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世界中の本好きのために

田口ランディ

Profile

東京生まれ。作家。2000年に長編小説「コンセント」でデビュー。以来、人間の心や家族問題、社会事件を題材にした作品を執筆している。「できればムカつかずに生きたい」で婦人公論文芸賞を受賞。小説以外にも、ノンフィクションや旅行記、対談など多彩な著述活動を展開。08年には父親の看取りをきっかけに終末医療とエリザベス・キューブラー・ロスの死生観を描いた「パピヨン」(角川学芸出版)を発表。2010年より対話のできる世代の育成のため「ダイアローグ研究会(明治大学)」を開催、また、地元湯河原で「個性をだいじにする会 色えんぴつ」を立ち上げ、発達に問題を抱える当事者、家族と様々なイベントを企画している。

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湯河原から吉祥寺まで、毎日電車で「通勤」してます


――田口さんご自身が、「書き手」として今、新しい読者に向けて、現在の取り組み、どんな事をされているかという事をお伺いしてもいいでしょうか。最近は、湯河原から吉祥寺の方にお仕事場を移されたともお伺いしていますが…。


田口ランディ氏: 昨年末まで夫の両親と同居していたんですけれども、4月に義母が12月に義父が相次いで亡くなって、介護から解放されたものですから、少し気分を変えたいなと思って、仕事場を移してみたんです。

――いまは、だいたいどれぐらい仕事場にはいらっしゃるんですか。


田口ランディ氏: 平日はだいたい居ます。ただ、娘がまだ高校生なので、土日、娘の休みに合わせて家にいるという感じかな。

――湯河原から吉祥寺までは、電車に乗って行かれるんですか。


田口ランディ氏: はい。

――その時って、何かサングラスをしたりとか、特に変装とかみたいなのはいないですか。


田口ランディ氏: 変装!? 全然そんな事はしませんよ(笑)。私の顔なんて、誰も知りませんから、もう。80%ぐらいの人は、私のことを男だと思っているし(笑)。

自分で「読もう」としない限り、絶対に中には入れない。それが本の魅力です


――失礼しました(笑)。最後にご質問させて頂きます。田口さんにとって、本というのはどういう存在ですか。


田口ランディ氏: そうだな…。作家になってちょうど12年になるんですけど、本を自分が書くようになったというのは、とても素晴らしい、嬉しい出来事だったんです。でも、単なる一読者ではいられなくなっちゃったんですよね。

自分が書いていると読む時間も無くなるし、かつて自分が純粋に読者だった頃が、すごく懐かしくなっていて、「昔に戻りたいな」と思ってみたり(笑)。

でも、映画でもなく、ゲームでもなく、何故「本」が大切なのかというと、本ってね、自分から入り込もうとしない限り、その世界に入れないので、大変自立性と能動性を必要とするメディアなんですよ。

でも、映画は一方的に向こうから入ってきてくれるじゃないですか。映像と音楽とで。それはどんどん展開されて、ただそれに身を任せていれば、どこかに連れて行ってもらえるという物なんですが、言葉というものは、私が「読むぞ!」と決めて、それを1文字1文字拾いながら、その世界に自分から入って行こうとしない限り、入れないものなんですよ。そういう意味では、もの凄く能動性を必要とされる媒体なんですね。そこがいいんでしょうね。

――映画は黙っていても頭に入ってくるけど、本は意志がないと読めないですね。考えてみると、とても、能動的な行為ですよね。


田口ランディ氏: そうなんです。自分が本を読もうとしない限り、絶対に本には入れません。見ているだけでは映画のようには頭にも心にも入ってきてはくれないので。だから、そこで自分から文字の世界に入っていくという意志みたいなものが必要になる。そこが私が、本の一番好きなところなんですよね。

やっぱりね、自分から入ろうとしてその世界に入り、読もうとして読み、意味を解釈しようとして苦しむというような事が、人間の精神を育てているんですよ。だからこそ、「本を読め」と言われるんでしょうすね。ただ単に、「本を読むと知識が入る」という事じゃなくて、「生きる」ということと深く関わっているんですよ。

だから一般的に、「ゲームをやれ」とは推奨されないけど、「本を読め」と言われるのは、本が自分から意図的に入らなければ、受け入れてくれない世界だからなんです。
人生も同じ。自分から入って行き、自分から理解し、自分から意味を求め、そしてページをめくっていくことでしょう。

本って、人生と似ているんです。なにかの本に出会うという事、本を読むという行為も含めて、自分で選び、自分で扉を開ける……。すべては、チャレンジなんですよね。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 田口ランディ

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