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世界中の本好きのために

本橋信宏

Profile

1956年生まれ、埼玉県所沢市出身。 早稲田大学政治経済学部卒業。 写真雑誌『スクランブル』元編集長。 “バブル焼け跡派”として、幅広くニッポンの世相を見つめる異色の書き手。執筆分野はノンフィクション・小説・エッセイ・評論など。 雑誌メディアを中心に政治思想からサブカルチャーまで多方面にわたる文筆活動を展開している。著書に『裏本時代』『AV時代』(幻冬舎アウトロー文庫)、『ドクター苫米地が真犯人を追う!』(苫米地英人博士との共著)『やってみたら、こうだった』『戦後重大事件プロファイリング』(宝島社)、『新・AV時代』(文藝春秋)等多数。

Book Information

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運の良し悪しは、人との出会いで決まる


――編集長になられたのは卒業して結構すぐでしたよね?


本橋信宏氏: 『スクランブル』の編集長になりました。『裏本時代』にも書きましたが、極真空手のスキャンダルを取材していた時に、先に来ていたジャーナリストと仲良くなったんです。その人が、「これからは原稿なんて書いてらんない!って、ノーカットの裏本を制作して出したら売れたんです。ところが「刷り過ぎて余ってしまった」(笑)という話をしてくれたんです。そこで流通を探していたら、「会長」と呼ばれる“裏本の帝王”と出くわす。その会長が日本の裏本の流通の6割を制していたとんでもない男なわけですが、その人が後の村西とおるです。「ナイスですね」で有名な、AVの帝王です。彼を紹介されたら、余っていた裏本が一瞬にしてさばけてしまった。アンダーグランドの世界は昔も今も独自のルートが確立しています。
その会長がまっとうな出版社を作ることになり、当時200万部出ていた「フォーカス」のような雑誌をやらないかと話を持ちかけられ、誰もやらないから、私が編集長をすることになりました(笑)。才能というよりは、会長との、人間関係とでも言いましょうか。会長から信頼されて「お前がやれよ」と言われたのが26歳の時でした。



――人との繋がりをすごく感じます。


本橋信宏氏: 運がいい悪いは、人との出会いで決まると私は思っています。たくさんの本がいろいろな化学反応起こして、1つのプランが生まれるのと同じように、人間同士の出会いによって、自分の人間という成分も化学反応を起こす。例えば、ある男がある女と離婚しても、違う女と結婚したら上手く行くということは、男の成分は同じでも、相手という触媒が変わることによって男の化学反応が違ってくる。そういう意味でも出会いが面白いんじゃないでしょうか。

冷徹なフィルターを通さないと予想外のトラブルが発生する


――電子書籍の話もお聞きしたいと思います。


本橋信宏氏: 私は電子でも紙でも読んでもらえればどちらでもいいです。私も何冊か電子書籍化しているのがありますが、先ほども言ったように、情緒的な面が紙の本にはあるから、紙の本はこれから減っていっても、なくなりはしないと思います。映画とテレビのように、共存、住み分けをしていくでしょう。でも紙の本は減ることは確かでしょう。今の週刊誌を購入する世代は、大体50代以上で、エロ本などは30歳以下はほとんど買ったことはない。今は携帯の動画で満足するので、昭和では当たり前だった「エロ本の隠し場所」という話も成立しにくくなった。

――これからの編集者の役割についてはどう思われますか?


本橋信宏氏: 紙の本とネットの大きなもう1つの違いは、編集者の有無です。電子書籍やネットが広がると編集者がいらなくなると言われてきましたが、むしろ優秀な編集者がますます必要になってくると私は思っています。私たちが本を書いて出す時には、編集者の冷徹なフィルターを通さないと出版されません。編集者は基本的には優秀で、そのフィルターを通って初めて書店に並ぶわけです。だから、紙の本は過激なことが書いてあってもトラブルは起こりにくい。でもブログやTwitterは、そういう編集者のフィルターを通さないから、Twitter炎上が原因で東北の県議が自殺した事件なども起こる。第3者の厳格なフィルターは本当に重要な役割があり、これからますます編集者の存在が重要になるでしょう。

――電子書籍の可能性についてはどうお考えでしょうか?


本橋信宏氏: 電子書籍は絶版の本も読める点は、とてもいいと思います。電気書籍に足りないものは、やはり情緒性と所有感ではないでしょうか。ネットサーフィンが出来るという点はありますが、化学反応を起こす、地層を掘り起こす楽しみというのもあまりない。情緒性で言えば、電子書籍も音楽が奏でられるなど、伊集院静さんが『なぎさホテル』で音楽を収録するのを試みていますが、例えば武蔵野の雑木林を散策する本では野鳥の鳥のさえずりが聞こえるような方法など、電子書籍の特性を活かす方法もあると思います。

――本橋さんにとっての編集者の理想像とはどのようなものでしょうか?


本橋信宏氏: 触媒として化学反応起こしてくれそうな人です。書き手の気付いていないところ、良さを、上手く化学反応起こして引き出してくれる人。自分が温めていた企画よりも、第三者の編集者の企画の方が、意外と良い作品になったりするんです。例えば柴田錬三郎さんの『眠狂四郎』も本人はあまり書きたくなかったようですが、新潮社の斎藤十一さんという伝説の編集者が書かせたわけですから。

著書一覧『 本橋信宏

この著者のタグ: 『女性』 『取材』 『フリーランス』 『古本』 『匂い』 『アウトロー』

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