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世界中の本好きのために

くらたまなぶ

Profile

1952年、広島県生まれ。中央大学法学部卒業。 1978年リクルート入社。編集者として『とらばーゆ』『フロム・エー』『じゃらん』『ゼクシィ』など14の情報誌を創刊した。社内外で「創刊男」の異名をとり、様々な新市場を創造した。1998年に退職し、有限会社あそぶとまなぶ事務所(現・株式会社あそぶとまなぶ)を設立。経営コンサルタント、及び講演、執筆などで活動している。 著書に『リクルート「創刊男」の大ヒット発想術』『カラダ発想術―五感をフルに使ってヒットのタネをつかめ』『MBAコースでは教えない「創刊男」の仕事術』(日本経済新聞社)がある。

Book Information

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回り道が人を豊かにする


――色々な経験を重ねられます。


くらたまなぶ氏: 集英社のアルバイトでは、『月刊プレイボーイ』の創刊スタッフにも選ばれました。実はもうひとつ『週刊明星』の二つの選択肢があったのですが、単に裸が見たかったからまずは最初に『週刊プレイボーイ』を選びました。ぼくがやっていた集英社でのアルバイトは、リファレンスのようなものでした。神保町に大学も集英社もあったので、古書店で江戸時代の、よりディテールの込み入った資料を探して、直接、作家さんのところへ写真や資料を届けたりもしました。検索してダウンロードするのを“体を張ってやる”といったような役割だったように思います。

アナログ的手法のメリットは、その仕事を通じて知ることができました。効率面ではデジタルに軍配が上がりますが、何かを知り、得ようとする過程こそが大切なのです。たどり着きたい情報はひとつでも、アナログ手法だと、その周りのものも飛び込んできます。それが、いつか別の仕事にも活きてくるんです。

――最短距離ばかり目指して空っぽに突き進むよりも、まわり道で広い視野を。


くらたまなぶ氏: 本も同じで、サルトルを読もうとすると、その本の隣に置いてあるカミュやミシェル・フーコーなども気になり始めて読んでしまいます。難しい本を読むときは、絶対にかなわない奴と、柔道の乱取りをするような感覚で、理解が出来たときの喜びは大きいですよね。

リクルート時代に、国会図書館で「グーテンベルクは何をしたのか?」ということを調べていた時、その周辺の本を読む中で、本は『聖書』のような“感動ソフト”と、『海図』のような“行動ソフト”に分けられると気づきました。当時リクルートは、旅、車、仕事というように、行動ソフト中心でやっていました。『ホットペッパー』も行動ソフトです。でも、ぼくが不足しているなと感じたのは、感動ソフトだったのだと気づき、結果『ダ・ヴィンチ』の創刊に繋がりました。感動系は人をより、動かします。それは物理的なことにとどまらず、時間軸や空間軸さえも越えることがあります。

“ロマン・ソロバン・ヒューマン”で


――くらたさんの仕事哲学とは。


くらたまなぶ氏: “ロマン・ソロバン・ヒューマン”というのが、ぼくの好きな哲学です。たとえば「肩がこっているから、15分でも揉んでほしい」と頼まれるとします。情熱と愛情を持ってそれに応えよう!とした時に、ロマンとヒューマンは生まれます。相手の様子をうかがいながら肩をもんでみて、「ああ良かった。500円ぐらいでしょうか」と相手から言われる。この流れが商売においては大事なのです。不平を満足に変え、それを対価として受け取るのが商売になる。「肩がこっている」というのが不平。そして「よかった」というのが満足で、その対価が500円。

例えば、時計の針をわざと進めて、15分のところを実際は10分にしたとします。こういったインチキをしてソロバンを優先すると、ロマンが侵されてしまいます。ロマンの主語は他人“You”で、商売で考えるとユーザーです。

ヒューマンの主語は自分“I”。その“You”他人と“I”自分の間に“金”という満足、心の対価があるわけです。ロマンには相手の気持ちも入っていて、ネガティブな「肩がこっている」という気持ちが、「500円を払ってもいい」というポジティブな気持ちに転換した時に初めて、財布が開かれるのです。だから揉んであげようとする“I”がお金を儲けようとして、“You”が15分間分の満足を得られず「二度と頼みたくない」と感じてしまうと、その人の財布は開きません。つまり儲かりません。

――順序の問題で、実はシンプルなものなんですね。


くらたまなぶ氏: 『じゃらん』や『ゼクシィ』は、今もけっこう儲かっていると思いますし、ぼくも金もうけは大好きです。けれども、ソロバンが全てというような考えの人とは、つきあいたくありません。そもそも“ソロバン100%”という考えではもうかることはできませんが、そういった方がまだ多くいるように感じます。

“数字の魔力”があるから難しいのです。1000人とか10000人規模の会社で、部長席・課長席に座っていたら、日々、グラフによって下がった、上がったというように、数字を突きつけられます。そうすると、そういうシンプルなこともわからなくなってしまいます。「数字を上げなければいけない」と考えた瞬間に、「その個々の数字は、あの人の肩こりなのだ」という根本的なことを忘れてしまうのです。想像力をなくしてはいけません。日常的に数字に追われるのは、主婦でも同じです。「今日はスーパーで、1円でも安いものを買おう」というソロバンにとらわれますよね。でもその時も、“みんなの健康”と「おいしいね、ママ」という言葉をもらえることこそが大事なのだ、ということを忘れてはいけません。狭い視野でいると、本質が見えなくなってしまいます。

――くらたさんは毎年、「○○元年」という風に視野を広げていらっしゃいますが、今年は何元年なのでしょう。


くらたまなぶ氏: 実は小学校の時から、ずっと考えていたのがピアノ。登下校が一緒だったカタオカさん(笑)の奏でる「アラベスク」が、ずっと耳に焼きついているんですね。2013年からですが、なかなか重い腰が上がらず、今年も「ピアノ元年」への挑戦は継続中です。

2010年の10月に脳梗塞で倒れた時は、すぐ翌年を「脳梗塞元年」と決めました(笑)。テレビ番組でやっていた脳梗塞の特集を見ながら、いかに自分が馬鹿な生活をしていたかに気づかされました。読書は病院からも止められなかったので、入院中のベッドで脳梗塞に関係するものを読み進めていき、そこから栄養、食事、運動に気をつけるようになりました。



それ以来、本屋に行くと、哲学やベストセラーのほかに、腸の動きとか、糖分、炭水化物についての本も買っています。ダイエットに興味がある女子からは、よく質問もされますよ。退院直後から運動も始めて、週に2、3日は泳いでいて、1回1キロぐらいでしょうか。そうすると自然に筋肉がついてくるので、スーパーのチラシの紳士肌着モデルを目指しています。まだどこからもオファーはありませんけどね(笑)。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 くらたまなぶ

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