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世界中の本好きのために

福島哲史

Profile

慶應義塾大学文学部哲学科卒。講演・研修、企画を中心に、企業や舞台のブレーンとして活躍、広く、各界へ、さまざまな提言および、表現活動、プロデュースを行なっている。特に発想企画、創造性開発、感性・表現力などを中心に、これからのビジネス手法やクリエイティブな仕事術について、高い評価を得ている。一方で、ライフワークとして、20年来、声のトレーニングを研究所とスタジオを経営しつつ、自らも15名のトレーナーと指導と声の研究を続けている。著書は、「感性がもっと鋭くなる本」、「集中力がいい人生をつくる」など100冊を超える。

Book Information

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人に教わり、怒られた経験が財産になっている


――人と直接関わることの重要性は、ネット時代になっても変わりませんか?


福島哲史氏: 今の時代、だれにでも会えるんですよ。僕らの時代は、人に会うまでに紹介の紹介の紹介とか、あるいは何年か待って少し偉くなって会うということが多かったけど、今だったらその人が、どこで何をしているか大体わかるからそこに行ったらいい。会いにきた人と話すのも、嫌っていう人もあんまりいないですからね。応対もTwitterやブログで逐一報告されることもあるし(笑)。色々な人に会えるし、刺激を受けることができるからいい時代だと思います。ブログでも、Twitterでもそれを越えてアクセスできる勇気っていうのかな、さらに知らない人、できたら自分と考えの違う人、気にくわない人、嫌な人に会いにいきなさい(笑)。たとえ敵と思えても、避けるのでなく理解しあえるようにする、気にくわない人を育てる努力も大切、その方がいろいろと刺激を得られ、自分も成長できます。気が合わなければとか、失敗したらとか、失礼にあたったらとか、そういうことでみんな動けなくなっちゃっているのでもったいないですよね。経営者は文化人や芸術家の支援をやることですよ。すると世間からたたかれた時に防いでくれます。もちろん、会社としてちゃんとしたことをやらなければいけないんだけど、会っておくと、敵にまわる人も、五分五分ぐらいには立ってくれます。味方するまでにはならなくても、わざわざ敵に回らなくなる(笑)。

――人と直接言葉を交わすコミュニケーションが大事になるんですね。


福島哲史氏: そうです。そこで必要なのが、声のトレーニングなのです。そういうことができて力をつけていく人と、そうでない人とは、ますます差がついちゃいますね。昔は、そこで「俺、力がない」と気づいて、ギャップを感じ、黙ってがんばったのですが、今はこのギャップさえ見えなくなっていて、何も気づかないまま、あっという間に10、20年たってしまう。もっとそのギャップを見せてあげられるといいと思います。僕は若いときから、色々な人にインタビューをしたり、いろんな勉強会の幹事をやって年輩の先生を呼んだりして、ずいぶん早く大人になれたと思います。物の考え方や処世の勉強もできました。当時の先生方のなかには、気難しい人もいて、こうやると怒るんだとか(笑)、たくさんの失敗から学んだんですね。若いころに色々な人たちと会ったことが財産になっています。特に、嫌な人に(笑)。だから、嫌な人でいたい(笑)。

――生徒さんなど、若い人と接する機会も多いと思いますが、今の若い人の印象はどうでしょうか。


福島哲史氏: 僕はビジネスで20歳上の人たちとやっていましたから、ライフワークとして、年下の人とやっていく場を早くつくりました。いつでも、次の時代は若い人のものです。しかし、そういう人たちの悩みを聞くと、ずっとそれを大事に抱えたまま持っていってしまう。成長して、それが小さな悩みにならない。もっと大きな悩みにぶつかるように行動すればそんなものふっとんでしまうのに。早く大きく苦労して、自分をもっと鍛え変えていかなくては、この先、大変だぞっといっています。情報にふりまわされているうちは、まわりが気になり、まわりを変えようとばかりして、悩みます。情報など、たち切っても生きていけるように自分をたくましく変えてこそ、情報も使える、といっています。

「われわれは日本をよくしたのだろうか?」と自問自答。


――若い人が、生きている環境を変えるにはどうしたらよいでしょうか?


福島哲史氏: あまり金をもたずに海外に行けばいい。不便なところへ。旅一つでも苦労できていいと思うのですが。若い人は「日本のほうがいい」と言いますが、「いいからこそ、早く、そこを自ら脱しなくてはいけない」のです。ものが充足しすぎるとおのずと、選択になっちゃうんです。昔は物がないから、ひどいものしかないから、これだったら自分で作っちゃえとか、組み合わせちゃえとか、もらってきちゃえと、生活の知恵の力がつき、それがうまくできたらお金にもなったり、自分の生きていくためにプラスになった。今は自分たちが作る前に物があって、それを覚えたり、どれがいいのかの差別化をすることにほとんど神経が使われます。ものを捨てることさえ、本を読んだり、人を雇っているとか(笑)。
「間違ったり損はしたくない」ということで、「何が正しいんですか?」みたいなことをすぐに聞いてくる。すでにあるものがなかったものとして、ゼロから出直してみることです。

――今の若い人は、これからの時代を背負うには頼りないと感じられますか?


福島哲史氏: それをいうのであれば、もう年寄りのたわごと、でも若い人がダメというより、団塊の下あたりの世代から僕らの下あたりの世代がもっとダメでしょう(笑)。今の40代ぐらいから70代あたりの人がやってきたことって、皆で自分のいいようにして、日本をダメにしてしまった。今の日本を見たら、昔の人たちみたいに美田を子孫に残すみたいな考え方のほうが正しいとわかります。戦後、ゼロから、30年で世界一にまで稼いできた日本の富をこの30年ですべて使ったどころか借金だらけにした。戦後、価値観がガラッと変わって、親とか教師の言うことを信じられなくなって、アイデンティティーを確立できなかったのが団塊の世代で、それに育てられたのが今の若者です。理想がないままに日本のシステムがガラガラ崩れた。大人というのは、まともに国を導いて、自分のことより社会や子孫のことを考えるはずなんだけど。たぶんアメリカの、悪い意味での自由な教育でね、魂が抜けちゃったまま来ている。政治もみんなが失敗と思いながら自らは存命しようとして手を打つごとに悪くしちゃってますからね。団塊が人口的に多いから、政治的な面でも文化的なものでもいまだに支配している。それはもう20年もたてば壊れますよね。その後に全く違う世界が急に来てしまうのでは若い人には何ら希望がない。だからもう失敗しちまった戦後の世代が全部引っ込んじゃって、20代ぐらいに、主権を預けちゃったほうがいいのかもしれないです。

「クールジャパン」で考える。大人の文化とは何か。


――団塊の世代より上の人たちは、また印象が違ってきますか?


福島哲史氏: 80代っていうのは結構、信念をきちっと持っているんですよね。戦前教育での国に対する使命感も含め、戦友が死んで、自分が生き残ったという社会への使命感がありましたから。彼らは日本の発展と退廃を2回みています。その辺と20歳ぐらいを早く結びつけて、団塊から後は口を出さないほうがいい(笑)。例えば、団塊の世代はギターを弾いて英語で歌えたりはする。でも、それまで漢詩を一つぐらいひねって、都々逸なり小唄など、日本の脈々とした文化の上に生きてきた伝統は、パタっととだえてしまった。団塊の世代の“めざましい”活躍のせいで、そこでブツッて切れちゃってるんですよね。僕は声の指導で古典芸能の人とも接していますが、70代以上がいなくなると先がないかもしれない。オペラも欧米を崇拝してきた団塊の世代がいなくなってたらどうなるでしょう。若い世代は、もう今の日本が一番いいと思っています。でも、どちらもなくなっていくと、成熟した文化はなくなってしまうかもしれません。団魂も含めて欧米を追いかけていたころのほうが、大人になろうと思って、背伸びして頑張っていたわけでしょう。何においてもそういう先行するモデルがないと日本人というのは本当に弱いのですね。

――日本の新しい文化、例えばアニメや漫画などについてはどのように感じられていますか?


福島哲史氏: 今の日本の状況で言うと、子どもに近いところへの志向の文化なんですね。ですから、声優さんでもアニメ声、子どもみたいな声を出したいと言うわけです。勉強やトレーニングは早く大人になる、早く成熟するためのものですね。ところが日本が国際的に発信しようとしてきている「クールジャパン」って言われている分野は、ロリコンカルチャー、欧米などでのタブーへふみこんだ独特なもので、逆行していると感じますね。とはいえ、その国なりに色々なよいもの、悪いものがあって、確かに今どきの日本らしい文化ともいえます。日本のアニメやファッション、ポップスなどのヒットやそこから日本の伝統文化や風習、日本の商品、食品、料理などの世界での流行は、特にビジュアル面での日本人のすぐれた資質に裏付けされています。よいものを見るとその国を尊敬できます。いまだにフランスが、世界の中で発言力を持ち続けているのは文化の力、ブランド力です。僕も漫画で育った、スポコン世代だから、漫画が人生観を変えていくのはわかるんです。でも、やっぱり大人も読める漫画というだけでなく、全体として大人の文化を見ていかないと、いつまでも大人になりきれない人たちを作ってしまう。今、大人っていう定義さえをどうするかが、日本人では難しいんでしょうけどね。

ベーシックな生活を復活させる「声」の力を探求したい


――福島さんがこれから作家として書く内容も含め、今後の展望はありますか?


福島哲史氏: 以前は団塊の世代の功罪を追及する本を書こうかと思っていたんだけど、私ももう彼らとだいたいひとくくりになってしまいましたから(笑)、団塊の世代を責めても仕方がない。自分たちの子どももいい年になってきているわけですから、結局われわれの世代は何をしていたんだ、つまり、日本の戦後ってどうだったのだろうということを、きちっと見て、反省し、改めていきたいと思っています。ようやく、他人のことは他人に任せられるようになってきたので、私自身、学び直さなきゃいけないと思っています。おのずと自分の信念なり指針に基づくことに絞り込んでいくと思います。今一番時間を割いているのは、人間の身体、メンタルの研究です。身体というのは、生物の持つ最高のものが受け継がれたものです。例えば発声でも、おなかから声を出すと顔色がよくなって、メンタル的にも充実を感じます。体が浄化されると言ったら変ですけどね。私も、声を出していると、それだけで今日1日終わった、と充実感をもてます。大げさに言うとこれで一生終わってもいいんだという気分になります。だから、もう書かないかもしれません(笑)。人間のベーシックな生活が今の日本の若い人だけに限らず、多くの人から失われてきているから、そのようなものを取り戻すために、体の声の力というものを考えていきたいと思っています。ともあれ、日本のためにと言っている人ほど日本をだめにしてきた、でも、それをみながら何もやっていない人もだめにしてきた、この事実をしっかりとみることです。若い人の未来のために始末をつけなくてはなりません。それをしないなら、あらたにまた失敗を重ねないように、さらに状態を悪くしないように、我々中高年今すぐ少なくとも日本からはいなくなるべきです(笑)。

(聞き手:沖中幸太郎)

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