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世界中の本好きのために

近藤史恵

Profile

1969年生まれ、大阪府出身。 大阪芸術大学文芸学科卒業。 1993年『凍える島』(東京創元社)で第4回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。 ミステリのみならず、恋愛小説やスポーツ小説、ゲームのノベライズも手がける。また、大学時代、歌舞伎の研究をしており、歌舞伎を題材にした作品も多い。 代表作『サクリファイス』(新潮社)では第10回大藪春彦賞を受賞した。同作をはじめ『探偵今泉』シリーズ、『猿若町捕物帳』シリーズなど、様々なシリーズ作品を執筆する。 近著に『土蛍』(光文社)、『三つの名を持つ犬』(徳間書店)、『キアズマ』(新潮社)など。

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デバイスの乗り換えの時に、今まで買った電子書籍をどうするか?


――電子書籍の便利な部分、可能性としてお伺いしましたけど、逆にまだまだ過渡期だと思っています。こんな風にしたらもっと使えるのに、便利になるのにという点があればお聞かせください。


近藤史恵氏: Kindleで買ったものはKindleでしか読めないっていうようなことが少なくなればいいなと思います。Kindleが壊れた時にほかのガジェットに変えたら、再ダウンロード出来ないのは少し大変だなと感じます。koboは人に貸せると思いますが、本の貸し借りには、誰かに貸している間に自分は読めなくて、返してもらったら読めるという、ある種の特有の面白さがあると思います。だからガジェットを乗り換える時にどうするか、ということはすごく大事なことだと私は思います。

検索しにくい、ランキングだけに頼る電子市場は危うい。



近藤史恵氏: あとは検索の問題もあると思います。新刊への検索が、普通の本よりも少し難しいなと思うので、売れている本しか目につかず、ふらっと買うということができない気がします。電子書籍だと売れる本と売れない本というのが、今後どんどん2分化していく気がして、少し怖いかなと思います。売れない本でも出せるようにはなるけど、売れない本は売れない本のままで、1回売れた本ばかり売れてしまうという状況になってしまうのでしょうか。

――本にある偶然性というのがなくなると。


近藤史恵氏: レビューの重要性はおそらく今後、さらに高まってくるのではないでしょうか。今でも書評ブログなどをやっていらっしゃる方がいますが、そういう人の重要性が高まり、売り上げに直結するという形で実感していくようなことになるのではないかなと思っています。iPhoneのアプリにも、電子書籍のコーナーがありますが、それこそ上位で見ていくしかありません。たとえそれほどに売れていなくても、人に届く本はたくさんあると思うので、順位で見る、検索するという点に関しては問題があると思います。

――欲しい人に届ける役割というのが出版社の役割の1つでもあると思いますが、電子書籍の市場がどんどん大きくなって、出版社の方々も今までと違った方法論というのも必要になっていますが、どのようなことが出版社には今後、必要になってくると思いますか?


近藤史恵氏: 書き手と出版社の関係は、おそらくそれほど変わらないと思います。だから出版社さんがどう読者に向けてアピールしていくかということが大事だと思います。私は書評家さん、レビュアーさん、つまり手だれの読み手と言われる、読者が信用出来る読み手がすごく大事だと思います。ただ、不信感を持つ作家さんもいますし、私もこの本を紹介して欲しかったという気持ちもあったりしますので、作家自身がもう少し自分でプッシュしていくことも大切なのかもしれません。例えばTwitterやFacebookなど、作家が今は、自分で読者とつながれる時代でもあるので、もっと積極的にアピールしてみてもいいと思います。

――Twitter、Facebook、書き手と読み手の距離、もしくはかかわり方っていうのは大きく変わっていますね。


近藤史恵氏: 今は、読者の方が割とストレートに言いたいことを言ってきて、今は楽しいことの方が多いです。人によってはしんどいという方もいらっしゃいますし、読者自身も作家のプライベートは知りたくないということも絶対にあると思います。私も犬の写真をTwitterにのせたら、「そんなのばかり見たくない」と言われたこともあります。でもサイン会では、「犬の写真をもっと見たい」、と言ってくださる人の方が多かったりします。だから読者も作家も、自分で蛇口の水を調節するように、情報のボリュームを調節しなければいけないと思います。



母と娘の物語のように、スパンの長い新作を計画中。


――今後の展望についてお聞かせください。


近藤史恵氏: 書くことを続けていきたいです。小説の題材ですと、時間の流れが長い話を書こうということで、今、編集者の人と打ち合わせをしています。私は、これまでどの話も1ヶ月から3ヶ月のスパンで終わる話が多かったので、もう少し長いものを書いてみたいと思っています。例えば、お母さんと娘の物語をゆっくり書きたいです。私は器用なタイプではないのですが、「私の作品を読みたい」と言ってくださる人にちゃんと届くように、物語に対して誠実に、そして読者に対しても誠実でありたいです。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 近藤史恵

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