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湯之上隆

Profile

1961年、静岡県生まれ。京都大学大学院工学研究科修士課程原子核工学専攻を卒業。 16年間に渡り、日立製作所・中央研究所、半導体事業部、デバイス開発センター、エルピーダメモリ(出向)、半導体先端テクノロジーズ(出向)にて、半導体の微細加工技術開発に従事。2000年に京都大学より工学博士授与。 現在は微細加工研究所所長としてコンサルタント、調査・研究に従事。 著書に『日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ』(文藝春秋)、『「電機・半導体」大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本「半導体」敗戦』(光文社)がある。

Book Information

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半導体と電子産業を復活させたい


――今後はどういった本を出したいとお考えですか。


湯之上隆氏: これまでの本は、敗戦や崩壊、敗北などがタイトルに付いていますが、これは出版社が付けたものなのです。それで、「あなたはネガティブな内容の本しか書けないの?」と言われます。ですから、もし次があるとしたら、「○○の成功」というような、ある企業の成功例を書いたり、日本のある産業の上手くいった例を書いたりしたいなと思っています。

残念ながら半導体は壊滅的になってしまいました。日本の電機産業もかつての輝きは失われてしまいました。僕は、この半導体や電機の出身ですから、この事態のまま死にたくはないと思っています。日本というのは潜在能力はあるのですが、それが上手くビジネスにつながっていない。それは一体何が足りないのだろうというと、それはリーダーだろうと思います。スタンフォード大学の教授をしている西義雄さんという方がいらっしゃいます。スタンフォード大学は、シリコンバレーのすぐ近くにあり、非常にイノベーティブなベンチャーを次々と排出している、そういう学生を出している大学です。そういった大学で、どういう教育方針でやっているのか、聞く機会がありました。

「世の中を見てご覧よ。一企業も一国も、人間というのはピンからキリまでいるんだけれども、決して平等・公平ではなくて、一企業も一国も一握りのピンが引っ張っているんだよ。これが世の中の正しい姿だ。大学の役目は何かと言うと、一握りのピンを排出することなんだ。自分は教育なんかはしない。ピンが自らピンとして成長するように、それをサポートする。ピンを排出するための何かお手伝いをする」というようなことをおっしゃったのです。日本とは違うと思いました。日本がもう一回輝くためにはリーダーが必要です。そのリーダーを育てるためには教育の基本システムからして変えないといけないと思い始めました。何か貢献できないだろうかということで、小学校教育にちょっとですが、関わっています。

――どういったことをされているのですか。


湯之上隆氏: 僕の出身は静岡県の島田市というところで、東日本大震災で出たがれきの処分の協力依頼に全国で一番最初に手を挙げた市なのです。ところが、がれきにわずかながらセシウムの汚染があるということが分かって大反対運動が起きたのです。まったく問題にならない量のセシウムなのですが。ところが、普通の人はどこまで安全で、どこから危険というようなことは、ほとんど知らないわけです。ちょっとでもセシウムがついていたら癌になるのではないか、と過剰反応してしまうのですよ。それで、大騒動になったわけです。ガレキ受入れに対して、賛成派と反対派が真二つに分かれてしまって、険悪な空気になってしまった。これをどう解決したらいいのかなと考えた時に、これは教育しかないと思いました。小学校、中学校で放射線の基本を教えようと、教育委員会に提案しました。教えるためには、まず先生がその素養を持たなくてはいけない。それで、先生向けの研修会を行いました。次に、理科の先生に学習指導要領をつくってもらって、モデル授業をやりました。そして、島田市では小学校4年生から中学3年生までのすべての生徒に、放射線の授業をやるとことになりました。ですが、僕はここで終わらせるつもりはなくて、島田市の次は、静岡県全体に広げ、その次は日本全体に広める。最終的には、放射線を大学受験科目にしたいと思っています。原発をどうするのか、というのは日本、そして世界全体の問題です。それに関わる人、研究者、学者を育てるためにも、こういった教育は必要なのではないかと思っています。

(聞き手:沖中幸太郎)

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