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世界中の本好きのために

榊原洋一

Profile

1951年、東京都生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学部講師、東京大学医学部附属病院小児科医長などを経て、現職。医学博士。育児に関するさまざまな情報の科学的裏づけがないことに気付いたこと、発展途上国の医療の実態を見た経験などがきっかけで、現在は発達障害の臨床的研究、発達障害児の保育、子どもの生育環境とその発達への影響、国際医療協力を主な研究対象としている。国際医療協力の分野では、JICAのネパール、ベトナム、ガーナでの母子保健改善プロジェクトに関わる。 著書に『図解 よくわかる発達障害の子どもたち』『図解 よくわかる大人のADHD』(ナツメ社)、『子どもの脳の発達 臨界期・敏感期』(講談社+α新書)、『脳科学と発達障害―ここまでわかったそのメカニズム』(シリーズCura)など。

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世界中の国を見てみたい


――どのようにして今の道に至ったのでしょうか?


榊原洋一氏: 医者になりたいと思ったのは中学生くらいの時です。高校に入って、その意志が固まっていきました。その頃、大企業の食肉偽装事件がありまして、「大企業は必ずしも良いことばかりしているわけではないんだな」と思ったんです。すごく単純ですが、人の命を救い、病気を治す医学は、どの時代であっても良いことだと思ったのが医者を目指した最初のきっかけです。それで、高校時代に医師になることを決めました。

――その後、難関である東京大学の医学部に進学された訳ですが、大学ではどのように過ごされていたのでしょうか?


榊原洋一氏: 大学ではワンダーフォーゲル部に入ったんですが、これが大きな転機になりました。年間平均60日ほど山に入る生活を続けていて、医者になってからも山登りを続けていたんですが、それがきっかけでパキスタン北部にあるカラコルムに行くようになったんです。パキスタン奥地のギルギットという村から登るのですが、必ず医者がついて行かなければならず、その付添の医師の旅費は全て都庁が出してくれるというのを知って、で喜んでついて行って医者兼通訳をしました。そこで、こういうギルギットのような村には、全く医者がおらず、その為付き添いの医者が必要だったということを知りました。日本の医療にも色々課題がありますが、世界中には全く医者がいないところで生活している人がいるんだと、カルチャーショックを受けました。それで、国際医療教育に関心を持ったんです。

――小児医療については、どのようなことがきっかけだったのでしょうか?


榊原洋一氏: 「治らない病気」が最も大変だと考えるようになったんです。子どもの中でも障害のある神経の病気に関心を持つようになり、脳性まひなどの小児神経学に進みました。カラコルムでの経験から、JICAの仕事で東南アジアやアフリカの話があると、率先して手を挙げて、ベトナム、ネパール、ガーナ、インドネシアに行き、現地の医療を見てきました。
お茶の水女子大学では、若い学生をそうした国々へ連れていきます。若く、感受性が強い時期に見てほしい。日本人は言葉の問題もあって、現状では、世界にあまり出て行っていない。これからの若い人には、もっと世界へ出て行ってほしいと思っています。

――小さい頃はどのようなお子さんだったのですか?


榊原洋一氏: 僕は 1951年生まれで、一応戦後の世代。いわゆる団塊の世代より後なんですが、まだ日本は貧しかった。吉祥寺で生まれて国分寺で育ちましたが、当時、ユニセフなどのサポートで、裏の広場で古着を貰えることもある時代で、日本がまだ援助を受けている時の記憶があるんです。父は商社マンで、僕が4、5才の時に2年間単身赴任でアメリカに行っていたんですが、父から送られてくる写真を見ながら、日本以外の国があることを知りました。世界中の国を見てみたいという気持ちがすごく強くなり、外国に対する憧れから、中学時代には色々な外国文学を読むようになりました。中学の時に最初に文庫本で読んだのは、赤毛のアンシリーズ。『アンの青春』、『アンの結婚』などをむさぼるように読んで、それがきっかけで海外文学が面白いなと思うようになりました。その後は高校時代にかけてヘルマン・ヘッセ、ロマン・ロランの『ジャン・クリストフ』、『人間の絆』、ドストエフスキーの『罪と罰』などの、色々な外国の文学作品を読みました。

――初めてあこがれの外国に行ったのは、いつ頃でしたか?


榊原洋一氏: 医学部を卒業して国家試験を受けた後の、24歳の休みでした。安いツアーでカリフォルニアとバンクーバー、カナダに行ったんです。バンクーバーの街中にはリスがいて、その写真ばかり撮っていました(笑)。24年間ずっと気持ちを温めてからの、初めての外国でしたから、その時の気持ちは今でも鮮明に覚えています。そのせいか、今でも外国関係の本ばかり読んでいて、外国の紀行文や伝記が好きです。『フランクリン自伝』やダーウィンの自伝や伝記などもよく読みました。外国の人がどのようにものごとを考えているのかということに、この歳になっても関心があるんです。

――その中でも、特別「これが好き」という本はありますか?


榊原洋一氏: ドイツの詩人・小説家であるハンス・カロッサの『美しき惑いの年』です。ヘルマン・ヘッセと同時代の人ですが、知っている人は少ないと思います。彼も医者で、僕と誕生日が同じだったからということにちょっとした縁を感じていて、今でもたまに開きます。この『美しき惑いの年』は本人の青春時代の恋愛などを書いている本です。東南アジアやアメリカにはよく行きましたが、ヨーロッパに行ったのは遅くて、僕が初めてドイツに行ったのは40になってからでした。だから、今は取り戻すかのように暇があればヨーロッパに行ったりしています。あとは、博物学者たちの伝記も好きで、よく読みます。例えば、日本で言うなら、破天荒なイメージを持たれている南方熊楠の伝記は、すごく面白い。彼に関する伝記はおそらく全部読んだんじゃないかな。

著書一覧『 榊原洋一

この著者のタグ: 『大学教授』 『心理学』 『教育』 『子ども』 『医者』 『発達障害』

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