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世界中の本好きのために

守屋淳

Profile

1965年、東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大手書店勤務ののち、作家として独立。『孫子』『論語』『老子』『荘子』などの古典の知恵を現代にどのように活かすかをテーマとした執筆や、企業での研修・講演を行う。 著訳書に『最高の戦略教科書 孫子』『ビジネス教養としての「論語」入門』(日本経済新聞出版社)、『現代語訳 論語と算盤』(ちくま新書)、『孫子・戦略・クラウゼヴィッツ』(プレジデント社)、『論語に帰ろう』『現代語訳 渋沢栄一自伝』(平凡社新書)など多数。

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本には、選んでもらうための売りが必要


――サラリーマンを辞めるというのは大きな決断だったと思うのですが、その時のお気持ちは?


守屋淳氏: 怖さ半分、期待半分でした。私が独立したのは32歳の時でしたが、妻と子どももいなくて、家も買ってない、というように独立しやすい条件が揃っていたので気は楽でした。貯金は少しありましたが、最初の年は年収が諸経費を差し引くと8万円くらいで、その次の年が36万だったかな。書店にいた時に、大きい書店の新刊書売り場の責任者をやっていて、出版社の営業の方との繋がりというのはかなりあったんです。そういう繋がりを上手く使っていけば、食べる分には困らなくはなるかなとは思っていました。人というのは、先生タイプと芸人タイプに分かれると思っているんですが、私は完全に芸人タイプなんです(笑)。先生タイプは尊敬されたい人、芸人タイプは面白いと思ってもらいたい人。私は「ウケたい」、これが動機なので、多少危なくても面白くなりそうな、そういう方向に行くのだと思います。

――書店では、どういった仕事をしていたのでしょうか。


守屋淳氏: その当時は1日に100点~200点くらいの新刊が出ていたのですが、その中からセレクトして新刊書売り場のところに置いていくんです。それを選ぶために「この本の売りってなんですか?」と営業の方に聞いていました。でも、答えが殆ど返ってこないんです。編集者もそこまで考えて作っていなかったり、「この著者だから売れるでしょ」とか、あとは「売れている本と同じような本だから、これも売れる筈だ」とか、そういった発想で出したりするんです。実は、書店員時代に、出版社の編集者を1年間預かったことがありました。その人は1年でどんどん変わっていきました。レジで接客して、ライバル社の本の方が売れていたりするのを目の当たりにすると、「なんでライバル社の方が売れるのか」と真剣に考えていました。そうすると「表紙に工夫が無い」など、色々なところに気付いていくんです。そういうリアルな経験をしないと、なんで売れないのかということにはなかなか気が付きません。だから、営業の人に突っ込んで聞いてみても、返事が返ってこないのです。「それならば」と、その本を作った編集者や、時には著者に売り文句を聞きに行ったりしたんです。内容が良い本はいくらでもある。その中から「じゃあこの本」といって選ばれる理由が無いと、本は売れにくいというか、手に取ってもらいにくいのです。

――書店勤務のご経験を踏まえて、書店の役割はどのようなところにあると思われますか?


守屋淳氏: ネットの書店と何が違うのかと言うと、Amazonでもオススメの本などが色々と出てきますが、書店だと一望できるので、こういう本もあったんだとか、こういった本と繋がっているんだというところなど、見えてくるところがあるんです。そういった繋がりが見えることは、書店の大きな強みだと思います。いくら工夫をしてもネットでは画面でしか見られない。でも、本は収納場所に困ります。私の知り合いにも「コミックを大人買いする場合、本で買うと奥さんに怒られる。だからもう電子に変えたんだ」という人が結構いるんです。そういう人が、かなり増えています。最近話題になっている『進撃の巨人』などを、若い人を知るためにも買って読んでみた方がいいのかなと思うのですが、巻数が多く出ているとわかると躊躇してしまうんです。でも電子だったら一括してダウンロードしちゃえばいいだけですよね。

インプット7割アウトプット3割


――本を書く時、書き出しはどのようにはじめられるのでしょうか?


守屋淳氏: あまり考えずに、とにかく書いて、それから納得がいくまで書き直します。原稿用紙350枚分くらい書いても、自分で出来が悪いと思ったら、もう1回最初から書き直す。それも半分くらいまで書いて、「やっぱりダメだ」と全部チャラにして、もう1回一から書いてようやく良いかなと思えた、ということもありました。気に入らないと思ったら1回仕切りなおして、書き直しまくる。ひたすらその連続です。

――執筆の際には、1冊分の原稿につき大体何冊くらいの本を読むのですか?


守屋淳氏: 1冊書くのに100冊~200冊くらい読みます。もっと読む人とかもいるかもしれませんが、それが苦じゃないというか、楽しいです。本を書く時に参考図書を読みまくることが自分の勉強になっているんです。私には本を買えなかった時期もあったんです。図書館と、当時住んでいたところの近くに、1000坪のBOOKOFFがちょうどできたので、その両方を利用して最初の本を書いていました。その時に「お金が無くても本は書けるんだなと」思った覚えがありますが、それは時間があったからできたんだと思います。類書との差別化をはかるためには、やっぱり違う情報をとにかく入れたいということで、色々と入れ込んでいたのは確かです。それが私の本の売りの1つになっているのかもしれません。
あとは自由な立場なので、大学のエクステンションセンターなどにも実は行きまくっています。そういうところで、これから本にできそうなジャンルの下調べをしたりもします。 インプット7割アウトプット3 割という感じでしょうか。

知らない自分を知るという高揚感


――執筆というのは、守屋さんにとってどのような行為ですか?


守屋淳氏: 知らない自分を知る行為かもしれません。内田樹先生も書いているのですが、最初に構想があってその通り書いたものというのは、決して良い出来にならないんです。書いているうちに自分でも思いも寄らない展開や、結論になった時に、「実はこうだったんだ」と自分で気付くという瞬間が結構あるんです。それはある種、自分の可能性が広がったというか、自分の知らない自分に出会えたようなそういう意味では非常に高揚感があります。

――原稿を書かれているうちに全く違うものになるというのは、よくあることなのでしょうか?


守屋淳氏: 私の場合、ほとんどそうです。内田先生は「自分の中に小人がいるみたい。この小人さんに如何に働いてもらうかが重要」といった表現をされていましたが、私もそう感じていて、小人さんに出会えた時が楽しい。執筆は、人のためにやっていることでもあり、自分を知る手掛かりにもなります。

――電子書籍も普及してきて、出版のハードル自体は下がってきていると感じますが、編集者の役割はどんなところにあると思いますか?


守屋淳氏: 私は書店時代から、名物編集者といった方々と色々とお話をさせていただける機会もありました。著者を知り尽くして「この人はこういう新しい切り口だったら、絶対面白いものが書ける」などといった提案をして、著者から新しいものを引き出すことができる人というのが、昔は良い編集者だったんです。今でもその筈なのですが、今はあまりにも忙し過ぎて、そこまでやれないのかもしれません。根本的には刊行点数を減らすしかないと思います。今のペースで編集者に本を作らせていたら、まず良いものってできないんじゃないかなぁと私は感じています。私が書店で働いていた時は1日で100点から200点でしたが、今はもっと増えているかもしれません。それだと色々な良い本があっても、埋もれてしまいますよね。平積みにしておく期間も短くなってしまいますし、書店員も疲弊していますので、なかなか良い本を育てるとか、そういう方に発想が行きにくくなってしまいます。なんとなく良くない方向に行ってしまっている気がします。

著書一覧『 守屋淳

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