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春井久志

Profile

1945年、兵庫県生まれ。関西学院大学経済学部卒業、関西学院大学大学院博士課程満期退学。名古屋学院大学経済学部専任講師、助教授、教授を経て、現職。博士(経済学)。専門は金融論、国際金融論、中央銀行論。 著書に『中央銀行の経済分析: セントラル・バンキングの歴史・理論・政策』(東洋経済新報社)、『金本位制度の経済学―イギリス金本位制度の理論と歴史・政策』(ミネルヴァ書房)、近著に『揺れ動くユーロ――通貨・財政安定化への道』『カンリフ委員会審議記録(1918-19)』(蒼天社出版)、『ケインズ全集』、〈第17巻〉(東洋経済新報社)、『富の創造』(すぐ書房)など。

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重要なのは公正さ


――出版社、編集者の役割とはどのようなところにあると思われますか?


春井久志氏: 出版社、編集者の社会的な役割は、非常に大きいと思います。一人の人間が一生かかって手に入れることができる情報というのは極めて限られており、偏っていますが、編集者や出版社は、もっと多くの情報を多くの人に配信できます。しかしながら、一定方向に導こうとする意図的な人もいるかもしれないので、そこをいかに排除するのかという「情報の公正さ」が重要になってきます。正しい情報を発信するという意味では出版社、編集者は「社会インフラ」なのだと思います。情報発信は、最終的には民主主義の進化、国民の1人ひとりの成熟化に繋がります。最近東京で講演したドイツの元首相は、「国民に苦い薬を飲ませるけれども、長期的にはドイツの国民のプラスになる政策を立てると」いう考えを表明しましたが、それは立派な見識だと思います。そういう優れた政治家を生むには、選挙民が「成熟」しないとだめです。消費税上げをなんとか認めさせた野田前首相は、2012年の総選挙で負けちゃいましたよね。だけど、消費税の増税は彼の功績だと私は思っています。ああいう政治家がどんどん出るようにするために、マスメディアを含めて、国民に正しい情報を公正な形で提供して、国民が成熟化する社会に導くことが重要です。

――電子書籍の可能性についてはどのようにお考えでしょうか?


春井久志氏: 30年以上前にマイクロフィルムを使っていた時に、問題が起こりました。マイクロフィルム・リーダーという大きな機械のようなものがあって、後ろからバックライトで文書を読むのですが、これがすごく読みにくくて目が疲れるんです。それで富士ゼロックス社に頼んでハードコピーしてもらって、出力しました。20年前にコピーした時は8万円もかかったのです。でも世界に1つだけのものなので、非常に重要です。今の時代であればもっと安価にかつ容易に読むことができたでしょう。そういう広い意味でも、私は電子書籍の可能性は大きいと思っています。ただ、今は出版社によって規格がばらばらなので、規格が統一されるともっと利便性が高まると思います。しかし、それも時間の問題だと思いますし、そこを早く乗り越えていけば一挙に普及すると思います。私もThe Economistをprint editionで読んでいますが、iPadでも読めるので、よく利用しています。定年退職したら読もうと思って漱石全集を全巻持っているのですが、大きな置き場所をとるので困っています。電子書籍がもっと早く普及していたら良かったのにと思いますね。

自分に与えられたタラントを生かす


――先生の使命とはどのようなところにあると感じられていますか?


春井久志氏: 2013年の3月に出た『中央銀行の経済分析』のあとがきでも「千里の行も足下から始まる」という老子の言葉を引用していますが、私がこの本を出すことによって、「何だ、ここが抜けているのじゃないか」とか、「ここはおかしいんじゃないか」と思ってくだされば、中央銀行の研究が前に進むかなと考えています。そういった研究進展のきっかけになればと思います。『聖書の創世記』にも書いてありますが、神は人間に「全ての生き物、動物植物に名前をつけなさい」と命令をされました。全ての物の所有者は神で、人間はそれを支配すること、使うことを命令されているだけなので、人間はこれらを管理して生かさないといけないのです。だからこれまでの私の研究成果を本にして出版するというのは、自分に与えられたもの、「タラントン(タレントの語源)」を生かすということなので、それが私の使命だと思っています。30年前にロンドンの大学の客員研究員としてシティ大学のビジネススクールへ行った時の所長がブライアン・グリフィス教授という方で、その後、彼は1980年代にマーガレット・サッチャー首相の政策顧問団の団長になりました。彼はクリスチャンとしても非常に有名な方で、彼の本を翻訳していた人からもう1冊彼の本を「一緒に訳しませんか」と私に声がかかりました。彼の本は経済学とキリスト教を融合した素晴らしい内容の類書のない本だったので、この翻訳は自分の使命だなと思いました。それが『富の創造:市場経済の民主化と自由化』(春井久志・八木功治訳、すぐ書房、1990年)です。

――今後の意気込みをお聞かせください。


春井久志氏: 中央銀行が優れた機関になった時に、一番メリットを受けるのはその中央銀行が置かれている国の国民です。だから、そのための研究が重要だろうということで、今も事務局としてやっています。今年はシンポジームのような形のもの(「中央銀行パネル」)が、6月に慶応義塾大学の三田キャンパスで開催される日本金融学会の全国大会で開かれます。そこでは、座長と3人くらいの報告者と、討論者でパネルディスカッションを考えています。

(聞き手:沖中幸太郎)

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