BOOKSCAN(ブックスキャン) 本・蔵書電子書籍化サービス - 大和印刷

世界中の本好きのために

高田明典

Profile

1961年、東京都生まれ。早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了、同大学院理工学研究科博士後期課程単位取得満期退学。 (財)PHRFストレス科学研究所研究員、尚美学園大学芸術情報学部情報表現学科専任講師などを経て、現職。専門は現代思想、通信工学、メディア論。 著書に『情報汚染の時代』(KADOKAWA)、『ネットが社会を破壊する─悪意や格差の増幅、知識や良心の汚染、残されるのは劣化した社会』(リーダーズノート)、『コミュニケーションを学ぶ』『現代思想のコミュニケーション的転回』(筑摩書房)など多数。

Book Information

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

編集者との攻防


――本はどういう時間に書かれているのでしょうか。


高田明典氏: 書くのが早いと思われているような気もしますが、普通の書き手の3倍ぐらいの時間をかけているのではないかと思います。趣味はあまりないし、テレビも見ないし、夏休みは、犬の散歩と食事とトイレ以外は部屋から出ません。だから1日のうち、14時間ぐらいはパソコンの前にいます。勉強とものを書くのが趣味みたいなもの。

実は書くのが遅いんじゃないかなと、最近思っているのです。私は本を読みこむことに時間を費やします。本や論文には穴がたくさんあるのですが、穴がないように書きたいという気持ちが強いのです。プロの研究者はみんな同じかもしれませんね。「この人の文献が参照されてない」とか、「こういう研究への記述がない」といった、強迫観念が強いのではないかと思います。1つひとつ丹念に埋めていきたいというか、自分の原稿の穴を探したいんです。

新書などだと、おおむね10万文字という制限があり、「ここを削れ」と言われて削ると、そこに大きな穴が開くので、1万字削っても、かえってその穴を埋めるために2万字増えてしまったりするのです。私の場合は、長年付き合っている編集者とばかり仕事をしているので、「ここのところ、ごっそりいらないんじゃないですか?」とか「3分の2にしてくれ」などと平気で言ってきます。しょうがないなと思いますが、「どんだけ苦労して書いたと思ってるんだ」と思いましたよ(笑)。

――先生にとって編集者とは。


高田明典氏: 著者と編集者はスポーツ選手とコーチのような関係だと思います。走っているのは確かに私かもしれませんが、本を読むと「え、これ、誰の本?」「こんなんだっけ?」って思うときもありました。最後はもちろん私が全部書いているのですが、編集者の疑問点を埋めていっているうちに、編集者の思惑通りになっていくという感じもあります。哲学系や思想系だと、編集者の知識も半端なものではないので、内容的にかなり突っ込んできます。ある意味で「鍛えられる」感じですね。

私が知らない部分について聞かれたり、「この人のこの文献はどうなんでしょうかね」などと言われることもあります。私が一緒に仕事をした編集者は、全員そういった熱意と知識のある人でした。私の場合は、若い頃から書き手をやっているので、赤が入ったり、色々言われても、なんとも思いません。新しい編集担当者と仕事をしたとしても、「この人は、言っても大丈夫」というのが、匂いでわかるのではないでしょうか。色々と言ってもらって、一緒に作っていく方が、楽しいと思います。意見を言い合わないで出版した後に、大変なことになっても困ります。穴のないものを、世の中に届けることが大事です。

電子の便利さと、紙ならではの良さ


――編集者と意見を交わす事で生まれてくるんですね。


高田明典氏: 電子書籍についても、編集者ともよく話しますよ。毎年「今年あたりブレイクするんじゃないのかな」と言っていて、もう5、6年。「どうして流行らないんだろうね」と、編集者と飲む時に、いつも話しています。おそらく、高いのではないかと思うのです。早く手に入れられるということで、英語版を電子書籍で買うことはあります。でも最近は、Amazonも在庫があれば、当日、あるいは翌日に届いたりするので、やっぱり紙の本かなと思ってしまいます。よっぽど急いでいる時以外は、電子書籍は買いません。

移動中はKindle for iPhoneで読んでいるのですが、ベッドやソファに寝転んで読むのは難しいですね。ベッドで読むのなら紙の本の方がいい。だからベッドで読んでも壊れないとか、よだれを垂らしても壊れないとか、うとうとして額に落ちてきて「ゴンッ」となっても痛くないくらい軽いものだったら、いいかもしれない(笑)。タブレットは意外と大きいですが、小さくても読みにくい。やはり難しいところです。

――電子ペーパーのようなものになればいいですね。


高田明典氏: そこまでいけばいいと思います。あと、今の時点では言われているほど可搬性が良くないのかなとも思います。だから私は、ほとんど家のパソコンで読んでいます。でも日本のKindleだとKindle for PCで読めるものが少ないのです。自分の家のパソコンで読めるかどうかというのも、調べないとわからないことも多いのです。家に帰ってPCで見て、「なんだ、Kindle for PCは対象外じゃん」ということもありました。

ただ、ネットなどの登場により、以前は毎週のように通っていた国会図書館にも、もう何年も行っていないし、神田にも以前ほどは行かなくなりました。今は古書店もネット通販サイトを開いていますよね。私も自炊を500冊くらいまでやったのですが、そこで、本を切る刃が折れて、「500ぐらいでダメになっちゃうのか」と心も折れて、それ以降はやっていません(笑)。うちに本が溢れ過ぎていたので、1カ月頑張りました。一生懸命やりましたが、1日20ぐらいが限界で、それでも家にある本の2~3%ぐらいしか減りませんでした。この50倍やらないといけないと思うと、続けるのは無理でしたよ。

著書一覧『 高田明典

この著者のタグ: 『大学教授』 『アカデミック』 『英語』 『漫画』 『コミュニケーション』 『スポーツ』 『チャレンジ』 『哲学』 『心理学』 『科学』 『学者』 『考え方』 『コンピュータ』 『紙』 『歴史』 『テレビ』 『研究』 『書棚』 『子ども』 『理系』 『お金』 『人生』 『社会学』 『研究者』 『世代』 『アカデミズム』 『プログラミング』 『リーダー』 『古本屋』 『科学者』 『バブル』

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
著者インタビュー一覧へ戻る 著者インタビューのリクエストはこちらから
Prev Next
ページトップに戻る