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世界中の本好きのために

川島隆太

Profile

1959年生まれ、千葉県出身。東北大学医学部卒業、同大学院医学研究科修了(医学博士)。専門分野はヒトの脳活動の仕組みの解明、研究と応用。脳のどの部分にどのような機能があるのかを調べる「ブレインイメージング研究」の第一人者。著書に『川島隆太教授の親子で「脳トレ」 たくましい脳に育てる毎日の習慣』(静山社文庫)、『年を重ねるのが楽しくなる! [スマートエイジング]という生き方』(共著、扶桑社新書)、『天才の創りかた 脳を鍛えて進化させる方法』(講談社)など多数。ニンテンドーDS用ソフト「脳を鍛える大人のDSトレーニング」等の監修も務めている。

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先人を尊敬し、ルールに従う


――川島さんの本には、将来を見据えた、研究者としての思いが込められているのですね。執筆の際は、編集者の方とのやり取りも多くあったのでしょうか?


川島隆太氏: 僕たち研究者は社会と深く関わっているわけではなく、極めて閉ざされた社会の中で暮らしています。しかし、多くの広い社会に対してメッセージを出したいという矛盾した思いを持っているので、当然媒介となる編集者の方が必要となります。僕の思いを伝えるために、彼らの視線はとても有効です。でも、それを取り入れたら本が売れるかと言えば、それは別物なのかもしれないと僕は思います。

――川島さんはご自身をどう分析されていますか?


川島隆太氏: 僕はどちらかというと、直感的に物を見るタイプの性格です。昔していたラグビーでは、ゴツゴツと人と当たるフォワードよりは、全体を見ているフルバックが一番楽しかったです。全体を見ていると、「ああ、ここで球をもらってここを走っていけば敵陣奥深く行けるな」などがパッと見て分かります。そこに魅力を感じていました。元々の性質・性格なのでしょう。

――生きていく上で大切にされているモットーはありますか?


川島隆太氏: ルールを守ることです。でもそのルールというのは、目の前に見えている世界だけではなく、例えば我々の先人たちが何を目指して、我々に何を託そうとして社会を作ってきたかというような、大きな時間のうねりの中で人としてやってきたことに対して、後ろ足で砂をかけるようなことはしたくありません。目の前で列を乱すやつがいたらカッとすることがあります(笑)。少なくとも「僕と僕の家族にだけはそんなことは絶対させないぞ」というような思いはあります。

同じではつまらない。それぞれが持つ、異なる精神世界が魅力


――お仕事で、電子書籍はよく使われていますか?


川島隆太氏: まだ専門書に関しては十分に電子書籍化されていないので、僕たちの周りにはあまり普及していません。論文を読み込むことが僕たちの仕事でもあるのですが、その論文は全て電子媒体でゲットできます。電子ジャーナルから必要な論文をPDFで引っ張り下ろしてきて、そこから先はパソコンやタブレットを使って自分で読み込んでいくのです。ですから、いわゆる電子書籍というのは僕ら研究者のそばには特にはありません。
コンテンツは、データベースにもなっていて、デジタル化されていますが、僕は古い人間なのか、本気で読み込もうと思うとやっぱり紙が良くて、印刷してしまいますね(笑)。

――紙媒体と電子書籍、それぞれの良さとはどういった部分でしょうか?


川島隆太氏: 紙と画面の違いを調べるために、脳の計測をしたことがあるのですが、同じものを読むだけであれば、紙であろうが電子媒体であろうが脳の働きにはっきりとした違いはありませんが、精読する時には少し差が出るかもしれません。特に紙媒体の場合は、自分の記憶を基に、見たいところへパッと戻って見ることができますが、今の電子書籍というのは、1ページずつ戻していかなければいけなく、それがとてもやりづらいのです。そこが電子書籍の鬱陶しい部分です。海外出張の時、荷物が本で重たくならないよう、読みたい本を電子書籍の中に10冊分ほどダウンロードして行きます。その時しか、僕は電子書籍は使いません。非常に軽い中にたくさんの本が入るということが、僕にとっての電子書籍の最大のメリットかもしれません。あともう1つ。電子書籍の良いところは、目が疲れたら字を大きくできるというところ。これは、我々中高年には特に良いところだと思います。

――人にとって、読書とはどのような意味を持つのだと考えられていますか?


川島隆太氏: 読書というのは、自分自身の精神世界を作ってその中で遊ぶものだと僕は思っています。それをするには、情報量が多いと邪魔になるのです。少ない情報量で自分の精神世界を作って読むから面白いと思うのです。読書と電子媒体というのは、もしかしたら相性が悪いのかもしれません。作家の方の精神世界とは同一ではないという前提のもと、作家の方の精神世界の中に入って行くという読み方がありますが、同じ本を見ていても自分の作った精神世界と、例えばうちの女房が読んで作った精神世界は明らかに違います。同じ本を読んでいても、視線の位置が違うので、精神世界が異なるのです。だからこそ面白いのだと思います。

――情報量が多いと、その面白さを味わえないと。


川島隆太氏: でき上がったアーキテクチャーの中にあるゲームのような世界や、SNSの世界など、インターネットでつながることで、誰もが同じ精神世界の中に引きずり込まれるような場所には、デジタルな世界が作り込まれています。そういった場所に入るというのは個性を失うだけで面白くないという気がしています。
今の技術の発達の中で、情報量を増やすということがいいことだと考えられてきました。おそらく、これからも電子書籍はインターネットを介して色々な検索機能を付けながら、誰もが同じフレームの中に「カチカチカチ」と押さえ込まれていくような発展をするのではという予感があります。

著書一覧『 川島隆太

この著者のタグ: 『アドバイス』 『研究』 『理系』 『研究者』 『ルール』

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