BOOKSCAN(ブックスキャン) 本・蔵書電子書籍化サービス - 大和印刷

世界中の本好きのために

大澤幸生

Profile

1968年、京都生まれ。東京大学工学部卒、工学系研究科博士(工学)取得。大阪大学基礎工学助手、筑波大学大学院ビジネス科学研究科助教授、東京大学大学院情報理工学研究科特任准教授などを経て現職。専門は人工知能、意思決定支援、知識工学。チャンス発見、創発システムデザインなどを研究。著書に、『未来の売れ筋発掘学』(編著、ダイヤモンド社)、『チャンス発見のデータ分析』(東京電機大学出版局)、『ビジネスチャンス発見の技術』(岩波アクティブ新書)、『イノベーションの発想技術』(日本経済新聞出版社)等がある。

Book Information

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

自分の「欲望」に素直に執筆する


――本はいつもどのような思いで書かれていますか?


大澤幸生氏: 本でも論文でも書く時は、とにかくどっと書きます。書きたくない時は考えないし、書かない。でも「ああ、そうだこれを書きたい」と思う時にはどっと書きます。もう自分がダメだなと思っている時は、魂が乗りません。工学家としては魂などと言うのは、らしくないかもしれませんが、やっぱりあるんです。全体として理路整然としなきゃいけないんだけれど、理路っていうのは、無機質な鎖がつながってるんじゃなくて、基盤的な学理とか原理とつながっていて、その先に欲望があるのが工学だと思っています。だからその欲望がないと、書いてる方も読んでる方も嫌々になってしまいます。

――欲望を持って、魂で書いているという感じでしょうか?


大澤幸生氏: はい。統計学の本みたいなものや、一見すごく難しい本や論文の場合も同じです。その人がどんな欲望を持っていたんだろうと考えながら読まないと、私は読めない。だから物語でも、あまりにも禁欲的な話とか、すごい哲学者が書きましたといった本は苦手ですね。それだったら私は漫画を読んで、書き手と読み手との欲望の一致度を感じる方が幸せです。専門的な本を書く時でも、論文を書く時でも、私は要するに自然な欲をアピールしたいのです。

――ご自身では、どんな欲望を持って書かれていますか?


大澤幸生氏: それは、読む人がどんなことを欲しているのか、それは自分も欲しいことだろうということです。単純に言うと、「私も欲しい、だから読んでいる人も欲しいだろう」という極めて単純な理屈です。ひたすらその欲しいものを、自分の方法でどうやって獲得できるかという筋道をただ単に書きます。

電子データなら、読まれる前の「露出度」も調整できる


――本を読む形態も少しずつ変化してくる中で、発信者としてはどのように感じられますか?


大澤幸生氏: 本には、皆に読んでほしいと思っている本と、恥ずかしくて誰にも読まれたくない本があります。そういうのは、先ほどお話したデータジャケットに似ています。いくらお金を積まれたって誰にも読ませたくない本もある。一方では、こちらがお金を払っても読んでほしいものや、その中間の本もある。だけど、書いたということは、「こんな本を書きましたよ」と言いたがっている自分も一方でいるんだと思います。そういう時、ちゃんと真正面からまじめにきちんと理解してくれて、エッセンシャルなところだけを頭に入れて、それを有効に利用してくれるといった真剣な態度の人であれば、ぜひ読んでほしい。だけど、例えば、本の中で私がしたアドリブのつもりで入れた文章が、「あれはなんかつまらん」と言われたり、ちゃかされたりすると、恥ずかしくて穴があったら入りたくなります。以前、2ちゃんねるで笑いものにされたことがありましたが、そういう場合、書いた人に対して怒りを感じるというよりも、恥ずかしさが勝ります。ご質問への答えになってませんね(笑)。

――紙の本、電子媒体、それぞれの良さはどういったことでしょうか?


大澤幸生氏: 紙の本には、いわゆるグループインタビューで商品のプロトタイプを見せて、消費者モニターさんが皆で交換しながら触って「こうだね」と言い合うときと似た良さがある。同じものを、同じ空間で同じ空気を吸いながら触ることができるわけです。一方で電子媒体は、既に1つのデータなので、情報の露出度を設定した上で、ネット世界に持ち込もうと思えば持ち込める。例えば本の表紙だけを見せているといったサイトもあるし、中身まで出しているところもあります。中身を出す条件として「お金を払ってくださいね」というところもある。そういった様に、露出度の調節をうまくやれば電子データの持ち味を活かせると思います。本屋さんにある本は、ビニールをかぶっていると、中が見えなくて表紙だけ見えます。かぶせてなければすべて中身まで見える。この2つだけしか種類がないので、微妙な調整ができない。電子媒体の可能性は、コミュニケーションをして、データの用途について確かめながら徐々に露出度を調節していくことができるという点ではないでしょうか。それは、先にお話したデータのマーケットっていうのを新しく作って本をそこに乗せてゆく可能性につながると私は思います。それが今の研究ともつながっているわけです。

著書一覧『 大澤幸生

この著者のタグ: 『大学教授』 『原動力』 『研究』 『人工知能』 『データ』

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
著者インタビュー一覧へ戻る 著者インタビューのリクエストはこちらから
Prev Next
ページトップに戻る