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岩田松雄

Profile

1958年生まれ。 大阪大学経済学部卒業、UCLAアンダーソンマネジメントスクールMBA取得。 コカ・コーラビバレッジサービス(株) 常務執行役員、 (株)アトラス代表取締役社長、(株)タカラ取締役常務執行役員 、(株)イオンフォレスト代表取締役社長、スターバックスコーヒージャパン(株)最高経営責任者等を歴任。 経営において「人がすべて」の信念の下、人を大切にする経営を掲げ、従業員のモチベーションアップを再生、再成長の原動力にしてきた。 近著に『「君にまかせたい」と言われる部下になる51の考え方』『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』(サンマーク出版)など。

Book Information

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目の前のことを一所懸命にやる


――岩田さんが仕事をする上で大切にされていることは何ですか?


岩田松雄氏: 目の前のことを一所懸命やっている限りにおいて、人生無駄なことはないという思いが強くあります。日産自動車の社長になる目標からはかなり離れていますが、私は入社3年目で現場の最前線である車のセールスをしました。私が行った販売店には、日産本社から30人ほどが出向していたんです。かなりいい数字を出さなければなりませんが、その中で1番になると社長賞が貰えそうだと。それで飛び込みセールスですから、居留守を使われることもありましたし、結構辛かったです。でも、一所懸命頑張って記録も作り、社長賞も取ったのが自分にとってはすごく自信になった。
本当は会社の戦略を考えたり、何百億円というお金を動かしたりしたかったです。でも、スティーブ・ジョブズじゃないですが、点と点は繋がっていて、車のセールスを頑張ったから自信もついて、UCLAビジネススクール(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)への社内留学にも推薦してもらえた。留学できたから転職してコンサルタントになり、アトラスの会社の社長になった。アトラスがあったからイオンフォレスト(THE BODY SHOP Japan)があって、スターバックスがある。点と点が線に繋がって、振り返ってみれば全て必然性がある。だからあの時、腐らずに頑張って良かったなと思うわけです。「何でこんなことをやらなきゃいけない」と思っても、それは必ず後に繋がる。もちろん大きな志は持つことは大事ですが、一方で目の前の仕事を一所懸命やることが重要です。

――留学や転職、節目にはやはり不安もありますか?


岩田松雄氏: 特に最初の転職は不安でした。でも、このまま日産にいても経営の勉強はできないと言うか、先が長い。当時30代半ばでしたが、日産の経営者になるには20年は待たないといけないし、20年待ったとして、自分が取締役になる保証はどこにもない。もっと経営に近い勉強をしたいという気持ちが強かったです。

――その後、赤字企業の建て直し、売り上げ向上など専門経営者として活躍されてきましたが、常に大切にしてきたものは何ですか?


岩田松雄氏: まず、経営は人が全て。いい人を採用し、その人たちに気持ちよく働いてもらう、優秀な人に会社に留まってもらう。それが1つ目。2つ目は、火花が散る瞬間が大事。その事業において一番付加価値を生み出している瞬間や世の中に貢献している瞬間、あるいはミッションを実現している瞬間、その瞬間が一番大事。どこが火花散る瞬間なのかを見極め、そこに全社員の意識を向ける。社員はどちらかと言えば社長の顔を見て仕事をする。でも「現場を見て下さい」と、どの会社でも言い続けました。実際に火花が散っている瞬間(付加価値生み出し、ミッションを実現する瞬間)のところを大事にするということです。

真のリーダーを育て、日本を元気にしたい


――本を執筆する時の読者に向けた思いは?


岩田松雄氏: 例えば『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』では、「諦めたらおしまい」という言葉を書いています。私の本の強みは、自分が経験したことを書いていて、実例が多いとこだと思うんです。挫折もたくさんしてきました。落ち込んでもう立ち上がれないかなと思っても、ゆっくり這いながら少しずつ立ち上がった。諦めない限り終わりはないと思うんです。今、就職氷河期で30社50社受けて全部落ちたなどと聞くと、自分自身を全否定されたような感じで自信喪失すると思うのです。私は、若者が夢や希望を失ったら終わりだと、それを一番憂いています。それは日本にとって大きなマイナスだと思います。だから特に若い人たちには「自分の可能性を信じて下さい」と言いたい。
世の中には運・不運はありますが、確率的に言えば平等だと思うんです。だから、自分は運がいいと思った方が得です。同じ事象が起こっても「ツイている」と思うのか「ツイていない」と思うのかで、事実の捉え方が違う。松下幸之助さんは、面接の時に「あなた運がいいですか」と聞いたと言います。

――どんな意味があるのでしょう?


岩田松雄氏: 私なりの解釈ですが、例えば何か成果を上げた時、それは自分の努力で自分の能力が高いからだと思う人は「運がいい」とは言わず「自分がやった」と言う。「運がいい」と思っている人は、「自分も頑張ったけど、たまたま環境がよかった、仲間が良かった、恵まれていた」という感謝の気持ちがある。そこに謙虚さを感じます。『ビジョナリーカンパニー』という本の第5水準のリーダーシップの章には、まさしくそういうことが書いてある。うまくいったら窓の外を見て、うまくいかなかったら鏡を見る。うまくいったら周りのおかげ、うまくいかなかったら自分の責任を感じるわけです。東洋的なリーダー像は大体、謙虚な人です。第5水準の人は「オレがオレが」と言わないから、なかなか世の中に出てこないのですが、目立たないところで会社をしっかり作って人を育てて、何か聞かれても「それはみんなのおかげだ」と言えるような人。それが一番立派な経営者だと思います。

――ご自身は、自分をまだまだと思われますか?


岩田松雄氏: もちろんです。黒澤明監督が、アカデミー賞か何かの授賞式のインタビューで「今までの作品で一番の傑作は?」と聞かれた時に「ネクスト」と答えたんです。すごく素敵だと思いました。「世界的のクロサワ」とまで言われるに至っても、まだまだという気持ちがあるから「ネクスト」と言うわけですよね。
私も今は、「元スターバックスの社長」という形容詞がついてきますが、できれば次の形容詞、例えば「リーダーシップ教育の第一人者」などを付けたいです。もちろん今でもスターバックスは大好きで、すごい会社だと思いますし、そこのCEOをできたことは本当にラッキーだったと思いますが、もうそろそろ次の自分の形容詞を作りたい。今の私のミッションはリーダーシップ教育なので、「リーダーシップ教育の岩田」と言われたいです。で、調べてみたら元スターバックスのCEOだったという風になりたい。

――リーダーシップ教育への思いは?


岩田松雄氏: 私は日本も日本人も大好きですから、日本がもっと元気になったらいいなと思っています。このまま地盤沈下していくのは悔しい。GDPで中国に抜かれても構わないですが、世界一尊敬される国になることはできる。そういう国を目指すべきだと思うのです。日本では、何か日本人は悪いやつだという教育をされてきていますが、一方で今、日本人が思っている以上に日本が見直されている。私はフィリピンのスターバックスで1週間研修したことがありましたが、お店の20代の女の子たちに、「どこに行ってみたい?」と聞いたら「日本の原宿」と言うんです。それを聞いた時、「私らが思っている以上に日本って評価されているんだな」と思いました。日本は、もちろん反省すべきところも多くあるとは思いますが、卑下しすぎなところもあるので、日本をもっと良くしたいと思った時に、リーダーを育てるべきだと思いました。

著書一覧『 岩田松雄

この著者のタグ: 『考え方』 『経営』 『教育』 『リーダー』 『転職』 『育成』 『一所懸命』

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