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長谷川裕一

Profile

1961年生まれ、千葉県出身。 SF漫画、ロボット漫画を中心に活動する漫画家。主な作品に『マップス』『轟世剣ダイ・ソード』『機動戦士クロスボーン・ガンダム』『クロノアイズ』など。 高校卒業後に松田一輝に師事した後、「月刊少年チャンピオン」(秋田書店)1983年11月号掲載の『魔夏の戦士』で商業誌にデビュー。以後、主に月刊少年漫画誌で活動している。 『もっとすごい科学で守ります!』(日本放送出版協会)、『クロノスアイズ』(講談社)で星雲賞を受賞。 現在は、「ガンダムエース」(角川書店)にて『機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト』を連載中。

Book Information

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予想させて、うまく裏切る


――漫画家にとって、編集者はどのような存在ですか。


長谷川裕一氏: 最初の連載だった『マップス』を描いていた時に担当についてくれた編集さんは、「長谷川君はストーリーはできるみたいだから、好きに描いていいよ」と言ってくれていました。方向性に関する指示などはありましたが、大きなストーリーの流れについては、意見が出ることは1回もありませんでした。ですから、その癖が付いていて、結構、好きなようにやらせてもらっているかもしれませんね。

――巧みなストーリー展開はどのように構成していくのですか?


長谷川裕一氏: フリによって、読者に次の展開を意図的に予想させて、それを裏切っていくというような展開を心がけています。予想させる、裏切る、予想させる、裏切る、の繰り返しだと思っているのですが、裏切るのが予想していたのと違う方向、斜め下にいってしまうのはダメ。予想していたよりも主人公はモテた、でもなんでもいいのですが、「予想していたよりもスゴい」、「予想をしていたよりもかっこいい」とか、要するに斜め上へといくのが一番いいと思っています。

轟世剣ダイ・ソード』というロボットの漫画では、「7回しか巨大ロボを召喚できない」という話が最初で出るんですよ。当時、プロの仲間からも「7回しか呼べなくて大丈夫?」と聞かれましたが、でも、それってつまり、8回目をどうかっこよく出すか、ってことなんですよ。

――今までは紙の中で、コマがあってページがあるという概念の中で漫画が成立し発展してきたと思いますが、今後、電子書籍が台頭してくると、見せ方は変わってくるでしょうか?


長谷川裕一氏: 変わるでしょうね。漫画は、いまだに電子書籍でも見開きを使っていますが、電子書籍では逆に見開きが上手く表現できないケースがあるように感じます。そもそも、まんがの画面が縦長でいいのかなという意識もありますよ。モニターで見るなら、見開きではなく1ページずつスライドしていくような描き方が今後、出てくるのかなと思います。今後はモニターで見ることが主で、紙書籍がサブという感じになってくるのかもしれません。今は紙の本がメインで電子出版かサブという位置付けだから見開き単位の構成ですが、そこも変わってくると思っています。

――色の問題もありますよね。


長谷川裕一氏: そうですね。紙でフルカラー印刷をするとコストがかかりますが、モニターで見る分には特に問題がない。作業は大変ですから、原稿料の問題は出てきますけど、少なくとも印刷費用はかからない。普段はモノクロだけど、新しいキャラクターが出てきた時だけカラーで、こういう色だと分からせるとか、そういう手が使えないかなと思って、1、2度、実験的に試みたことはあります。一部、動画を仕込むことも可能かなと考えています。例えば、コマをクリックするとスカートが風でめくれる仕掛けができるかなとか(笑)、そういう方向に特化した、紙では再現できない漫画が出てくる可能性はあると思っています。

――あえて静止画の中に、動くものを少し入れるのですね。


長谷川裕一氏: 紙の漫画でも、8段組みだったコマ数がフリーダムになって、最終的には見開き一コマのところまで変化してきました。頭の中でイメージしたものを、どうやって紙に写すかという工程の中で工夫された結果、コマの形が変わってきたのです。最終的に重要なのは、「作者の頭の中にあるイメージをどのぐらい上手く読者に伝えるか」なので、定型に縛られなくてもいいんじゃないかと僕は思います。一部動画とか、一部色付きといったパターンも今後は出てくると思います。

――そうした変化の中で、電子書籍の可能性についてはどのようにお考えですか。


長谷川裕一氏: もちろん戸惑いもありますが、変わっていくのは当然だとも思っています。自分が漫画を職業にしているから、本の世界の変化に戸惑いを覚えるけれど、映画産業が日本の一番いい時期からテレビに移って、ビデオが出て、DVDが出てきたという流れは、純粋な視聴者として簡単に受け入れてきましたが、当時の現場の人たちは、たまったもんじゃなかったでしょうね。でも、結局そうやって変化するものなのだという意識は持っています。

――紙の本と電子書籍は共存できるでしょうか。


長谷川裕一氏: 共存できるだろうと認識しています。電子書籍が大半を占めたとしても、「紙を手でめくった方がいいよね」という人は必ずいます。シェアの割合が9対1位まで減ってしまう可能性もあるかもしれませんが、それでも紙の本は無くなりはしないだろうと思っています。レコードなど、他の分野での移り変わりを見て、僕はそう思います。

漫画は“おやつ”のようなもの


――仕事の仕方も、変化が大きいように思われます。


長谷川裕一氏: 大きく変わりましたね。今はデジタル入稿ですが、昔では、考えられないことです。原稿をその都度編集さんが自宅まで取りにきて、抱えて帰っていました。一長一短かもしれません。特に相談する内容がなくても、顔を合わせて話をすると、その時々で編集さんと自分との意思の疎通を図ることができるのです。「人気がありますよ」とか、「こういうキャラが受けていますよ」とか、いちいちメールで送ってくれないようなことでも、会話の中で伝わるという部分もあります。一方でデジタルは、締め切りの“ギリギリさ加減”が全然違います。そういった部分では制作に時間をかけられるので、本当にありがたいです。

以前手掛けた『マップス ネクストシート』はデジタルでの連載でしたので、ページ数が自由だったんです。単行本はページ数が決まっているので「190ページ以内に収めてくれ」というような制限があります。デジタルだと1回70ページ使ってもいいし、24ページしかなくてもいいので、だいぶ自由になりましたね。でも、「今回200ページです」ということもあり得るので、結果的に描く方は大変かもしれませんね(笑)。

――漫画家として、世の中に伝えたいこととは。


長谷川裕一氏: ずいぶん昔の話ですが、アシスタント仲間と「漫画とはどういうものか」という話をしていた時に、漫画を料理にたとえたことがあるのです。「漫画はおやつみたいなもの。どうせならおいしい方がいいし、面白い方がいい。でも、栄養はあった方がいい。合成着色料と合成保存料とかで、食べても身にもつかないものは良くないよね」という話をしました。そういうのを維持するのが僕の1つ目標なのかなと思います。「こんな危険な立場の時に主人公はこう思ったんだ」とか、「人間ってそういう弱い面があるよね」とか、なんでもいいけれど、作り話、フィクションの中でそういった経験をしてもらいたいのです。そうすることによって、現実の世の中に出た時に上手く生きられる。僕の作品が、少しでもその助けになればいいかなと思っています。

――今後の展望、抱負を教えてください。


長谷川裕一氏: 最近、メカものが多くて作画が大変なので、作画が楽なものをやりたいなとは思っています(笑)。ネコの漫画とか、可愛い女の子がたくさん出てくるのとか、そういうのを描いてみたいなと思っています。今やっているものを着地させて、また新たな楽しい漫画をやりたいですね。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 長谷川裕一

この著者のタグ: 『漫画』 『科学』 『可能性』 『紙』 『漫画家』 『テレビ』 『研究』 『レコード』 『子ども』 『人生』 『ロボット』 『現場』 『アシスタント』

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