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世界中の本好きのために

岩田松雄

Profile

1958年生まれ。 大阪大学経済学部卒業、UCLAアンダーソンマネジメントスクールMBA取得。 コカ・コーラビバレッジサービス(株) 常務執行役員、 (株)アトラス代表取締役社長、(株)タカラ取締役常務執行役員 、(株)イオンフォレスト代表取締役社長、スターバックスコーヒージャパン(株)最高経営責任者等を歴任。 経営において「人がすべて」の信念の下、人を大切にする経営を掲げ、従業員のモチベーションアップを再生、再成長の原動力にしてきた。 近著に『「君にまかせたい」と言われる部下になる51の考え方』『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』(サンマーク出版)など。

Book Information

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著書に込めた若者へのメッセージ、
「諦めないで自分の可能性を信じてほしい」



1958年生まれ。大阪大学経済学部卒業、82年日産自動車入社。製造現場、セールスから財務まで幅広く経験し、社内留学先のUCLAビジネススクールで経営理論を学ぶ。帰国後、外資系コンサルティング会社、日本コカ・コーラ(株)常務を経て、(株)アトラスの代表取締役として3期連続赤字企業をターンアラウンド、(株)イオンフォレスト(THE BODY SHOP Japan)の代表取締役社長として売り上げを倍増、スターバックスコーヒージャパン(株)のCEOとして業績向上を実現、〈専門経営者〉として実績を上げてきた。2011年 リーダーシップコンサルティングインクを設立し、真のリーダーや経営者の育成に力を入れる。「諦めない限り、終わらない」と話す岩田松雄氏の、これまでの道のりや、忘れられない本との出会いなどを聞いた。

男なら大志を抱くべき、日産新人時代の目標は「社長になること」


――専門経営者として、またリーダーや経営者を育成する人材育成事業でご活躍ですが、近況を教えていただけますか?


岩田松雄氏: スターバックスコーヒージャパンのCEOを辞めたのが2年ほど前で、その後、昨年6月に政府系の金融機関産業革新機構に。本としては、昨年3冊、今年1冊で4冊出しましたが、『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』が、おかげさまで30万部を越えました。そのせいか講演依頼が増えました。今は、講演活動や執筆活動、早稲田の非常勤講師やベンチャー企業5社の社長に対してエグゼクティブ・コーチングもしています。

――岩田さんは、小さいころ、本はよく読まれましたか?


岩田松雄氏: どちらかと言えばやんちゃで勉強も好きではありませんでしたが、本を読むのは好きで、小学校4年のころは電車通学の時に天体関係の本をよく読んでいました。小学生のころから星が好きで、相対性理論やブラックホールに興味がありました。時間が進むのが遅くなるとか、長さが縮むなど、当時は意味が分からなかったですけど、それでも相対性理論を理解してやろうという気持ちで読んでいたんです。1億光年、光のスピードで1億年かかるってどういうことだろう。今見えている星の光は1億年前に発した光だから、その星はもうないのかもしれない。そう思うと、時間的にも空間的にもすごく雄大ですよね。そういうスケールの大きさに憧れていて、自分はなんてちっぽけなんだろうという感覚を、持っていました。

――忘れられない本との出会いはありますか?


岩田松雄氏: 高校3年生の時に読んだ畑正憲さんの『ムツゴロウの青春記』です。ムツゴロウさんの高校、東大時代、奥さんの純子さんとの出会いなどがつづってある。頭はいいけどハチャメチャな彼の青春時代にすごく憧れました。パチンコで生活を支えていたり、麻雀はプロ級、奥さんの純子さんとは大学時代から同棲していたなど、高校生にはとてもインパクトがありました。青春記を読んだ後、結婚記を読んで、放浪記も読みました。私は、もともと生物が好きでしたが、ムツゴロウさんの影響で、最初の大学受験は、文系で生物に近いという理由で大阪大学の人間科学部を受けたんです。
当時、人間科学部は法学部より難しいと言われていて、落ちました。2年目はもう少し易しい学部をと経済学部を選んだんです。実は当時、実家のビジネスがうまくいっておらず、受験料が払えず大学をいくつも受けることはできなかったので、1年目は大阪大学の人間科学部だけを受けて、2年目は大阪大学の経済学部だけを受けた。1期、2期校がまだあったころで、2期校は確か滋賀大学と大阪教育大学の生物、理科に願書を出しましたが、大阪大学が受かったので受験しませんでした。もし、滋賀大学か大阪教育大学に行っていたら、今ごろ、高校の生物の先生をやりながら、野球が好きなのでソフトボールの顧問でもしたら、それはそれで楽しかったかなと思います。

――大学ではどんな勉強をされましたか?


岩田松雄氏: 経済学部の最初の授業は経済原論です。経済学は「人間は合理的な活動、行動をする」ということが大前提にあり、そこから理論を構築していくんです。つまり、高いものと安いものがあれば安いものを、同じ値段ならいいものを選ぶという行動原理。でも、実際人間はそういう行動をするとは限らないので、授業の一時間目にそれを聞いた瞬間「経済は自分に合わない」と思ったんです。経済学部では、その理論を使って数字を出す、計算をしていくのですが、私は計算より人に興味があり、経営は人に近いからという理由で、ゼミは経営学部の方を取りました。でも、今から思えば、経営学の授業は取りましたが、よく分かっていなかったと思います。会社の経験もない学生が経営について色々勉強しても、分からないですよ。3年生ぐらいの時に、自分なりに勉強しなきゃと、とにかく月10冊本を読もうと決めたんです。



――当時読んだ本の中で印象的なものはありましたか?


岩田松雄氏: 松下電器(現・パナソニック)創業者の松下幸之助が立ち上げた松下政経塾の講話をつづった『松下政経塾講話録』ですね。一流どころの経営者が塾生のためにした講演をまとめた本で、4冊ほど出ていた。将来政治家を目指すような塾生に対しての講演ですから、天下国家の話で、そういう講話録を読んだことで、志が大きくなったと言うか、背筋が伸びた。そういう影響もあって、日産に入社した時「社長目指して頑張ります」などと言ったんだと思います。社長になって金持ちになりたかったわけでも、有名になりたかったわけでもなく、男なら何か大きな目標を持つべきだと思ったんです。日産のような大きな会社に入って「日産自動車の社長目指して頑張ります」などと言う新入社員、いないですよね。でも、人間として、サラリーマンとして、目指すのは部長ではなく、社長目指して頑張らなければという気持ちだったと思います。

目の前のことを一所懸命にやる


――岩田さんが仕事をする上で大切にされていることは何ですか?


岩田松雄氏: 目の前のことを一所懸命やっている限りにおいて、人生無駄なことはないという思いが強くあります。日産自動車の社長になる目標からはかなり離れていますが、私は入社3年目で現場の最前線である車のセールスをしました。私が行った販売店には、日産本社から30人ほどが出向していたんです。かなりいい数字を出さなければなりませんが、その中で1番になると社長賞が貰えそうだと。それで飛び込みセールスですから、居留守を使われることもありましたし、結構辛かったです。でも、一所懸命頑張って記録も作り、社長賞も取ったのが自分にとってはすごく自信になった。
本当は会社の戦略を考えたり、何百億円というお金を動かしたりしたかったです。でも、スティーブ・ジョブズじゃないですが、点と点は繋がっていて、車のセールスを頑張ったから自信もついて、UCLAビジネススクール(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)への社内留学にも推薦してもらえた。留学できたから転職してコンサルタントになり、アトラスの会社の社長になった。アトラスがあったからイオンフォレスト(THE BODY SHOP Japan)があって、スターバックスがある。点と点が線に繋がって、振り返ってみれば全て必然性がある。だからあの時、腐らずに頑張って良かったなと思うわけです。「何でこんなことをやらなきゃいけない」と思っても、それは必ず後に繋がる。もちろん大きな志は持つことは大事ですが、一方で目の前の仕事を一所懸命やることが重要です。

――留学や転職、節目にはやはり不安もありますか?


岩田松雄氏: 特に最初の転職は不安でした。でも、このまま日産にいても経営の勉強はできないと言うか、先が長い。当時30代半ばでしたが、日産の経営者になるには20年は待たないといけないし、20年待ったとして、自分が取締役になる保証はどこにもない。もっと経営に近い勉強をしたいという気持ちが強かったです。

――その後、赤字企業の建て直し、売り上げ向上など専門経営者として活躍されてきましたが、常に大切にしてきたものは何ですか?


岩田松雄氏: まず、経営は人が全て。いい人を採用し、その人たちに気持ちよく働いてもらう、優秀な人に会社に留まってもらう。それが1つ目。2つ目は、火花が散る瞬間が大事。その事業において一番付加価値を生み出している瞬間や世の中に貢献している瞬間、あるいはミッションを実現している瞬間、その瞬間が一番大事。どこが火花散る瞬間なのかを見極め、そこに全社員の意識を向ける。社員はどちらかと言えば社長の顔を見て仕事をする。でも「現場を見て下さい」と、どの会社でも言い続けました。実際に火花が散っている瞬間(付加価値生み出し、ミッションを実現する瞬間)のところを大事にするということです。

真のリーダーを育て、日本を元気にしたい


――本を執筆する時の読者に向けた思いは?


岩田松雄氏: 例えば『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』では、「諦めたらおしまい」という言葉を書いています。私の本の強みは、自分が経験したことを書いていて、実例が多いとこだと思うんです。挫折もたくさんしてきました。落ち込んでもう立ち上がれないかなと思っても、ゆっくり這いながら少しずつ立ち上がった。諦めない限り終わりはないと思うんです。今、就職氷河期で30社50社受けて全部落ちたなどと聞くと、自分自身を全否定されたような感じで自信喪失すると思うのです。私は、若者が夢や希望を失ったら終わりだと、それを一番憂いています。それは日本にとって大きなマイナスだと思います。だから特に若い人たちには「自分の可能性を信じて下さい」と言いたい。
世の中には運・不運はありますが、確率的に言えば平等だと思うんです。だから、自分は運がいいと思った方が得です。同じ事象が起こっても「ツイている」と思うのか「ツイていない」と思うのかで、事実の捉え方が違う。松下幸之助さんは、面接の時に「あなた運がいいですか」と聞いたと言います。

――どんな意味があるのでしょう?


岩田松雄氏: 私なりの解釈ですが、例えば何か成果を上げた時、それは自分の努力で自分の能力が高いからだと思う人は「運がいい」とは言わず「自分がやった」と言う。「運がいい」と思っている人は、「自分も頑張ったけど、たまたま環境がよかった、仲間が良かった、恵まれていた」という感謝の気持ちがある。そこに謙虚さを感じます。『ビジョナリーカンパニー』という本の第5水準のリーダーシップの章には、まさしくそういうことが書いてある。うまくいったら窓の外を見て、うまくいかなかったら鏡を見る。うまくいったら周りのおかげ、うまくいかなかったら自分の責任を感じるわけです。東洋的なリーダー像は大体、謙虚な人です。第5水準の人は「オレがオレが」と言わないから、なかなか世の中に出てこないのですが、目立たないところで会社をしっかり作って人を育てて、何か聞かれても「それはみんなのおかげだ」と言えるような人。それが一番立派な経営者だと思います。

――ご自身は、自分をまだまだと思われますか?


岩田松雄氏: もちろんです。黒澤明監督が、アカデミー賞か何かの授賞式のインタビューで「今までの作品で一番の傑作は?」と聞かれた時に「ネクスト」と答えたんです。すごく素敵だと思いました。「世界的のクロサワ」とまで言われるに至っても、まだまだという気持ちがあるから「ネクスト」と言うわけですよね。
私も今は、「元スターバックスの社長」という形容詞がついてきますが、できれば次の形容詞、例えば「リーダーシップ教育の第一人者」などを付けたいです。もちろん今でもスターバックスは大好きで、すごい会社だと思いますし、そこのCEOをできたことは本当にラッキーだったと思いますが、もうそろそろ次の自分の形容詞を作りたい。今の私のミッションはリーダーシップ教育なので、「リーダーシップ教育の岩田」と言われたいです。で、調べてみたら元スターバックスのCEOだったという風になりたい。

――リーダーシップ教育への思いは?


岩田松雄氏: 私は日本も日本人も大好きですから、日本がもっと元気になったらいいなと思っています。このまま地盤沈下していくのは悔しい。GDPで中国に抜かれても構わないですが、世界一尊敬される国になることはできる。そういう国を目指すべきだと思うのです。日本では、何か日本人は悪いやつだという教育をされてきていますが、一方で今、日本人が思っている以上に日本が見直されている。私はフィリピンのスターバックスで1週間研修したことがありましたが、お店の20代の女の子たちに、「どこに行ってみたい?」と聞いたら「日本の原宿」と言うんです。それを聞いた時、「私らが思っている以上に日本って評価されているんだな」と思いました。日本は、もちろん反省すべきところも多くあるとは思いますが、卑下しすぎなところもあるので、日本をもっと良くしたいと思った時に、リーダーを育てるべきだと思いました。

0を1にするクリエイターを、リスペクトすることが大切


――電子書籍に対してのご意見をいただけますか?


岩田松雄氏: 私はまだ電子書籍は一度も読んだことがないですが、流通コストが0、つまりより安価に、より多くの人に届けられる可能性があるという点ではとてもいいと思っています。
一方で、私はゲーム会社にいたことがありますが、例えば音楽CDは今ほとんど売れなくて、CDは曲の広告のためで、ライブで儲けて回収する。こういう流れの中で一番大事なことは、コンテンツを作る人、クリエイターにきちんとそれが戻っていくような仕組みを作っておくことです。そうしないと、若い才能のある人のジャパニーズドリームはなくなってしまって、本を書くより官僚になりましょう、別のことをやりましょうという話になってしまう。頑張って自分の作品を残すと、それなりに飯が食べていける仕組みがあれば、みんな参入してきます。一番大事なコンテンツを作る人がいなくなれば、読者もいい本が読めない、新しい自分の発見もないわけです。だから、ものを生み出す、0を1にしているクリエイターや作家に、きちんとお金がリターンする仕組みを考えて欲しい。読者も含め、クリエイターに対して経済的にも、精神的にも、リスペクトすることが大切です。

――現状では、なかなか作者に還元されないのが実状でしょうか?


岩田松雄氏: 「岩田さんの本を回し読みしました」というメールをよくもらいますが、本当は10人いたら、10冊買って欲しいなと思います。だから、「みんなで回し読みして良かったです」と嬉しそうに報告されると、非常に複雑な気持ちです。(笑)
レンタルについては、ツタヤ方式は幾らか入りますが、ブックオフはないです。グルグル回っているだけで、著者に全く返ってこない。二重三重と使い回しされるなら、最初のところで取るしかないので、経済的に考えれば新しい本を高くしますよ。
松下幸之助さんの「水道の哲学」というのがあるんですが、例えば人のものをとったら泥棒で、罪になる。でも、道を歩いていて喉が渇いて、たまたまある家の庭に水道栓があったので水を飲んだとする。多分それは、罪にならないですし、訴え出る人は多分いない。そこで松下さんは、水道の水と同じように電化製品を世の中に溢れさせようと考えたわけです。タダではないですが廉価なものにして、あたかも水道のようにみんなが誰でも利用できる仕組みを作ろうと、これが彼の水道哲学。それを社会的使命にしたわけです。素晴らしい考え方ですよね。世の中進歩して、いろんなことが手軽にできるようになりました。例えば私が小さいころは牛肉なんて年に1、2回食べるだけだったのが自由化になり、高級だったお寿司も、今日はお金がないから回転寿司食べに行こうという話。それはすごく世の中に貢献している。ですから、きちんと著者に戻ってくれさえすれば、たとえ1冊200円だとしても、それなりに著者に戻るという仕組みを作るべきだと思いますよ。

――電子書籍という流れはこれからも広がっていくとは思いますが、その中で出版社や編集者の役割はどんなところにあると思いますか?


岩田松雄氏: 実際に編集者の方や出版社と付き合いますと、例えれば名馬を見つけてそれを磨く、鍛えて一緒に作っていくような名伯楽もいれば、そうでもない人もいて、すごく力の差を感じます。本とは、著者が勝手に全部書くのではなく、編集者がタイトル、目次など大枠を作ってくれるわけで、そこに良し悪しがある。いい作家を見つける、一緒に作品を作って世に知らしめていく努力とは、結局人を育てるようなものですよ。あとはいい本を作ろうという熱意と、より多く売ること、両方が必要ですね。もちろん著者としては常に編集者に感謝をしています。

ミッションを進化させる


――最後に今後の展望を伺えますか?


岩田松雄氏: 自分のミッションとしては、リーダーシップ教育です。でも、またチャンスがあれば、どこかの社長をやってもいいなと思っています。ミッションとは多分宗教用語ですから、何か生まれ持って背負った十字架のような印象がある。でも、私はミッションは進化させたらいいと思っているんです。私は、日産の社長から専門の経営者、専門の経営者そしてリーダーシップ教育とミッションを進化させてきた。ここから先は、ご縁みたいなものがあるわけで、例えば私がどこかで社長をやりたいと言っても、話がない限りはできない。でも、もし話がきたら、きちんと聞き、その会社のミッションに自分が共鳴できれば引き受けると思います。ただ、10年後を見据えれば、緩やかに教育、人を育てる方向に移行してこうと考えています。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 岩田松雄

この著者のタグ: 『考え方』 『経営』 『教育』 『リーダー』 『転職』 『育成』 『一所懸命』

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