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世界中の本好きのために

月本洋

Profile

1955年、東京生まれ。東京大学工学部計数工学科卒業。同大学院修士課程修了。工学博士で、専攻は人工知能。主な著書に、『日本人の脳に主語はいらない』、『日本語は論理的である』(講談社選書メチエ)、『心の発生-認知発達の神経科学的理論』(ナカニシヤ出版)、『ロボットのこころ-想像力をもつロボットをめざして』(森北出版)、最新刊に『やさしい確率・情報・データマイニング(第2版)』(共著、森北出版)がある。

Book Information

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研究においては便利なツール


――電子媒体は、使われていますか?


月本洋氏: 全然使っていません。古い人間なのか、その必要性を感じません。ガラケーで十分だし、iPadもiPhoneも持っていません。

――学的研究においては電子媒体を使われたりしますか?


月本洋氏: 研究の際には便利なので、PDFで転がっているのを読んだりはします。ここから先は有料、などという仕組みがあるのがよく分からないと思いながら使っていますが、昔は文献複写を依頼しなくてはなりませんでしたから、そういった点では手間はかからないし、ずいぶんと楽になりました。でも検索の時に、上手くキーワードをひっかけないと出てこないので、探し方という点においては、難しさはありますね。

――電子書籍に足りないところ、要望などはありますか?


月本洋氏: ブラウジングがダメですよね。三次元のホログラフィーで電子ブラウジングができれば私も使うと思います。三次元テレビなども騒がれていましたが、あと2、30年でできるんじゃないかと思います。

――最近はどのような本を読まれていますか?


月本洋氏: 本を書くために本を読むようになってから、あまり本を読まなくなってしまいました。学生の論文や、作文のチェックもしなきゃいけない。だから、もう文字を読むのにうんざりしています(笑)。でも、本は好きです。最近は東洋文庫の『イザベラ・バードの日本紀行』を読みました。

テーマによって論文と本を書き分ける


――本を書かれるようになったのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか?


月本洋氏: 私が一番初めに書いた本は、オーム社の『実践データマイニング 金融・競馬予測の科学』でした。オーム社は、もともと電機大学の出版局の雑誌部門が独立したものなのです。私の知り合いの、当時の人工知能学会の大御所の先生に「本を書きたい」と話して、紹介してもらいました。もともと文化系に強いので、文章を書くのは好きなんです。理科系の人は、文章を書くのが好きではない人が多い気がします。

――本を書かれることの意義はどのようなところにありますか?


月本洋氏: 書くことは自分の考えを整理することにつながります。書いているうちに前後の矛盾などが分かってきます。自分自身も、言ってみれば一種の他人ですから、自分と対話して書くということは重要です。
言語学と哲学は、論文よりも本の方が価値があるんです。理科系は論文の方が価値があって、心理学も分野によって違いますが、論文の方が価値がある傾向があります。言語学はチョムスキーの生成文法と認知言語学が戦っていて、研究する枠組み自体が決まっていない。そういったように基本的に枠組みがまだ決まってないから、本の方が価値があるのです。論文を書ける人は、何かの論文だと10ページなどといったように枠組みが決まっているから狭くなって、ここの話だっていう細分化したものが論文になるのです。心理学も狭い実験心理学ならば論文を書けますが、全体を見た論文は書けません。論文の方が価値がある分野は論文を書いて、本の方が価値がある分野では本を書く。



「擬態画」としての漫画研究


――今後の展望をお聞かせください。


月本洋氏: 今は数学の問題を考えていまして、それが片づいたらもう少し株の予測に力を入れようと考えています。そのほかに、最近は漫画の研究をやっています。『日本人の脳に主語はいらない』という本を書きましたが、擬音語・擬態語、オノマトペに関しては、日本語が一番多いんです。そして、それが一番多く登場するのは漫画です。漫画の三大構成要素は、絵と台詞とオノマトペ。日本の漫画を、アメリカのアメコミやフランスのバンド・デシネと比べると、大人向けというか、大人でも読めることに特徴があります。

――日本の漫画の独自性は、世界的にも評価されていますね。


月本洋氏: 日本のサブカルチャーが世界を席巻していることで、グローバリズムに目を向けなければいけないと言うけれど、逆に日本人しか持っていない特性があるがゆえに、世界に出て行けたのだと私は思っています。我々が独自に持っている価値が、世界的に評価されているのですから、それを大事にしなければいけません。日本人がなぜあのような漫画を作りだしたのかというのを考えていまして、京都大学や認知言語学会で脳に絡めて話したんですが、脳科学者から見ると、なんとなくあさっての話だなと感じるかもしれません。漫画の擬態語を言語だとすると、日本の漫画の顔の描き方、例えば目が大きい、鼻がない、目を×にしたり、キティちゃんのように口を無くしたりして、ものすごいデフォルメをかけるのを「擬態画」と私は呼びたいんです。アメリカもフランスも、漫画は写実になります。谷岡ヤスジなども凄まじい描き方をしますが、あれは擬態行為が強すぎて、外人にウケるかどうかは分からないのではないか。そういったことを、これから本にしようと思っています。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 月本洋

この著者のタグ: 『大学教授』 『漫画』 『心理学』 『科学』 『研究』 『理系』 『研究者』 『人工知能』

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