山形流 “電子書籍はこう使う!”
――山形さんは電子書籍を利用されていますか?
山形浩生氏: そこそこ利用しています。訳す本などは、今でこそ原著がPDFとかワードで来たりしますけれども、そうでない本もあるんです。古い本もあるし、電子データをくれない著者とかに、「こういう事情で分厚い本を持って歩きたくないから電子データをくれない?」と言うと、「それじゃノンディスクロージャー・アグリーメント(秘密保持契約)にサインしろ」なんて要求するところさえ未だにあるんです。「そんな七面倒くさい」と思うし、それこそKindle版を買ってしまった方がずっと早かったりする。安いもんですし。
――主にお仕事でお使いなんですね。
山形浩生氏: はい。まあ仕事以外も本当に分厚い本とかになると、やっぱりKindle版ですね。持ち運びが楽だし、検索できますしね。結構、移動中にも使ったりしていますよ。
――日本語の電子書籍はいかがですか?
山形浩生氏: 正直に言って、日本語はまだ1冊も買った事がないです。特に電子版で買わなきゃいけないような物があまり出ていないですよね。それこそ自分の読みたい本といえば、例えば自分が訳している本とかですけれども、そういうものはまだ電子書籍としては出回っていなかったりするので日本語の電子書籍は買ってないですね。
今ハマッている『昆虫食』の本とは
――最近読んで面白かった本は何かありますか?
山形浩生氏: 面白い本はいくらでもありますよ。『世界昆虫食大全』 (三橋淳著・八坂書房刊)とか。日本を含めて世界で虫を食する文化がたくさんあるわけですけれど、そういう記録を全部集めて、「ここはこんな風な文化をもって虫を食べる習慣がある」という事をずっと記述した結構面白い本なんです。僕もあっちこっち行って虫を食べるのが好きなので。
――虫を食べるのがお好きなんですね!
山形浩生氏: でも虫の中でも苦手なものがあって、韓国の蚕のように、中が柔らかいものは苦手ですね。ラオスとかではコオロギのいため物とかが結構出てきたりするのですが、それはパリパリしていておいしいのです。それこそエビのいため物みたいな食感ですね。現地の人は別にゲテモノだと思って食べているわけじゃありません。日本人の場合だと、一緒に仕事でラオスに行っている時にコオロギを出されて、見なきゃ食べられるという人と、コオロギだと思っただけでダメという人と、いろいろとレベルがあるみたいですね。
――虫を常食もしくはメニューとしておいてある国はどれ位あるんでしょうか?
山形浩生氏: 熱帯地方の国は結構多いですが、ヨーロッパ、アメリカ、寒帯の寒いほうの地域は少なくなりますね。虫は良いタンパク源になるのですが、やはり虫のいい所は『そこらにたくさんいる』という事なんですね。寒くて虫がたくさんいない所には、あまり虫を食べる習慣はないようです。
―― 一番インパクトに残った虫料理は何でしたか?
山形浩生氏: 見た目ですごかったのは、カンボジアで売っていた巨大なクモのフライみたいなものでした。それこそ、よく昆虫モノのホラー映画に出てきそうな、黒い毛むくじゃらなクモをフライにして食べるんです。でも食べるとコリコリしていておいしかった。肉みたいな部分は多少あって、比較的カラっとした感じですね。そうは言っても、僕が虫を食べた数はあまり多くないですよ。虫食自体が世界中で廃れてきていますし。都市化でなかなか自然の虫が取れなくなってきていることが多いようですね。それを補うために虫を養殖しているところもありますが、それなら変にコオロギを大量に育てるよりはニワトリを育てたほうがタンパク源として安上がりかもしれませんし。
――虫以外の食事で何か挑戦してみたいものはありますか?
山形浩生氏: パラオにいるコウモリがうまいと聞いているので、これはちょっと食べてみたいなとは思います。普通のコウモリは、他の動物の血を吸ったり虫を食べたりしているので結構臭いんですが、パラオにフルーツラットという果物をかじって果物の樹液で生きているコウモリがいて、非常においしいようです。
著書一覧『 山形浩生 』