でデイケアスタッフをやっていたのですが、本当に言葉勝負なんですよね。初対面の方を含め複数の方たちと、1日10時間ぐらい暮らしを共にするんです。その中で、こういう考え方もあるなぁとか、こういう場面ではこういう言葉が突き刺さるんだなぁとか、色々なことがわかってくるんです。非常にデリケートな方もいらっしゃいますから一言一言が大切なんですね。そういう意味で敏感になれたというような気がしますね。

――梶原さんが「一流」と考える芸能界の方々はどのような特徴があるのでしょうか?


梶原しげる氏: スペシャルと言われている人々は、労働時間も意識しないし、つらいから仕事を止めようとか思わない人たちなんです。過重労働がうつの原因になるわけですけれども、このスペシャルな人たちは、過重労働を奪ったら、うつ状態になるんです(笑)。労働時間1日8時間、2時間多めにみて10時間をきちんと守らなきゃいけない世界と、そうすることがダメな世界とがあるんですね。僕の使命は、スペシャルな人たちを見ながら、一般我々のこともわかるので、その仲立ちの役割を果たすことじゃないかなということを、ここ10年ほどテーマにしています。

質問を決めてから読み始めると速く読める


――梶原さんは本はかなり読まれるのですか?


梶原しげる氏: ちゃんと読んでいるのは週に2~3冊ですけれども、読み飛ばすモノも入れれば1日3冊として、年1000冊ぐらい読んでいるんじゃないですかね。速読で読む場合もあるんですよね。

――梶原さんが実践する速読法があればぜひ教えてください。


梶原しげる氏: 自分が求めている必要最低限のものについて、まずクエスチョンを出すわけです。例えば今読んでいるのが、K-1をつぶした谷川貞治さんの『平謝り』ですが、まず読む前に「谷川さん、何でつぶしたか教えてください」って、ぶつけたい質問を言ってから読み始める。そして、そこにフォーカスしながら読んでいくと、著者が次々質問の答えを伝えはじめるんです。そういう見方をすると早く読めるんです。

大学院の時に、僕の論文には参考文献が多すぎるって言われたんですけど、過去に誰がどんな研究をしていたかっていうのはやっぱり見ないと気が済まなかったんですね。修士論文の作成は実質1年強しか時間がありませんから、その間に資料を図書館に行って積み上げるように読んでいたんですが、その時にもこの読み方は役に立ちました。ただ、速読すると、感情を遮断するから泣いたり笑ったりというのはあまりなじまないんですよね。心揺さぶられる本は読むのに時間がかかります。だから「速読で、俺は年間1000冊読んでいる」って自慢するのはやっぱりおばかさんで、年に5冊泣いたり笑ったり心の支えになる本をしっかり読んだ人のほうが上質だと思いますね。

――読書は小さいころからお好きだったのでしょうか?


梶原しげる氏: 図書館に行くと、本のにおいがして、図書館の係りの人が知的な存在に見えて、あこがれたとかっていう記憶が僕の読書の最初ですね。それと昔は少年月刊誌っていうのがあったんですね。漫画が中心なんですけど、読み物もあって、『漫画少年』、『少年ブック』、『ぼくら』、『少年画報』とか。サンデーやマガジン出る前ですね。ああいうのを大事に、端から端まで読む癖がありましたね。例えば通信販売で、「これを飲めばあっという間に5センチ背が大きくなる」とかって書いてある人の気持ちをそそる、いい加減なコピーが何とも面白かったんですね。そういうのを作文でまねしたり引用したりなんかするんですよね。僕にはパクリ癖があるんです(笑)。心理学的に言うところの、モデリングですね。

――文章を書くのもお好きだったんですか?


梶原しげる氏: 母が二年前の11月に亡くなりまして、僕の作文や何やらをダンボールにとっていたものが出てきたんですが、小学校5年とか6年とかの作文が、今の文体とあんまり変わらないんですね。進歩がない(笑)。字はもう完ぺきに同じですね。字はうまくならないということがわかりましたが、考え方もそんなに変わっていないんです。何の影響を受けたのかよくわからないですけど。

――小さいころはどのようなジャンルの本がお好きだったのでしょうか?


梶原しげる氏: 今でも探しているんですけどね、「こころ」っていう本があってね、漱石のじゃなくて、貧乏でつらい思いをした人のエピソードが載った短編集なんです。例えば、引き上げ船で、おなかが空いていて、どこかのおじさんが、おにぎりをくれたりするんですね。で、自分が食べようかなと思ったけど、ぐったりしている弟にあげたとか、その類の話が書いてある。おそらく小学校の道徳本でしょうね。道徳本というのは知的な皆さんには否定される傾向がありますね。道徳本がいいって言うと、かっこ悪い。文部省が国策として、子どもたちをこういう風に誘導しようというような本を、批判的に見れば批判的に見られるんでしょうけど、僕はバカだから、そういうモノも含めて楽しんでしまう。イデオロギーがなかったんですね。

三島由紀夫の文体を「パクった」高校時代


――好きな作家、影響を受けた作家はいますか?


梶原しげる氏: 僕の読書で、初めて意識的に読んだ本は、三島由紀夫の『仮面の告白』とか『金閣寺』とかだと思いますね。なぜかというと、文章が実に華麗だったんですね。中学の後半から、高校の3年間ぐらい、ずっと三島由紀夫が好きでした。当時、60年安保過ぎたあたりから、兄貴連中が読んでいた『平凡パンチ』とか、『プレイボーイ』とかの若者雑誌に作家じゃない姿で、ボディビルダーみたいな感じで出ていて、「今の日本人はたるんでる」だの何だの、人生相談なんかをしているのですが、単なる人生相談じゃなくて、文章が「でせう」とかで書いてあって、「いいねいいね!」と(笑)。そこから、この三島由紀夫っていう人は、いったい何を書いている作家なのかなと思って本を読んでみたら、自分がこれまで味わったことのない世界で、そこからまた、パクった文章を書くようになったんですね(笑)。



僕の中学校が、作文何とか指定校っていうことで、しょっちゅう作文を書かされたんですけど、僕は三島由紀夫のまねをするもんですから、文章がまわりくどい、たとえがわかりにくいって、しょっちゅう赤で直されていたよね。情緒ばかりを書いていて、こういう作文はダメな作文ですと言われたんですよ。それは教師として正しい判断だと思います(笑)。でも、僕にとってはなかなか良い文章修業だったんじゃないかなぁと思っていますね。

――三島由紀夫の自決はおいくつの時だったのでしょうか?


梶原しげる氏: 三島さんがああいう形で亡くなっちゃったのが大学の2年のころだったかな。1970年ですよね。あれでいわゆるイデオロギーっぽいモノに対する拒否反応が強くなったのかもしれません。ちょうど高校から大学に上がるころ、野坂昭如さん、それから井上ひさしさんの文章っていうのがとても好きになりました。当時、あの人たちが直木賞を取っていた時代だったと思いますけれども、軽いモノが好きになったんですね。野坂さんは、『火垂るの墓』は別で、エロい世界だとかが軽やかに書いてある。今度はそういうのをまねしたり(笑)。小沢昭一さんの『小沢昭一的こころ』も、東海林さだおの『ショージ君』も出ていたかな、どんどんそういう軽いものが好きになって読んでいましたね。その一方で五木寛之さんの世界にあこがれて、俺もナホトカからどこか行っちゃおうかなと思ったりね。大した読書家ではなかったですし、むしろ音楽を聴くことに時間を費やしていていたような気がします。

アイドル本にも、編集者の「匠」の仕事がある


――アナウンサーになってからの読書はまた変化がありましたか?


梶原しげる氏: ラジオでゲストを迎えなきゃいけないんですよね。「ゲストが来るから、一週間で全部読んでおけよ」って5冊渡されたりして、「ほかの仕事も抱えているのに、5冊も読めるわけがないじゃないですか」って言うんだけども、人はやらなきゃならないことはやるんですね。そういうことで本を読む習慣がついたとも言えます。やっぱりさっきも言ったように、「俺、この人の何を知りたいんだろう」とか考えながら読むと、その人の絵が浮かんでくるフレーズが、本の中に必ずあるんです。

――ゲストに来られる方は、もちろん様々なジャンルにわたるのですよね。


梶原しげる氏: 政治家も学者も、色々な人が来られるわけですけど、当時のポップシンガーなんかの芸能本・タレント本の類はさんざん読みましたね。そうすると、「梶原さんは俺より俺の本のことを知っている」ってよく言われたんです。だって、本人は自分で書いてないから。ただ吉田豪さんが、「アイドル本は本人は書いてないけど、全く関係ないことはない。その中に真実を探すのが面白い」っていうことをおっしゃっていた。アイドル本でも、頭からバカにしないということが大事だなと思いますね。本の世界には、本の世界の匠っていうのはいますので。

本は「書き続ける」ことで認められる



梶原しげる氏: 映画もそうなのですが、1800円払ってつまらないものに出くわした時、どこがそのつまらなさの根本で、この監督はなぜここまでつまらなくしたんだろうかと探そうとする営みは、自分にとってメリットがあるんです。でも人は、怠惰なもんですから、スルーしちゃう。淀川長治さんはどんな駄作も褒めどころを探します。テレビ局が買ってきた映画を放送するわけすから、メインな映画にいくつかくっついてきたのも紹介しなきゃいけない。淀川さんにお目にかかったのはだいぶ昔のことですけれども、自分なりに分析すると、淀川さんにとってつまらないものなんていっぱいあったと思いますよ。目が肥えているわけですから。「見るに値しない」と言おうと思えばいくらでも言えたのに、「いやぁ、エンドの字幕の出し方はよかったですねぇ」とか。そういう風に物事を見ると、ハッピーになりますよね。

――本についても同じような見方ができるのではないでしょうか?


梶原しげる氏: 本も消費財のように言われて、いい加減な本が多いと言いますけれども、書き続けている人はそれなりにすごいんです。僕がまだ40代で、大学院に入る時に、國分康孝先生がとっても好きで、国分先生について行こうと思って、昔から親しくさせていただいている和田秀樹さんに相談したんです。そうしたらね、和田さんが、「国分先生は本を一般書籍含めて250冊ぐらい書いている。そういう人は信用していいよ」っていう風におっしゃったんですね。東大の大学院の先生でも、論文は書いても一般書籍は書いていない人たちは僕には合わないんじゃないかという風におっしゃったのが、今でも心に残っているんですね。

国分先生が修士論文の指導もやってくださったんですけれど、僕の『口のきき方』っていう本は修士論文を本にしたものなんです。指導しているのが国分先生だからいい本だと思います。でも国分先生は、「本というのは、1冊2冊3冊じゃダメ、出し続けないとダメなんだ」とおっしゃいました。1冊目を出した時は、人は、たまたまラッキーだったんだなと思う。で、2冊目出した時に、何か調子をこいてんじゃないかと言う。で、3冊目ぐらいから、ようやく「あいつ本を書くのが好きなんだな」と言われる。これをずっと続けていくと、世間が認めてくれるようになるよと。書き続けるっていうのは結構大変で、それだけ出版社が引き受けてくれるっていうことは、それなりに評価があるっていうことですよね。だから、本は書き続けろと言われて。結局40冊ぐらい今書いているんですよね。

――国分先生からは学問的にどのような影響を受けましたか?


梶原しげる氏: 国分先生の論理療法的な考え方というか、出来事をどう受け止めるかっていうのは、結構大事なことなんですよね。國分流で「ABC理論」って言うんですけど、AはActivating event、要するに出来事ですね、例えば就活の面接で、何度も落とされたという事実がある。すると多くの人は、激しく落ち込み、うつになることもある。今現在、落ち込んでいるというのが、Consequence、結果です。そういう時にカウンセラーが、どこに働きかけるかというと、出来事と結果の間の、どう受け止めるかっていうBelief、信念に働きかけるんですね。できれば志望したところに受かったほうが良かったんですよ。でもBを「これで人生おしまいだ」とするか、「空いた時間で旅にでも出てやりたいことをやっちゃおう!」でCの結果は違ってくる。ふと、「自分をもう1回振り返る、いい機会を与えてもらった」と、色々な体験をすることによって、一流企業に入ること以上の成果を得て、それがきっかけで起業する人もいるわけですよね。もうこのまま俺の人生おしまいだ。ひどい場合には首つって死のうかと、そこまで思い詰める人もいるとすれば、そうでない道もあるよっていう受け止め方で人生変わるっていうことですよね。

ニッチでユースフルな本を書くのが使命


――図書館や本屋さんにはよく行かれますか?


梶原しげる氏: もちろん!もう趣味ですから。僕の行方が知れない時に、地元の図書館に知り合いがいきなり来て、「何で俺がここにいるのがわかった!?」「他に行くところがないでしょ?」と言われたことがあります。図書館って通い詰めると仕事が効率的になるんです。例えば、自己紹介っていうことをテーマに語らなきゃいけないとしますよね。じゃあ、自己開示の方法っていうと、心理のあそこの棚に行けばあるなとか。2階のビジネスコーナーのところに行くと、ダニエル・ピンクの『モチベーション3.0』があって、周囲にはモチベーション関連があるなとか。必要なものはだいたい大筋でわかるということは読書を早くしますね。

――梶原さんご自身が本を執筆される時に、気をつけていることやこだわりはありますか?


梶原しげる氏: 競合他「者」が非常に多い業界ですから、得意分野を際だたせなきゃいけない。ベースにある日本語、言語、カウンセリングに関する分野で、いつもニッチな商品価値を意識して書くようにしていますね。それと、國分先生がよく使われる言葉ですが「ユースフル」であること。一般の人たちが読めば得するんじゃないかなというものを書くというのが一つの価値観です。

コンプレックスは学習でくぐり抜けるしかない


――英語学習についての本も書かれていますね。


梶原しげる氏: 日本語をやるうえで、英語ってとっても有用なんですね。日本語について書いたり学んだりしているうちに、感覚がまひしてくるんです。敬語とか、コミュニケーションの仕方がわからないとかおっしゃる方に、「なぜそんなことがわからないんだ」となってしまいがちです。でも英語をやり始めると、英語がしゃべれる人、英語が読める人、英語が書ける人にとって造作もないことが、自分にはできない。言葉って難しいんだってことに気がつくんですね。今、4月に「ひっかかる英語」っていう本を書いてみようかなと思っているので、それに向けて、62歳でどこまで英語ってできるようになるんだろうか、という人体実験をやっています(笑)。

――どのような学習法を試されているのでしょうか?


梶原しげる氏: 今はもう、教材が無尽蔵にあるんですよね。iPad miniも買ったんですが、無料アプリが山のようにある。今、フィリピン人とスカイプ英語を毎晩やっているんです。100日間続いているから、自分でも偉いと思っているんですけれども。それからiKnowっていう学習システムをやっているんですけれども、実にすごくて。そのシステムでは、僕の苦手なことが必ず繰り返し試させるんですよね。僕のわからない癖を全部覚えておいて、質問してくるんです。こっちも繰り返し間違える。向こうもしつこく攻めてきますよ。

――心理学に言語等、学習し続ける意欲はどこから来るのでしょうか?


梶原しげる氏: 僕が粘着質だっていうことですね。「ひっかかる」ということは納得できないということなんです。納得できないまま放って置けないという、よく言えば好奇心、悪く言えば重箱の隅をつつく。それが一つのスタイルみたいですね。あとはコンプレックスだと思うんです。物わかりが悪いんです。アナウンサーをやって入社して、スポーツアナウンサーも結局うまくできなくてクビになったり、色々な挫折で、自分に及ばないことがいっぱいあって、じゃあ、自分にできることは何なのだろうとスペシャライズしていった結果、すべての困難は学習でくぐり抜けようというのが、僕の中にあるみたいなんです。お金持ちに生まれればよかったとか、才能があったらとか、いい人が周りにいたらとか、うらやんだらキリがないんですけど、これといって取り柄がない人間にとっての唯一の武器は、やっぱり学習しかないと思っているんですよね。

三畳一間でも図書館が持てる電子書籍の革命


――学習し続ける梶原さんにとって、ツールとしての電子書籍の可能性はどのようにご覧になっていますか?


梶原しげる氏: 本が電子化すると、自分の図書館を一人一人が持って、自分の好きな並べ方で並べられる。自分が図書館の蔵書を決めて、さらに司書にもなれる。自分の癖に合わせた本の並べ方、とんがった図書館ができます。「君の図書館を見せてくれる?」って見られると恥ずかしいぐらいに、その人の知性、考え方が見えるから面白いなあ。

――電子書籍のメリットとしてスペースの問題がありますが、年1000冊読まれるとするとご自宅の蔵書の収納も大変なのではないですか?


梶原しげる氏: 10年ほど前、家を探しているころ、住宅展示場に行っていたんですが、既製の家は人が本を読まないことを前提にしているようなのです。だって書棚に話題の本2~3冊とフィギュアくらいしかないんですもの。人は月に本を2~3冊しか買わないってたかをくくっている連中が住宅を造っているんじゃないかと思っちゃう。水道橋博士も吉田豪さんも、読書家は、別に書庫を借りているんですよね。それはお金持ちじゃなきゃできないじゃないですか。だから残念ながら捨てることになるわけですよね。それは非常に無念なことです。電子書籍になると、三畳一間の人も何千冊、何万冊の書庫を持てる。これは革命ですよね。



――電子書籍への要望、今後への期待や、まだ紙の本のほうが優れていると思われる部分はありますか?


梶原しげる氏: 欲しいのは、情緒なんですよねぇ。単なる情報だけじゃなくて、情緒。持った感じとか紙のニオイとは感触とかも入ってくれば、完ぺきですよね。僕は読んでいる本に気になったこと、更に調べたいことをバーッと書き込むんです。「だからどうなの?」とか「もっと教えて」とかどんどんクエスチョンを入れていくんです。付せんを入れたりする。ブックオフに売るつもりは全くないですから。だから、紙で読みたいというニーズがあるのもよくわかるんですよね。

――最後に、梶原さんにとって本、読書とはどういうものでしょうか?


梶原しげる氏: 読書の習慣がない人はかわいそうだと思います。例えば源氏物語を読むことで、自分の悩みが解決したり、徒然草を読むことで、「こんなダメな自分も、ダメでないかもしれない」と思えたりします。物理の好きな人は、物理書から妻との食い違いが解消できる方法がわかるかもしれない。そういう色々な問題解決能力が本にはあるんですよね。人生をどう生きていこうとかいうことの宝庫が、紙の中にあるわけです。人と会って話を聞いてもらうってこともとても大事なんだけれども、目からウロコなことが、本には一つや二つ書いてあるんです。その一つか二つを探すために読書はあきらめずに続けていくことが大事だと思います。自分のことは意外と知らないものです。僕が今考えていることについて教えてくれる人が、図書館には何百万人かいるわけです。自分の中の資源を見つけるための手段として、多様な本を読んでいくのが大事なことなんじゃないでしょうか。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 梶原しげる

この著者のタグ: 『英語』 『心理学』 『アナウンサー』 『可能性』 『価値観』 『学習』 『フリーランス』 『手段』 『ユースフル』 『問題解決能力』

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