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世界中の本好きのために

長沢伸也

Profile

1955年、新潟生まれ。1978年早稲田大学理工学部工業経営学科卒業、1980年同大学大学院理工学研究科機械工学専攻博士前期課程修了。1955年立命館大学経営学部教授などを経て、2003年より現職。また、早稲田大学ラグジュアリーブランディング研究所所長、ラグジュアリーブランディング系モジュール(LVMH寄付講座)責任者でもある。主な著書に『ブランド帝国の素顔――LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン』(日本経済新聞社)、『日産らしさ、ホンダらしさ――製品開発を担うプロダクト・マネジャーたち』(共著、同友館)、『それでも強い ルイ・ヴィトンの秘密』(講談社)、『老舗ブランド「虎屋」の伝統と革新―経験価値創造と技術経営―』(共著、晃洋出版)など。

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出たとこ勝負で仕事をこなす


――仕事でインタビューをすることも多いと思いますが、その際、大事にしていることはありますか?


長沢伸也氏: まずは、気楽にインタビューを受けてもらうため、先方に行くことです。あとは、一生懸命に話を聞くこと。

――話を聞くというのは、具体的にどういったことでしょうか?


長沢伸也氏: 相手が言いたいこと、言葉の端を捉えてインタビューします。例えば、社長があることについて言及した時、「今、こういうことをおっしゃいましたけど、関連してこの件についてはどうですか」という風に、僕の聞きたい話題を振ると、スムーズにいくんです。また、あらかじめ、インタビュー内容を広報とよく検討すると断られたり、或いは非常に通りいっぺんの答えになったりと、つまらなくなることが多いんです。ですから、割と出たとこ勝負なんです。

――そういった取材スタイルやインタビュースタイルは、どういう風にして確立していったのでしょうか?


長沢伸也氏: 場数ですね。研究自体もですが、次への課題みたいなものや、こうだっていうものを決めずにやってきました。いろいろやっているうちに方向性や発展性が見えてくることもありました。予定していなかった苦労話や本音などが出る社長は、面白いです。本で活字にしようとするとNGになる話が、実は一番面白い(笑)。あとは、必ず担当者、社長にお話を伺うことが大事です。広報を通してではなく、その人に会えれば半分終わったようなものです。

――辛いことやきついことがあった際の、原動力は何ですか?


長沢伸也氏: もう後がないということですね。引き返せない。工学博士をとった時で言うなら、研究がだめで博士号を取れなかったら、工学部では万年助手が確定するわけです。万年助手ってわけにもいかないから、そしたらまた会社に勤めるのか。だけど、大体大学の先生は使えないって相場が決まっているから、大学の助手をやった人が、再就職は難しいだろう。それとも、元いた会社に、頭を下げて行くのか。そうやって考えると、目の前にある研究をやるしかないと思うんです。それと、今はビジネススクールにいるけど、出身が工学ってこともあって僕はとにかく傍流なんです。人がやらないことをやる。そうすると、例えばラグジュアリーブランドっていうのは従来のマーケティングのおよそ逆をやるんです。だから、マーケティングの王道を行く人には訳が分からないかもしれないし、やっぱりラグジュアリーは特殊だとか業界が小さいとか言って理由を付けて手をつけない人もいます。100パーセントは分かんなくても半分くらい分かれば御の字じゃないかっていうのでやってみようとやるわけです。あと、ブランドの先生なんかは、「消費者の皆さん、ブランドっていうとルイ・ヴィトンやシャネルを想像するかもしれないが、それだけがブランドじゃない、コカ・コーラ、マクドナルド、トヨタ、ソニーもブランドだ」って言って、以後2度とラグジュアリーに戻ってこない。でも、街行く人に「あなたブランドものを持っていますか?好きですか?」と聞けば、かえってくるのは間違いなくルイ・ヴィトン、シャネルといった名前ですよね。だけど、学者の先生のブランド論はそれを除外する。それはおかしいと僕は思う。一般の人にそれだけ浸透しているってことは、そこから学ぶことがあると思うんです。だから、日本で研究している人がいないっていうならやってみよう、そう思ったんです。

本を書くことで広く知らしめ、世に問う


――本を出すことになったきかっけは、なんだったのでしょうか?


長沢伸也氏: それはやっぱり、こんな面白い会社がこんな面白い経営をやっているっていうのを伝えたいっていう想い、もうそれにつきます。広く知らしめたい、世に問いたい、そういう想いです。今まで81冊出していますけれど、それぞれ1冊ずつ、その時のベストを尽くして出しているし、大げさではなく命を削りながら作っています。だから、「代表作を選べ」なんてよく言われるんだけど、それはできません。



――本屋に行かれることはありますか?


長沢伸也氏: ありますよ。主に経営ビジネス書やマーケティングの本を買います。自分の本が入ってるかどうかはもちろん見ますし、まれに検索をすることもあります。あとは、やっぱり新刊、新しいものです。例えば、青山ブックセンターだとデザイン関係が充実しています。

――新刊や新書、新しい本を見るということは、世の中の潮流みたいなものを感じられるのでしょうか?


長沢伸也氏: 今で言えば、潮流もだし、「ものづくり」から「ことづくり」っていうのを色々な人が言うようになってきているからそれも確認できます。ことづくりが大事って書いてる本は全部チェックをして買うようにしています。僕にとって、本屋というのは、本を買うというストアの役割もありますが、情報源でもあります。
あと、今の出版業界は利益なき繁忙だから、やっぱり新刊で出た時に見ておかないといけません。それと、すぐ絶版になる。絶版になってからは買うのに苦労するんですよ。昔は神田の古本街で土曜日の午後を潰して、本を探したこともあるんだけど、あれば良し。でも、無駄足も多く時間がかかるので、それよりは、今、出ていて、参考になるかもしれなそうな本をとりあえず買っておく方が、結果早いかなと思います。

――本を選ぶ際の基準はありますか?


長沢伸也氏: その絶版になるかもしれない本を色々買って、とりあえずさーっと見るんです。この本は僕の言ってることと同じことを別の面で言ってるなとか、意外なことを言ってるなとか。早い話が使えるか使えないかを探ります。正直言って使えない方が多いんだけど、やっぱり使える本もありますから。そういうのをチェックして、論文を書いたり講演したりする時に「早稲田の長沢がこう言ってる」ではだめでも、「コロンビア大学のバーンド・シュミットがこう言ってます」って言うと、マーケティングではハロー効果が効いて良いです。

著書一覧『 長沢伸也

この著者のタグ: 『大学教授』 『ものづくり』 『原動力』 『ビジネス』 『研究』 『教育』

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