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世界中の本好きのために

内山力

Profile

1955年、東京都生まれ。東京工業大学理工学部情報科学科にてトポロジー(位相数学)専攻。卒業後、日本ビジネスコンサルタントへ入社、退社後はビジネスコンサルタントとして独立。㈱MCシステム研究所代表取締役、元産業能率大学大学院MBAコース非常勤講師、中小企業診断士。著書に『今すぐ仕事に使える「数学」』(PHPビジネス新書)、『課長になれない人の特徴』(PHP新書)、『マネジメント3.0』(同友館)、『マーケティングイノベーション』(産業能率大学出版部)など多数。近刊に『確率を知らずに計画を立てるな』(PHP新書)がある。

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従来の「仮説」を打ち破り、画期的な本を



内山力氏: 現実的に本を出すか出さないかという決定権は出版社にあります。本は出版社がまずは投資します。著者はお金を出さずに、初版の10%なりを印税としてもらう。増刷すればまたもらうという形で、基本的にはノーリスクです。出版社は当然、本屋まで届けても売れなければ損をする。我々はコンテンツがあっても商品化できないから、出版社がタイトル、編集、校正、装丁も含めてパッケージングし、読者に対して販売する全てのリスクは出版社が負うという関係です。今は、コンテンツも出版社が企画し、有名人にしゃべらせて、ライターがまとめてパッケージングしている本がたくさんあります。出版社そのものがメーカーになっていて、純粋にビジネスとして考えている著者は、実はほとんどいないのかもしれません。僕は売るための本を書くことも嫌いじゃないから、本が売れたら「売れてよかった」と思います。でも、売れなかったら「売れないこともあるのか」ということだけ終わるわけで、とうていビジネスとは呼べないようなものになっています。だから、最近はアマチュアのような人が書いている本が多くて、プロが少ないし、何のために書いているのか分からないし、別の目的がある場合もあります。普通のビジネスであれば当たり前なのですが、こちらが「印税は何%ですか?」などと聞くと、出版社がびっくりしているような状況です(笑)。出版社によっては、契約書を書いてから作るということもあります。「書かせてやる」という会社もあるので、そういうところには「書かない」と僕は言っています。

――本が売れない原因はどういったことだと思いますか?


内山力氏: 新聞に広告を出しても売れる時代ではないし、出版社や本屋を含めて、「売れたものが売れる」という仮説を持っているから、どうもそのジレンマに陥っているような気がします。僕らがコンサルティングしている普通の会社ならば、売れたら同じものを作るんじゃなくて、差別化と称して違うものを作るわけです。でも、本の場合だと、ある本が売れれば、次々にそれと同じようなものが出る。出版権は完全に出版社にあるので、書く側からは何もできないのです。その仮説を打ち破って、画期的なものを出していかないと、読者だっていい加減飽きてしまいますよね。テレビ局も同様で、朝の8時になるとどのチャンネルでも同じようなものをやっていて、つまらないなと思いつつ選択のしようがない。売るためにやれることは、書店に置いてもらうことくらいです。Amazonで、やらせのようなレビューがありますが、それを読むと品がないなと思ったりします。だから、かえって何を買っていいか分からなくなって、よけいに書店で売れている1位から買っていくという状態に陥るのだと思います。

コンセプトを明確化し、マーケティングの視点を


――「売れている」ということ以外に、本のマーケティングで打ち出せることはどういったことでしょうか?


内山力氏: ブランドのようなものではないでしょうか。新書でも日経や、講談社とか、岩波新書といったブランドがあるから、その内容を信じて買う人もいる。でも、今は新書でも各社同じようなものがぶつかっていて、コンセプトがハッキリしていない。ある考え方に基づいて作られた中に様々なコンテンツがあるということではなくて、ほとんどが何でもありです。例えば、昔、『少年マガジン』や『少年サンデー』では有名な漫画家が描いていて、ある意味、そこで描くと一流の漫画家だと言われる中で、『少年ジャンプ』は永井豪などの、新しい漫画家を発掘していったわけです。そういうコンセプトでやることにより、『少年ジャンプ』は毎週買う読者という、リピート需要を生み出しました。そういう意味では日経文庫は「ビジネスマンの知識を与える」といった一定のコンセプトを持っていました。その日経文庫が大学教授が主に書いているのに対し、PHPビジネス新書は、コンサルタント中心に書くという差別化がありました。しかし、それもいつの間にか変わってしまっていると感じています。

――コンセプトが崩壊してしまう流れには、抗えないものなのでしょうか?


内山力氏: あるコンセプトで数冊出すのではなくて、1冊毎に売れるか売れないかを判断して出すので、同傾向の本が売れたか、というのがポイントになるわけです。そういうことをやっているうちに、だんだんと似たような本ばかりになってしまう。1点あたりの投資を、原価計算して、例えば損益分岐点を2000部ぐらいに置くと、販促や認知行為も大したことはできないから、その程度しか売れない。村上春樹の本は、出版社が何百万部も売れると思っているから、最初から40万部を刷って、思いきってプロモーションも打てるわけです。ほとんどの本は、新書でも何千部か刷って、増刷すればヒット、もう1回増刷できれば中ヒット。さらにもう1回増刷すれば大ヒットというぐらいです。3000部ぐらいしか刷らないと、平積みにもならないし、販促もしないので、取り敢えず売ってみて、ダメなら次といった状況になります。それを繰り返していくと、練りに練って時間とお金をかけて、マーケットリサーチを入れて、プロモーションを打つというマーケティングの常道が難しくなってしまいます。簡単に本が出せるので、本の数も増えて、自分の首をしめることになります。それよりも、4冊出すところを1冊にして、4倍お金と時間をかけて、4倍売れる仮説を立てながらマーケティングする方法を考えた方が良いと思います。例えば、まず仮版を読ませて感想を聞くとか、リサーチを入れて、コンテンツを変えたりといった売れる工夫をします。テストマーケティングでは、商品を改良したりということは、どんな商品もやっていることです。これは電子版であればできると思います。

著書一覧『 内山力

この著者のタグ: 『コンサルタント』 『コンサルティング』 『数学』 『経営』 『マーケティング』 『ビジネス』 『教育』

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