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世界中の本好きのために

匠英一

Profile

1955年、和歌山県生まれ。東京大学大学院教育学研究科を経て同大学医学部研究生修了。90年に株)認知科学研究所を創設し、ストレス対策やコンピュータ利用コミュニケーション研究をビジネスに応用する。専門である認知科学の立場から無意識や直感、しぐさ、消費者行動の働きを研究し、それを軸にした人材開発、コーチング、組織改革、マーケティングなどを行う。 近著に『ビジネス心理』(全3巻:中央経済)、『マンガでわかる! 人間心理を見透かすココロジー練習帳』(成美堂出版)、『1日1分!目からウロコの勉強法』(青春出版社)、『「認知科学」最強の仕事力』(高橋書店)、『仕事の厄介な問題は心理学で解決できる』(河出書房新社)など計40冊ほどあり。

Book Information

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隙間時間を使って学べるシステム


――本を書くきっかけとは?


匠英一氏: 私は、受験予備校の講師を大学院時代からやっていたのですが、自分が納得できるような参考書が当時見つかりませんでした。「自分が認知科学を応用すれば、今よりもっと納得感が出る本が書けるはずだ」と思ったのが本を書くきっかけとなったのです。
日建(ニッケンアカデミー)というところで、総額80億の予算で、レーザーディスクを使った教育システムを、全国に400教室で作るという計画がありました。それは私が30歳頃の時で、「私が今、研究をやっているから、その原理を参考にしてやりましょうか」という話になり、監修・コンサルを引き受けることになりました。それで大学受験のための数学の参考書を全3巻(後にコンクールで受賞)書いたのです。

――参考書を作る時は、どのような工夫をされたのでしょうか?


匠英一氏: 数学では、同じ問題でも3通りぐらいの解き方があります。その問題をワンパターンで解いたら正解、といった本ではなく、最初に仮説を選ばせて、そこから解くということをさせるのです。どの仮説を選んでも解答を作ることができるのですが、より数学としてのエレガンスさを求める、というようなパターンの参考書にしました。そういう発想がないと、参考書も面白くないですよね。
図解なども駆使して、イメージ的に分かるように作ったら、それが教材のコンクールで入賞しました。次の依頼は「無意識の心理」という面白いテーマで、「少し女性向けの本を書いてくれないか」といった話でした。それも評判が良かったのです。特に、仕草をテーマにした本『しぐさと心理のウラ読み事典』は、私は内心「一番売れない本かな」と思っていたのですが40万部も売れました(笑)。そうやっていくうちに、テレビからも声がかかりました。その当時はインターネット関係の会社にいたのですが、心理学者という顔とITのコンサル屋さんの顔とでは全く違うわけです。
そんなことから、やっていること自体は、自分の中では一貫しているつもりなのですが、会社の仕事ではITコンサル屋さんで、本を出すときやTV出演する時は心理学者というように二つの顔を持つようになってしまったというわけですね(笑)。

――大学ではオンラインのものも使っているそうですね。


匠英一氏: ネットは私にとって不可欠なものですから、どんどんデジタルの本的な発想になってきています。本もAmazonなどで、電子書籍で販売したいなと思っています。昨年よりビジネス心理検定のオンライン講座を作り、おそらく日本初だと思うのですがスマホで見られるように5、6分単位で分けてスキマ時間で学べるコンセプトにしたのです。30分くらい見れば分かるといったものならば、色々なeラーニングにもありますが、そんな形では忙しいビジネスマンには受けません。
このコンセプトの背景には、実は6年前に保育系の大手企業向けに企画した「動画OJT支援システム」というプランがありました。これは保育士の教育用の動画教材であり、それを見てお乳やミルクなどを赤ちゃんにあげる動作などがすぐに分かるようなトレーニング動画を作ったのです。
その企画が、経済産業省が選考する候補の15社のうちに入りまして、計3000万円ほど補助金もらうことになりました。これは応用範囲も広いため評判が良かったですね。検定用のオンライン講座では、ネット上で○×クイズのようなものを解いてもらい、間違った時に解説ボタンを押すと講師が登場して動画解説するなど多様な形で連動しているのです。この動画は全3巻の教科書と全てマッチングさせているので、教科書を読んでも分からなかったら、こちらを見てもらえば分かるはずです。

繋がりを見つける、総合プロデューサー


――電子書籍の新しい可能性ですね。どのようなお気持ちでお仕事をされているのでしょうか?


匠英一氏: 私自身は、本質的なことをやりたいのです。「匠さんはeラーニングの専門家なんですか?」と聞かれることもありますが、「eラーニングの会社の技術顧問だったこともあるけれど、私は一般的な「eラーニング」はやりたくない」と答えます。“いかに合理的に納得や理解が進められるような仕組みにするか”を根本から考えたら、こういった形(スマホ対応オンライン動画)になったというだけの話なのです。講演も、「営業マンを育てたい」という相談があると、私は「皆を集めて講座的なことをやる必要はない」と言っています。営業のプロセスで、特にできる営業マンがどのようにやっているか、という場面だけを5、6分で幾つかに分けて、サブタイトルと解説を付けるというのをオンラインで作るのです。でもそれは、私にとってはeラーニングではなく、動画の営業マニュアルなのであって、必要な場面で逆引き辞典として使ってもらいたいのです。たまたま私自身が複数の領域をやっているから様々な繋がりが見えてきますし、それを累乗的に繋げていったらこのような形になってきました。繋がっているところを見つけるというのが私の得意とするところなので、ある意味、総合プロデューサーなのかなと思っています。

――プロデューサーとして、新しいものを作り続けていらっしゃいますね。


匠英一氏: 認知科学、認知心理学をベースにしながらビジネスの世界で本当に役に立つ、新しいビジネスモデルを作るのが私のミッションだと思っています。そのためにオンラインの講座や、新しいネットマーケティングなど業界団体も創ってきました。
今年は、顧客情報を活用する検定試験や「アクティブラーニング協議会」というのを作って、新しい学びの仕方(反転授業)を広げようとしています。自宅でオンライン講義を受けてもらって、大学や学校に来た時は、ディスカッションをしたり、ものを作ったりするなど、みんなで集まってしかできないことをやるのです。今までの講義とは逆のスタイルですね。これはスタンフォード、ハーバード大学などではもう成功モデルとして出てきています。文科省の方でも反転授業を進めていこうということなので、アクティブラーニング推進協議会というのを作ることにしたわけですが、国の予算をもらうことができませんでしたので、当面は啓蒙的なセミナーをするなどやっていく予定です。

――今後はどのようなことに力を入れていきたいと思われていますか?


匠英一氏: 自分が言ったり感じたりしたことを広く伝える手段としては、もっと電子ブックのように、検定の教科書や本を立体的にしていきたいと思っています。文字には文字の良さもありますが、本に書いてあることは紙媒体としての一部であって、そのバックには私たち著者自身の言いたいことがもっと多くある訳です。それを上手く繋げていくことができるようなモデルを、もっとビジネスに広げていきたい。リアルとネットを上手く連結させ、ユーザーであると同時に文字媒体と繋がっているという感じかな。それに共感してくれる人がいれば、なおうれしいですね。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 匠英一

この著者のタグ: 『大学教授』 『心理学』 『コンピュータ』 『ビジネス』

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