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吉村葉子

Profile

神奈川県藤沢市生まれ。立教大学経済学部出身で、20年間のパリ生活から得た見聞をもとに、日仏の文化の違いをとおして、よりよい生き方を模索する著作が好評を得ている。 主な著書に、『お金をかけずに食をたのしむフランス人 お金をかけても満足できない日本人』(講談社)、『我が子を勝ち組にする「ラ・フォンテーヌの童話」』『お金がなくても平気なフランス人 お金があっても不安な日本人』(共に講談社)、『パリの職人』(角川書店)などがあり近著では『フランス流 お金をかけずに豊かに暮らす方法』(中経出版)がある。

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「いけず」なフランス人が教えてくれたこと


――作家活動のきっかけとなったパリでの暮らしですが、苦労も多かったのではないですか?


吉村葉子氏: 最初は言葉もわからなかったし、いろいろな場面で、フランス人はなんでこんなに「いけず」なんだろうと思っていました。

――どのような部分で「いけず」と感じられたのでしょうか?


吉村葉子氏: 例えば、アポイントを取って取材に行ったのに「知らないよ」って言われるのがパリです。取材を初めて10年過ぎた頃でも、取材前にファクスでもう一度確認を入れても、アポイントしていた人が急にバカンスに出ちゃったとか、子どもが熱を出したから今日は休みだということもありました。カメラマンが日本から来ていたりするから、約束をほごにされたら私の信用にかかわる。私は全く怒らないタイプだけど、そういうことをされるとプライドが傷つきますよね。

――パリで取材をされる時に気をつけていることはありますか?


吉村葉子氏: そういう予測していなかった事態になった時、次にどこへ行ったら良いかを最後まで考えておくことです。パリの取材はずっとそうでした。それは本当にパリだけで、ロンドンもミラノでもそういうことはない。いろいろ行ったけど、パリが一番緊張しました。だって「いけず」なフランス人ですから。でも、そんなパリだからこそ、何かできた時はひとしおにうれしいですね。

――フランスでの苦労が表現の原動力になっているのでしょうか?


吉村葉子氏: 子どもの時、「息を止めてあそこまで行けるか」とか「目をつぶって歩いてみよう」なんて言って、勝手に挑戦している子っていましたよね。私はもともとそういうタイプの人間で、そんな私には「いけず」なパリが合っていました。どちらかというと、いつも自らそっちばかり選んでしまいます。「艱難汝を玉にす」という古い言葉がありますが、皆が皆そうだとは言わないけど、それはほかの人にもあるのではないでしょうか。私は、あんまり簡単なこと言われるとバカらしくなる。小さい頃から、100回ドリルなんて嫌いで、計算なら最後の一番難しいのが1つできれば良いという考え方です。
外国に行く人を分類するとすれば、バリ島でリゾートを楽しみたいか、パリに行っていじめられて、無視されて、こてんぱんにのされるか、そのどちらかに行くような気がします。私は、フランス語が下手でも、なめられないでやっていけるようになりたいと思っていて、またそれが楽しかった。他人になめられないっていうのは大きなメルクマールで、難易度はパリが一番高いと思います。

――フランスで勉強したい、仕事をしたいという方も多いと思いますが、どのようにアドバイスされますか?


吉村葉子氏: がんがん行けと言っています。若い子には「トラ・トラ・トラ」をもじって、「トライ・トライ・トライ」。もたもたしないで、なんでもやってみればいい。外国に行きたければ行けばいい。「行きたい行きたい」って騒いでいるから「行けば良いのに」って言ったら「物事はそんな簡単じゃない」って言う。それは結局、行きたくないということです。本当に行きたかったら行きますから。

いろいろな人がいるのが当たり前



吉村葉子氏: 私は、『お金がなくても平気なフランス人 お金があっても不安な日本人』という本を書きましたが、「フランス人は」っていう言い方で一般化するのは、実は好きじゃない。エッセイを書く以上、説得力がないといけませんからそう書いていますが、本当に書きたいのは、「お金がなくても平気な人間」のことです。それを私がほかの人より知っているフランス人をネタにしてお話しているだけですね。
いろいろな人がいるのは当然です。例えばジャン=ジャック・ルソーは、4、5人子どもができて、自分で育てる自信がないから、全員施設に預けている。あの啓蒙思想家が、です。よくそれで偉そうなことを言うな、とも思いますが、そんなおおらかで好き勝手な人が、大哲学者の名前をほしいままにしているのはうれしくなる。デカルトの「我思う故に我あり」じゃないけど、レゾンデートル、自分の存在理由って、「今何を考えてる」っていうことしかない。色んな人の考え方があってオーケーというのが基本です。
ただ、私は子どもが大好きだから、子どもは親を選べないなとつくづく思います。例えば、子どもに小学校受験させたい親もいる。夫が「小学校から高いお金出して私立に行かせることないんじゃないの」と言っても、奥さんは「じゃあ、あなたが全部責任を取ってよ」って全部任せている。そういう人たちがいても良いと思うけど、もっと好きにさせてあげた方が伸びるんじゃないかとも思いますね。

――お子さまを教育する上で、よく言いきかせていることはありますか?


吉村葉子氏: いじめについてよく話します。意地悪しても勝手だけど、人を傷つける権利はない。いじめは絶対にあるし、なくならないんだけど、「皆がやるから自分もやる」というのはひきょうだということは言っています。ただ、「その人はそういう人だから」と、意地悪されても真に受けず、感じないずぶとさも培われたら良いですね。
あと、仕事を大切にしてもらいたい。私は皆と仲良くしたいと思っていますが、仕事を大切にしない人とは絶対付き合いたくない。例えばペンキ塗りを頼まれて、雑にする人とは接点を持たない。その人に文句は言わないですけど。娘にも仕事を大切にする人になってもらいたいと思っています。それは強引な親のしつけであって、自分が正しいって思っている訳じゃないし、色んな生き方があると思うんだけど、やっぱり何をやってもごまかしはきかない。それは彼女なりに考えてやってもらいたいと思っています。
私がパリに住んでいる時、妹が東宝のやくざ映画を送ってくれたことがあるんです。高倉健さんのですね。それがあんまり単純で面白くて、若い時これを見ておけば良かったと思いました。昔のやくざ映画はすごく好きです。時代が変わっちゃったから大きい声じゃ言えなくなったけど、子どもにはそういう「仁義」のようなことを教えるのが良いんじゃないかな。とりあえず、健さんみたいに、単純明快な、尾ひれのつかないきれいごとの男だてを見せれば良いと思う。少なくともひきょうではないし、軸足がしっかりしていますからね。

著書一覧『 吉村葉子

この著者のタグ: 『女性作家』 『海外』 『考え方』 『生き方』 『アドバイス』 『お金』 『エッセイ』

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