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世界中の本好きのために

オダギリ展子

Profile

メーカー勤務を経て、特許事務所で外国特許出願事務に携わり、事務業務のリスクヘッジや効率化のノウハウを身につける。その後、派遣スタッフとして貿易事務を担当。業務の効率化と質のアップを追究した結果、過去の担当者の月100時間を超える残業をゼロにした経験を持つ。現在は事務効率化コンサルタントのほか、セミナー講師としても活躍。 著書に『最強の文具活用術』『最強のデスクワーク術』(PHPビジネス新書)、『仕事がはかどる デスクワーク&整理術のルールとマナー』(日本実業出版社)、『仕事が10倍速くなる 事務効率アップ術』(フォレスト出版)など。

Book Information

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読んだ人が楽しめる、自分にしか書けない本を書く



事務効率化コンサルタントとしてご活躍中のオダギリさん。特許事務所で身につけた事務業務のリスクヘッジや効率化のノウハウを、後に携わった貿易事務に応用し、過去の担当者の月100時間を超える残業をゼロにしたという実績をお持ちです。現在は、執筆活動やセミナー講師など、精力的に活動されています。文具にも大変造詣が深く、「本来の使い方ではない、オリジナルな使い方を考えることが生きがい」とおっしゃっています。著書には『最強の文具活用術』『最強のデスクワーク術』(共にPHP研究所)、『デスクワーク&整理術のルールとマナー』(日本実業出版社)などがあり、処女作の『オフィス事務の上手なすすめ方』(同文舘出版)は、台湾にて台湾版翻訳書として出版され、アジア数ヶ国で販売されています。今春には、『完全図解 いちばんわかりやすい ビジネス整理術』(成美堂出版)が発売予定とのこと。今回は、便利な文具をご紹介いただくと共に、人生のターニングポイントとなった人との出会い、今のお仕事へとつながった貴重な経験などについて、語っていただきました。

パソコンが普及しても、人の手でなければできない部分もある


――事務効率化コンサルタントというお仕事のほかにも、色々なお仕事をされていますね。


オダギリ展子氏: 基本的に、事務の効率化に関わることをしています。執筆が主で、セミナーも時々している、といったところでしょうか。
昨年は、特許事務所でもセミナーを行いました。私が特許事務所で働いていた初期の頃は、オフィスにはまだパソコンがない時代だったので、今とは随分勝手が違っていましたが……。
特許事務所に限らずですが、現在は、業務のあらゆることがパソコン任せになっていたりするせいか、「文具などにはあまり必要性を感じない」という意見もあるようです。ペーパーレス化が進んでいる職場もありますね。
けれども、日々の業務やその効率化を考えたときに、「ここだけは人の手でなければできない」という部分もあると思って取り組んでいます。

――文具など、便利グッズなどのご紹介もされていますね。


オダギリ展子氏: 元々使い勝手の良いものやアイデア商品は好きでしたが、あるとき取材で、「好きな文具を持って来てください」と言われたんですね。そのときの候補に挙がったのが、黄色の蛍光ペンでした。
それまで蛍光ペンは、会社の備品で十分満足していたのですが、独立した後は、自分で買いに行くしかない……。で、社会人になって初めて蛍光ペンを買いに行ったら、売り場には色んな種類の蛍光ペンがあって、ビックリしたんです。それが面白くて、結局文具売り場を3、4軒ハシゴして……(笑)。
その際に見つけたのが、こちらの口紅のように出す固形ゲルタイプのもので、書き心地がとてもいいんです。染みることもなく、2~3日キャップを開けていても平気なんですよ。
他にもペン先がカブト虫のツノのようになっていて、太線と細線と二重線がひけるものもあります。黄色の蛍光ペンだけで、14本くらいありますね(笑)。
あと、これはライオン事務器さんのマカロンデザインクリップという商品で、製作の企画に私も参加させていただきました。



――2013年の『人生が変わる!読書術』では、読書ライフをより豊かにするアイテムについて、書かれていらっしゃいますね。


オダギリ展子氏: Yomuparaというとても良心的なサイトがあって、読書のためのお役立ちグッズがたくさん紹介されています。
例えば、このページキーパーは、読みかけのページが分からなくなってしまうのを防ぐことができる優れモノで、「電車の中での読書にはこれが一番便利です」とYomuparaの方から直々に教えていただきました。実際に私も使っていますが、すごく便利なので、読書が好きな方には、本当におすすめです。
あと、マークしたいページの行まで矢が指し示してくれるブックダーツ。これは薄くて、使い勝手が非常に良いです。
何かをテーマに文具を探していると、このように便利なものが色々と見つかるので、とても面白いです。
他にも、地震の際に棚から書籍が落ちないように書棚に貼り付けて使う「落下抑制テープ[書棚用]」(住友スリーエム)やブックカバーとお財布が一緒になっている「AZ ブックウォレット」(スリップオン)などの便利なものもあります。蔵書がたくさんある方、戸外で読書をする際にお金もちょっと持って行きたいんだけど……などという方にピッタリですね。

――これはどういった時に使うものなのでしょうか?


オダギリ展子氏: コレは、「読書記録しおり ワタシ文庫」と言って、図書館の貸出カード型の「しおり」です。せっかく本を読んでも、タイトルや内容を忘れてしまっては勿体無いですよね。本を読み始めた日、読み終えた日、タイトル、著者名、そして簡単な感想が書き込めるんです。色違いもありますよ。
これを作ったBeahouseの阿部ダイキ氏は、「どや文具ケース」や「立つノートカバー」などといった面白いものも作っていて、色んな賞を受賞されています。「立つノートカバー」は会議や商談先でとったメモなどをパソコンで入力する際にもすごく便利です。

――本には昔から興味があったのでしょうか?


オダギリ展子氏: いえ、読書好きではありませんでした。
小さい頃は、自分を持っていたというか、ちょっと変わっていたそうです(笑)。4人姉弟なのですが、父や母に「出掛ける」と言われても、私だけ、なかなか出掛ける用意をしなかったとか……(笑)。
実は、最初は親戚にも本を書いたことを公にしていませんでしたが、冠婚葬祭で親戚が集まった時に、私が自分の本を持って行ったら、「あぁ、なるほど」という風に言われました。「何か人とは違った方に進むだろうな」と思われていたようです。
でも、その頃から「かくこと」は好きだったかもしれません。中3の卒業文集に、夢は漫画家と書きましたから(笑)。

高校での、英語の先生との衝撃的な出会い


――中学・高校時代にはどのような思い出がありますか?


オダギリ展子氏: 高校1年の時の担任は英語の教諭で、ものすごく素敵な先生でした。見た目も素敵だったのですが、言うことがほかの先生と違ったんですね。一番ビックリしたのが、「どうしてもそのアーティストのコンサートに行きたいとか、(そのことに対して自分が)信念を持っているなら、僕は、(学校を)休んでもいいと思うよ」と仰ったことです。もう目からウロコという感じで、それだけで先生が大好きになりました。
卒業後もずっと気になっていて、少し前にインターネットで先生を探して再会することができ、良い思い出となりました。

――その後、大妻女子大学に進まれましたね。その先生の影響もあったのでしょうか?


オダギリ展子氏: 先生が大好きで英語だけ勉強していたので、英語の成績はさすがに伸びました。それで、進学するなら英文科に行こうと決めました。私が受験した短期大学部の英文科は、試験科目が英語と国語で、赤本を買って受験勉強したのを覚えています。
父は、滑り止め受験はさせないという教育方針だったので、「この短大1本」というプレッシャーがありました。担任の先生からも「本当にいいのか?」と心配され、弱りました(笑)。自信は全然なかったですし、怖かったですね。
後で父に聞いたら、「そうしないと頑張らなかっただろう?」と言われて、「やられた~!」と思いました(笑)。厳格だけどやさしい父でした。

自分が楽しいことを仕事に


――本を書こうと思ったのはいつ頃でしょうか?


オダギリ展子氏: 英語と言っても文学的なことは好きではなかったし、当時就職に有利だったということもあって、短大では商業英語を勉強しました。
本を書くことは、特に考えておらず、私が最初に就職したのはメーカーでした。英語の書類がいっぱいくるということで、楽しみにしていたのですが、英語の書類がきたのは、残念ながら、最初だけ……。
それで、転職活動をして、特許事務所での英文事務という仕事を見つけたのです。特許のことはよく分からないけれど、英文事務という仕事に大きな魅力を感じたのでしょうね。
仕事をしている時間は、1日の中で一番長い時間です。その間自分の好きな英語に携われたら、こんなにうれしいことはないじゃないですか。
後に派遣社員として貿易事務の仕事をしたのですが、その時に一緒に組んだ方も「働いている時間は一番長いから、僕は楽しく働きたい」と私と同じようなことを仰っていて、実際その職場では良い仕事ができたように思います。

――特許事務所でのお仕事は、どのようなものでしたか?


オダギリ展子氏: 外国に特許を出願するという仕事で、英語ばかりだったので本当にうれしかったです。当時の私は水を得た魚のように生き生きと仕事をしていたのではないでしょうか。
でも、特許事務所に入った時に「ちょっと変わったルールあるから」と言われていて、就業して少し落ち着くと、その風変わりなところもわかるようになりました。
例えば、郵便物が届いたら、普通は封筒の上部だけを切って、その封筒は社内便用に再利用したり、そのまま捨てたりしますよね。でも、その特許事務所では、封筒が全開できるように三辺を切って、書類を取り出した後何も残存物がないと確認して初めて封筒を捨てても良いとなるのです。
封筒の再利用などという考えは全く頭になく、リスクを回避するためにはお金をいとわない、というところは徹底していましたね。とにかく「ミスを防ぐこと」を一番に考えていたと思います。
後に商社で貿易事務の仕事をした時に、社内便の封筒を整理していたら、かなり重要そうな書類がその中から見つかったことがありました。幸い大きな問題には至らなかったようですが、その時に特許事務所のやり方は正しかったのだな、と思いました。特許事務所では本当に良い経験をさせてもらいました。

――『仕事がはかどる デスクワーク&整理術のルールとマナー』にもそういったノウハウを書かれていますね。


オダギリ展子氏: 封筒の開封方法やコピーのとり方などを書きました。
例えば20枚とか30枚くらいの書類が複数ある時、書類は大体ホチキスで留まっています。私の先輩は、それを書類ごとにコピーするのではなく、最初にホチキスのハリを取って、各書類のトップページの左上のところにA、B、C、D……と順番に書いて、一気にコピーをしていたのです。合理的でしょ?
でも、それを本に書いた後、セミナーで「書類にABCとは書けないのですが……」と言われたことがあったんです。それで、ホチキスを外した跡に点を1個、2個、3個……と書いてから一気にコピーして、その点を隠すようにホチキスでとめるという方法を考えました。
それからも、作業を容易にする方法を模索し、最終的には、ホチキスを全部外して書類ごとに上下の向きを交互に変えてセットしてコピーをすればいい、という方法へとたどりつきました。

――そういった発想は、どこから湧いてくるのでしょうか?


オダギリ展子氏: 例えば道具でも、既存のものでいいものもあると思いますが、意図しなかったであろう方法を考えるのが面白いのです。
以前、「壁掛け時計がほしいな」と思っていたのですが、賃貸だからこの家の壁に釘は打てません。それで私はバナナスタンドを使うことをひらめいたのです。
特許が取れるような発明をするのは難しいですが、こういった小さなアイデアを考えるのは楽しいですよね。朝起きた時にフッと浮かぶこともあるので、そのときは、書きとめるようにしています。
あと、私は「何かに似ている」という共通点を発見するのがすごく好き。間違い探しも大好きですが、識別することが好きなのです。魚の図鑑などを見るのも好きですね。
父も母も金沢出身で、魚が食卓に上ることが多く、親に「この魚は何だ?」とよく聞かれました。でも、正確に答えることができなかったんですね。その悔しさが根本にあるのかもしれません(笑)。
例えば、ブリとヒラマサは似ているけれど、旬が違うので店先で比較することはできません。でも、この図鑑でなら比べることができます。違いを見つけて、区別がつけられるようになることほど、面白いものはありません。

メルマガの反響の大きさが出版につながった


――本を発表するようになったきっかけとは?


オダギリ展子氏: ずっと派遣社員として仕事をしていたので、「何かしなければいけない」という気持ちがあったのではないかと思います。それで、メルマガを書くことにしました。
そのメルマガの第2回目の内容が「FAXを送る時は宛名に注意しましょう」とか、「再送する時はこのようにしましょう」といったものでした。私としては普通のことを書いたつもりだったのですが、かなりの反響があったんです。その反響の大きさに、少し不思議な気持ちもありました。
そして、メルマガを書き始めて1ヶ月も経たないうちに出版社から出版のオファーがあったのには、本当に驚きました。2004年のことです。
そのことを知人に相談したら、「最後の最後に、『半額払え』と言われるかもしれないから、気を付けて」と言われました(笑)。
最初は半信半疑という感じもあったのですが、「新入社員に向けて」という、提案されたテーマに基づいて、編集さんと一緒に目次や構成などを考えていきました。

――初めての本を書かれた頃は、会社で働かれていたそうですね。


オダギリ展子氏: フルタイムで働いていたので、本を書くのは大変でした。毎朝4時に起きて、6時前に家を出て、7時前に会社に到着。そこから始業時間までの間に手書きしたものを、週末にパソコン入力するという感じで書き進めました。
本を書く時間を捻出するため、毎日22時に寝ていましたし、本を書いている間は、会社の行事には参加しませんでした。大変でしたが、受けたからには書かないと、と思って4ヶ月強で書き上げました。
そうやってでき上がった本を見た時は、本を書くこととは無縁と思っていただけに、不思議としか言いようのない感覚に包まれました。

――本を書かれてから、周りの環境など変化はありましたか?


オダギリ展子氏: すぐにはありませんでしたが、本を出してから約1年後、日経新聞の夕刊の1面に私のインタビュー記事が大きく掲載されたのです。その日から私の運命が大きく変わったような気がします。
メールボックスを開けるたびに仕事や取材のメールが入っていたりして、「これならフリーでやっていけるかもしれない」と思ったくらいでした。
最初に「本を書きませんか?」と声を掛けてくれた編集長には、足を向けて寝られません(笑)。
私の本はノウハウ本が多いので、「好きに書いていいよ」と言われることが多いのですが、そういう本を書いている時は、無条件で楽しいです。
私は人をビックリさせたり、楽しませたりするのが好きなんですね。で、その反応が良いと、こちらまで嬉しくなる!



本との出会いが人生を変えることもある


――お好きな本、印象に残っている本はありますか?


オダギリ展子氏: 小さい頃はそれほど本を読んでいませんでしたが、本を書くようになってからは、よく本屋さんに足を運ぶようになりましたね。
近所にジュンク堂さんができたので行く機会が増えたのですが、ジュンク堂さんのあの本の並び方はすごいですよね。
そういえば、最近は、本屋さんに行くと、何が売れているのかなどもチェックするようになりましたね(笑)。
印象に残っている本、といえば、私は、推理小説も好きで、松本清張さん、夏樹静子さんなど、実家の本棚にあったものを読んでいました。
夏樹さんの本で連続殺人事件を題材にしたものがあるのですが、被害者の接点が最初は分かりませんでした。後に、病院付近の路上で違法駐車をしていた人たちがターゲットにされていたことが判明したのです。つまり、その車がなければ(救急車で運ばれた)自分の身内が救われたという恨みが動機。すごく怖いなと思いました。
死体が見つからないという謎解きにおいては、庭のアジサイの色が赤に変わったのは、遺棄された死体の影響で、土の成分が酸性に変わり、植わっていた花の色も変わったのではないかと見抜くものや、指輪が植物の成長によって地上に出てきて、死体遺棄の場所を教えてくれたなど、夏樹さんならでは、と思います。
また、松本清張さんの作品には、『ゼロの焦点』がありますが、こちらは、私の生まれ故郷の金沢が舞台となっているので、親近感も湧いて、ますます興味深かったです。
西村京太郎さんも好きです。彼は、湯河原に西村京太郎記念館を建てる際に、館内に死体の模型を置こうと思ったそうなのですが、警察かどこかから「それはやめてください」と怒られたようなことをテレビの対談番組で仰っていました。それを聞いて、本当に面白い人だな、と思いましたね(笑)。

――本の魅力、本の可能性はどのようなところにあると思いますか?


オダギリ展子氏: 私の場合、自分が20年以上かけて得た業務上の経験の1つひとつがネタとなって1冊の本が構成されています。そして、3ヶ月くらいかけて執筆します。けれども、これを読むには、1時間半から2時間くらいあれば、できてしまうのです。
たった数時間読むだけで、それだけの経験が疑似体験できる「本」って、スゴイと思いませんか?
「本で人生が変わった」というような出会いがあっても不思議ではないですよね。

――電子書籍についてはどのようにお考えでしょうか?


オダギリ展子氏: 紙の書籍の場合は、増刷にならなければ、在庫限りで販売終了です。けれども、電子書籍の場合は、そうはならない。これは、ありがたいことだと思います。
また、電子書籍には、物理的な制約がない。置き場所に困らないというのは、大きなメリットですよね。
私の場合は、書籍からリンクで飛んで、私のお薦めする文具などのグッズを買うサイトに直接つながるなど、そういったことも出来るといいなと思います。

――今後はどのようなことに力を入れていきたいと思われていますか?


オダギリ展子氏: コピーやFAXなどに関して本を書く人はあまりいないような気もしますが、今後もそういった、自分にしか書けないことを書いていくと思います。衣食住に関する効率化についても書きたいですね。
出版社からは「事務の効率化、技などを書いてください」というオファーが多いです。次作には、コピーやFAX、ファイリング、それから手帳やノートのことも書いています。
「若手ビジネスマンが入社後に困らないように」ということをテーマとした本で、『完全図解 いちばんわかりやすい ビジネス整理術』というタイトルです。今春、成美堂出版から発売されます。
後は、自分にできることは、できるだけしたいと思っています。
「自分の身を削って本を書いている」という著者さんがいらっしゃいましたが、本当にそうだと思います。
自分にしか書けないことを書いて、読んだ人が良い意味で「コレは誰が書いているんだろう?」と改めて表紙を見返してくれるような本が良いですね。

(聞き手:沖中幸太郎)

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