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世界中の本好きのために

梶原しげる

Profile

1950年神奈川県出身。早稲田大学からラジオ局文化放送にアナウンサーとして入社。現在はJFN「ON THE WAYジャーナル梶原しげるのトーク to トーク」をはじめ、テレビ、ラジオで活躍。 その一方で大学院に進学。認定カウンセラー、健康心理士、シニア産業カウンセラーの資格を持ち、東京成徳大学応用心理学部客員教授・同大学経営学部講師も務める。「口のきき方」「すべらない敬語」「即答するバカ」「ひっかかる日本語」(全て新潮新書)など著書多数。「日経BPネットBizカレッジ~プロのしゃべりのテクニック」好評連載中。

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ニッチでユースフルな本を書くのが使命


――図書館や本屋さんにはよく行かれますか?


梶原しげる氏: もちろん!もう趣味ですから。僕の行方が知れない時に、地元の図書館に知り合いがいきなり来て、「何で俺がここにいるのがわかった!?」「他に行くところがないでしょ?」と言われたことがあります。図書館って通い詰めると仕事が効率的になるんです。例えば、自己紹介っていうことをテーマに語らなきゃいけないとしますよね。じゃあ、自己開示の方法っていうと、心理のあそこの棚に行けばあるなとか。2階のビジネスコーナーのところに行くと、ダニエル・ピンクの『モチベーション3.0』があって、周囲にはモチベーション関連があるなとか。必要なものはだいたい大筋でわかるということは読書を早くしますね。

――梶原さんご自身が本を執筆される時に、気をつけていることやこだわりはありますか?


梶原しげる氏: 競合他「者」が非常に多い業界ですから、得意分野を際だたせなきゃいけない。ベースにある日本語、言語、カウンセリングに関する分野で、いつもニッチな商品価値を意識して書くようにしていますね。それと、國分先生がよく使われる言葉ですが「ユースフル」であること。一般の人たちが読めば得するんじゃないかなというものを書くというのが一つの価値観です。

コンプレックスは学習でくぐり抜けるしかない


――英語学習についての本も書かれていますね。


梶原しげる氏: 日本語をやるうえで、英語ってとっても有用なんですね。日本語について書いたり学んだりしているうちに、感覚がまひしてくるんです。敬語とか、コミュニケーションの仕方がわからないとかおっしゃる方に、「なぜそんなことがわからないんだ」となってしまいがちです。でも英語をやり始めると、英語がしゃべれる人、英語が読める人、英語が書ける人にとって造作もないことが、自分にはできない。言葉って難しいんだってことに気がつくんですね。今、4月に「ひっかかる英語」っていう本を書いてみようかなと思っているので、それに向けて、62歳でどこまで英語ってできるようになるんだろうか、という人体実験をやっています(笑)。

――どのような学習法を試されているのでしょうか?


梶原しげる氏: 今はもう、教材が無尽蔵にあるんですよね。iPad miniも買ったんですが、無料アプリが山のようにある。今、フィリピン人とスカイプ英語を毎晩やっているんです。100日間続いているから、自分でも偉いと思っているんですけれども。それからiKnowっていう学習システムをやっているんですけれども、実にすごくて。そのシステムでは、僕の苦手なことが必ず繰り返し試させるんですよね。僕のわからない癖を全部覚えておいて、質問してくるんです。こっちも繰り返し間違える。向こうもしつこく攻めてきますよ。

――心理学に言語等、学習し続ける意欲はどこから来るのでしょうか?


梶原しげる氏: 僕が粘着質だっていうことですね。「ひっかかる」ということは納得できないということなんです。納得できないまま放って置けないという、よく言えば好奇心、悪く言えば重箱の隅をつつく。それが一つのスタイルみたいですね。あとはコンプレックスだと思うんです。物わかりが悪いんです。アナウンサーをやって入社して、スポーツアナウンサーも結局うまくできなくてクビになったり、色々な挫折で、自分に及ばないことがいっぱいあって、じゃあ、自分にできることは何なのだろうとスペシャライズしていった結果、すべての困難は学習でくぐり抜けようというのが、僕の中にあるみたいなんです。お金持ちに生まれればよかったとか、才能があったらとか、いい人が周りにいたらとか、うらやんだらキリがないんですけど、これといって取り柄がない人間にとっての唯一の武器は、やっぱり学習しかないと思っているんですよね。

三畳一間でも図書館が持てる電子書籍の革命


――学習し続ける梶原さんにとって、ツールとしての電子書籍の可能性はどのようにご覧になっていますか?


梶原しげる氏: 本が電子化すると、自分の図書館を一人一人が持って、自分の好きな並べ方で並べられる。自分が図書館の蔵書を決めて、さらに司書にもなれる。自分の癖に合わせた本の並べ方、とんがった図書館ができます。「君の図書館を見せてくれる?」って見られると恥ずかしいぐらいに、その人の知性、考え方が見えるから面白いなあ。

――電子書籍のメリットとしてスペースの問題がありますが、年1000冊読まれるとするとご自宅の蔵書の収納も大変なのではないですか?


梶原しげる氏: 10年ほど前、家を探しているころ、住宅展示場に行っていたんですが、既製の家は人が本を読まないことを前提にしているようなのです。だって書棚に話題の本2~3冊とフィギュアくらいしかないんですもの。人は月に本を2~3冊しか買わないってたかをくくっている連中が住宅を造っているんじゃないかと思っちゃう。水道橋博士も吉田豪さんも、読書家は、別に書庫を借りているんですよね。それはお金持ちじゃなきゃできないじゃないですか。だから残念ながら捨てることになるわけですよね。それは非常に無念なことです。電子書籍になると、三畳一間の人も何千冊、何万冊の書庫を持てる。これは革命ですよね。



――電子書籍への要望、今後への期待や、まだ紙の本のほうが優れていると思われる部分はありますか?


梶原しげる氏: 欲しいのは、情緒なんですよねぇ。単なる情報だけじゃなくて、情緒。持った感じとか紙のニオイとは感触とかも入ってくれば、完ぺきですよね。僕は読んでいる本に気になったこと、更に調べたいことをバーッと書き込むんです。「だからどうなの?」とか「もっと教えて」とかどんどんクエスチョンを入れていくんです。付せんを入れたりする。ブックオフに売るつもりは全くないですから。だから、紙で読みたいというニーズがあるのもよくわかるんですよね。

――最後に、梶原さんにとって本、読書とはどういうものでしょうか?


梶原しげる氏: 読書の習慣がない人はかわいそうだと思います。例えば源氏物語を読むことで、自分の悩みが解決したり、徒然草を読むことで、「こんなダメな自分も、ダメでないかもしれない」と思えたりします。物理の好きな人は、物理書から妻との食い違いが解消できる方法がわかるかもしれない。そういう色々な問題解決能力が本にはあるんですよね。人生をどう生きていこうとかいうことの宝庫が、紙の中にあるわけです。人と会って話を聞いてもらうってこともとても大事なんだけれども、目からウロコなことが、本には一つや二つ書いてあるんです。その一つか二つを探すために読書はあきらめずに続けていくことが大事だと思います。自分のことは意外と知らないものです。僕が今考えていることについて教えてくれる人が、図書館には何百万人かいるわけです。自分の中の資源を見つけるための手段として、多様な本を読んでいくのが大事なことなんじゃないでしょうか。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 梶原しげる

この著者のタグ: 『英語』 『心理学』 『アナウンサー』 『可能性』 『価値観』 『学習』 『フリーランス』 『手段』 『ユースフル』 『問題解決能力』

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