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世界中の本好きのために

池内了

Profile

1944年兵庫県生まれ。72年京都大学大学院理学研究科物理学専攻修了、理学博士、国立天文台教授、名古屋大学教授などを経て、2006年より総合研究大学院大学教授、現在は同大学理事。著書に『科学の考え方・学び方』(岩波ジュニア新書、1997年講談社出版文化賞科学出版賞受賞)、『科学の限界』(ちくま新書)、『生きのびるための科学』(晶文社)、『科学と人間の不協和音』(角川新書)、『疑似科学入門』(岩波新書)、『物理学と神』(集英社新書)、『寺田寅彦と現代』(みすず書房)など多数。最新刊に『現代科学の歩き方』(河出書房新社)がある。

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本を書くことは、反省の連続


――池内さんは、科学について分かりやすく一般向けに本を書かれていますね。


池内了氏: 僕が本を書き出したのは、40代になってからです。それまでは、研究者として実績を残さねばならないというので、研究の方にほとんど集中していました。短い無署名の文章を岩波の『科学』の編集の方に頼まれて書いたり、朝日新聞で「科学を読む」という欄を7、8年続けて書いたりしました。40歳を過ぎてから本を本格的に書くようになりました。一番初めに出したのは『泡宇宙論』ですが、これは僕の同級生がやっている海鳴社という出版社で、その友達から「出さないか?」と言われて書いたのです。文章が書ける科学者は少ないということもあると思うのですが、それから岩波やほかの出版社から声が掛かるようになりました。初めは「宇宙」や「科学」という名が付く本ばかり書いていたのが、だんだん科学評論、科学と文学をつなぐものになり、対象もどんどん広がっていきました。

――本を書かれる時に心がけていることはありますか?


池内了氏: 多くの人に読んでもらうためには、分かりやすく、かつ誤解のない文章で、明確に分かる文章の方がいいですから、普通のおばちゃんや、うちの娘などを想像して、「こういう話し方だったら分かるかな」と考えながら書いています。まだ文章としては硬いとか、もっと理解をしやすいような書き方があるんじゃないかなどと、書いてから反省することもあります。いったん書いたらもう直せないから、次の本でそれを活かすようにしています。今が完成形ではないし、いつも反省することがあるので、まだ自分が満足する本はないような気がします。



自然の流れで本を書いてきた


――執筆はどのような過程で進められますか?


池内了氏: 僕は、文章に取り掛かるまでに時間がかかる人間で、じっくり発酵するまで頭の中で考えています。でも、あまり綿密な執筆計画を作るわけではなくて、初めにだいたいの章立てを考えてから、思いついた流れで書いていきます。書く前に考えたことが基層になっているのでしょう。

――本を作られる時は、編集者の方とどのようなやり取りをされますか?


池内了氏: 中身に関しては、ほとんどやり取りはしません。体裁や、色々な文章の中からどれを採用するかなど、そういう点に関しては編集者の感覚が大事だから、その判断は任せます。自分が書いたものは全部残したいという思いがあって、結局自分では捨てられないので、編集者の目を通してやってもらった方が、こちらとしては心が休まります。編集者から「こっちの方がいいですよ」と言われたら、それはしょうがないと思えます。『疑似科学入門』も、『パラドックスの悪魔』も、もっとたくさん書いていましたが、編集者の意見を取り入れて何章かを削りました。『お父さんが話してくれた宇宙の歴史』という絵本を書いた時も、岩波の編集者は「こういう書き方はまずい」「こういう表現の方がいいんじゃないか」ということや「分かりにくいから、ここは全面的に書き換えてほしい」とまではっきりと言ってくれて、いい編集者だったと思いました。言われた時は腑に落ちませんでしたが、自分で読んでみて「書き換えた方がいいな」と納得しました。だから、編集者は書き手の気持ちをあまり忖度し過ぎない方がいいのかもしれません。

――様々なテーマで本を出されていますが、次々に新しい構想が出てくるのはなぜなのでしょうか?


池内了氏: 自然な流れだと思います。同じことをしているとマンネリになってしまいますが、たまたま、そういう時に、新しいことについて声を掛けてくれる人がいるんです。だから、今あるのが絶対正しいという風に固執しないで、流れに任せているためでしょうか。「なるようになる」という言い方もあります(笑)。僕がテーマとして扱ってきた宇宙自身が非常に大きなスケールのものだし、ちまちましていてもしょうがないという感じもあります。

著書一覧『 池内了

この著者のタグ: 『出版業界』 『可能性』 『紙』 『研究』 『宇宙』 『書店』 『天文学』

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