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世界中の本好きのために

西田文郎

Profile

1949年生まれ。 日本の経営者、ビジネスマンの能力開発指導にたずさわり大脳生理学と心理学を利用して脳の機能にアプローチする画期的なノウハウ「スーパーブレイントレーニングシステム」を構築。企業の一人あたりの生産性が飛躍的に向上するため「能力開発の魔術師」と言われている。 その活躍はビジネス界にとどまらず、北京オリンピック女子ソフトボール始め、多くの国内トップスポーツ選手を指導する。 著書に『ツキを超える成功力』『人生の目的が見つかる魔法の杖』(ともに現代書林)など。
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根拠のない自信を「確信」に変えよ



西田文郎さんは、30年以上の間、脳の機能に着目したメンタルトレーニングのプログラムを提供。経営者やスポーツ選手への指導で成果を上げ、絶大な信頼を得ています。現在は、東北大震災の被災地支援など、これまで培ってきたメソッドを一般的に広く役立たせるための方策を模索しています。西田さんに、多くの教え子を輩出した「西田塾」の指導理論、そして新たな活動への意気込みなどをお聞きしました。

社会的な成功と、人間的な成功


――早速ですが、西田さんの現在の活動について伺えますか?


西田文郎氏: 長年、西田塾という経営者の勉強会をやっています。経営者に特化していますので、外に出ていく必要もなく、還暦までマスコミの取材も一切お断りしていて、たくさん本を書かせていただいても、読者の方々にお会いする機会がなかなかありませんでした。ですから本を読んだことはあるけど見たことはない「ツチノコ」と言われていたのですが(笑)、還暦を過ぎてからは外に出ていくようにしました。今、1年間3万人以上の人が自殺していたり、震災もありましたので、東北復興を含めて、様々な活動をしています。

――西田塾ではどのようなことをお教えになっているのでしょうか?


西田文郎氏: 経営者として、あるレベルになるためには、必要条件があります。起業した時は、戦略、戦術を知っている人たちが優位に立ちます。将棋の名人になろうと思ったら定石を知らなければならないように、経営者も成功するためには、まず経営分析と財務分析を勉強しないと安定しません。年商10億くらいには偶然でなることがありますが、それ以上には絶対になりません。そして、ある程度の年商を得て、社会的に成功したからと言って、人間として真の成功かと言うと、そうではない。人間的に成功するためには、正しさを追求することであり、これは自分の愚かさとの戦いです。本当の成功とは、この2つの成功をつかむことだということを、西田塾で教えていて、東証一部上場企業の経営者、中小企業の経営者もたくさん出てくださっています。

――東北復興に関する活動についても伺えますか?


西田文郎氏: 3.11がありましたので、お金や、物資を送らせていただいたりしています。農家の方は仕事をしようと思えばできるのですが、漁師の人は、船がないと全く仕事にならないので、すでに24隻位を送らせていただいています。でも、被災者の方々の状況は変化していないと感じています。国はやっていると言いますが、現実的には被災なさっている方は、まだまだ大変です。新たな活動として去年の5月から、西田塾卒業生の8人に役員をやってもらって、売り上げの1%を寄付するということを宣言している(株)Carityという会社をたちあげました。(株)サンリの方は今の社長が引き継いでやっているので、今はこちらの仕事が半分以上です。アメリカには売り上げの1%の寄付をする文化がありますが、日本の企業では、最初から売り上げの1%を寄付すると宣言している会社はない。今までたくさんの日本の経営者の方々への指導をしてまいりましたので、僕が実践することによって経営者のロールモデルになりたいと思っています。

やんちゃな少年時代の「錯覚」


――西田さんは子どものころはどういったお子さんでしたか?


西田文郎氏: 僕は4人兄弟の末っ子で、一番上が兄、次は姉で、その次に3つ上の兄がいます。兄や姉は非常に優秀なのですが、僕は勉強が大嫌いで、小さい時から怪我ばかりしているやんちゃな子でした。今だから言えますが、宿題は全部兄に任せていました。学問が得意な人は学問をやれば良い。遊びが得意な僕は、兄貴にプレゼントをしたということです(笑)。兄や姉は優秀だったので、当時は越境入学と言いましたが、地元の小学校ではないところに行きました。僕もそこに入ったんですが、学校のみんなはすでにエリートで、あまりの学力の違いにあぜんとしました。中学も、3つ上の兄が丁度卒業した時に僕が入学を迎え、そうすると先生が「西田の弟が来た」と期待するわけです。

――中学校でも「やんちゃ」な感じでしたか?


西田文郎氏: けんかもしました。超進学校ですから、柄の悪い周りの中学の人たちから、うちの中学の生徒がいじめに遭うんです。「この学校の番長は誰だ」というのもありました。もちろん僕は暴力は嫌いです。それに今みたいに陰湿なものではなくて、刃物などは使わない、正しい殴り合いです(笑)。兄、姉の方がはるかにすごいのですが、それでも、母親は一番下のやんちゃな僕に対して「文郎はすごい」と言うんです。そうすると人間は根拠のない自信を持ちます。根拠のない自信は脳の錯覚なのですが、実は非常に重要で、だんだんと確信になっていく。小さい時に僕を錯覚させてくれたという意味では、すごい母親だったと思います。
小学校で劇があって、その感想文のようなものを書かされた時、その作文が練馬区の賞を受けたのですが、実は僕が書いたのではなくて兄が書いたものだったのです。でも学校の先生は、僕が書いたと思っているから、まずいなとは思ったんですが、学校で仲間が「西田、すごいな」と言っているのを聞くうちに、いつのまにか自分が書いた気になり、自分は文章を書くのが得意なんだ、と錯覚し始めました(笑)。

問題は「能力」ではなく「脳」にある


――西田さんは長く、メンタルトレーニングの分野で活躍されましたが、その根本にあるのはどのような想いなのでしょうか?


西田文郎氏: 弊社の社名であるサンリは、「3つの理念」から来ています。研究、知識で「真理」を追求するとともに、多くの人が認める行いの道である「道理」、そして万物を支配している「天理」を求めるということです。僕はよく社員に、日本の法律は破っても、うちの理念は破ったら絶対許さないと言っているんです。もちろん法律を犯すのは良くないですが、うちの会社に来ていただいたのなら、うちの会社の理念を意識してもらわないといけないという意味で言っています。
脳の機能のことをお伝えすることは、私が始めた時は、誰もやっていませんでした。だから、日本の影響力のある人、例えば東証一部上場企業の社長さんにそれを伝えていけば、何千人を指導するよりも社会に貢献できると思いました。社会に貢献できなければ会社は存在意義がないから、その瞬間に辞めます。

――冒頭でお話しいただきましたが、限られた人への指導から、一般へ向けた活動をし始めたのはなぜなのでしょうか?


西田文郎氏: 影響力のある人に指導してきましたが、還暦を過ぎてから、そうでない人たちのところに行くと、ついてない人は「ついてない脳」になっていると感じました。能力がないのではなくて脳なのだということを、一般の方々にもわかってもらいたいと思っています。今まで表に出ないで特殊な立場から、持たせていただいていた影響力を、どう使って死んでいくかということが、僕にとっては重要なことなのです。かっこよく言うと、自分がやらないと誰もできないと思っています。

――能力、才能がないと思って、様々なことを諦めている方も多いと思います。


西田文郎氏: 僕はよく言うのですが、自宅の電話番号を覚えている人ならば天才です。それだけで成功の可能性があるのに、皆それに気づいていない。人間の脳は、赤ん坊の時はなんでもできると思っているから、何百回ひっくり返っても、立つという目標を諦めない。もし赤ちゃんの時に立つのは無理だと脳が判断したら、僕は今日ここにハイハイして来たはずです(笑)。赤ちゃんの時には脳の中に否定的データが入っていないので、疑いの余地もなくチャレンジして、我々は立って歩けるようになる。これが大人になると、脳の機能が良過ぎて、赤ちゃんが立って歩くよりはるかに簡単な月間目標ですら、途中で諦めてしまう脳になっている。



僕がしたいのは、その思考を変えさせてあげることです。自分の将来に対して肯定的錯覚をしている人間が成功者になっている。もう片方は、「常識で考えて無理だよね」と否定的錯覚をして生きている人間です。ビジネスでもスポーツでも、「きっと自分はこうなる」という肯定的な錯覚をしている人が成功していきます。

面白いからこそ、脳は集中する



西田文郎氏: 社会的権威のある人ほど、自分はすごい人間ではないと言っています。好きでやって、肯定的錯覚を続けてきたから優秀になっただけです。僕は中学校や、高校の講演に呼ばれた時に、「学年で一番数学ができないと思っているやつ手を挙げろ」と言うんです。で、その子に「君は頭が良いからできないんだ」と言います。小学校の時に算数が嫌いになったことを脳が覚えているから、数学の教科書を見た瞬間に嫌だという判断をしている。頭が良いからすごいスピードで嫌な経験をアウトプットしていく。

――好きなことについては、どんどん頭に入るという経験は確かにあります。


西田文郎氏: うちの会社の面接の時、ある社員に苦手な教科を聞くと、歴史だと言ったんです。歴史は、誰が何をやったという物語を覚えることなので、できないわけはありません。この社員は漫画が好きで、日本史の物語は覚えてないのですが、『巨人の星』の星飛雄馬がいつ大リーグボール何号を作ったかとか、『あしたのジョー』で最後に戦った世界チャンピオンは誰かなど、こういう問題を出せば学年で1番だと思うんです。漫画に関しての物語は、脳が下垂体前葉からチオトロピンというホルモンの分泌が高まって、脳が面白いと思って集中する。授業になるとつまんないと思っているから、脳が活性化されない。うちの兄なんかもそうでしたが、数学が異常にできる子は勉強はしません。なぞなぞを解いているのと一緒で、面白がってやるのが数学なんです。うちの会社にも各分野のスペシャリストがいますが、面白くてしょうがないから専門家になったのです。

――否定的な思考はどのように変えていくのでしょうか?


西田文郎氏: 例えば、トラウマを受けた人に「すぐ治せ」と言っても治らない。それを治すために、記憶データを塗り替えるっていうことを教えています。これを悪いことに使うと非常に怖いことになってしまうから、影響力のある日本の経営者など、ちゃんとした人にしか、全ては公開しませんでした。これからは、これを大衆化する方法を考えていきたいと思っています。

繁栄には「根」「絆」「分」が必要



西田文郎氏: 起業した人は、初めは自我の勢いだけで、自分が儲けたいから一生懸命考える「商人」というわけです。これが少し成功すると、社員が入ってきて、商人から「経営者」になる。基本的には、大体ここで終わってしまうのですが、大成功した人は、経営者の次に「教育者」になっていく。そして、もっとでかくなると、商人に戻るんです。商人に始まって、商人に戻るのですが、「大商人」になるんです。昔の人で言うと松下幸之助さんや豊田喜一郎さんですね。最初の商人は自我の欲求で、自分の利益ばっかり考えて成長していくんですが、最後はそんなこと考えてないんです。社会にどう貢献するか、大商人としてグランドデザインの中心になって、なおさら発展する。

――経営者の理想には、一生終わりがないのですね。


西田文郎氏: 西田塾に来る経営者に、卒業する時に死生観を聞いています。死ぬ時に、回りにどういう人がいるかということなどを全部イメージングさせているんです。これは死ぬためではなく、限られた命をどう使うか、つまり生きるためなんです。金儲けはテクニックであって、仕事をすることで自分はどうあるか、という人間としてのあり方が必要です。本当の成功は、「生きては人に喜ばれ、死んでは人に惜しまれる」ということであり、「生きては人に嫌われて、死んでは人に喜ばれる」というようなやつは生きている意味がない。生きているうちは厳しいことも言うかもしれませんが、「この人と出会って良かった」と人様に喜んでいただいて、死んだ後には「あの人のおかげ」だと言われるのが人間としての真の成功です。金儲けを何のためにしてきたのか、どこに向かっているかというベクトルを決める。自分のためだという人は、絶対大きなことはできない。

僕は繁栄の法則には3つあると思っていて、1つは「根の法則」。グランドデザイン、理念が木でいうと根です。根があるからこそ中長期計画の戦略という幹があり、具体的な戦術という枝がある。何のために仕事をしているのか、何のために生きるのかという根がない人が幹を作っても倒れます。2つめが、損得勘定だけで動いていると社員さんとの真の絆はできないという「絆の法則」です。3つめが「分の法則」です。成功するまでは、社会的認知がありませんので、無鉄砲に攻撃した方が良い。石橋をたたいて渡っていてはいけないのです。もし石橋をたたかないで渡って落ちたら、そこからどうしたら良いか考えればいい。ところが、成功すると、地域や、社会、社員さん、あるいは顧客に対する責任などが発生します。その分を守らなければ、一時期勢いよく行っても、どすんと落ちるんです。僕はホリエモンは大好きですが、彼は分をわきまえなかったから、同じことをしている人たちがたくさんいるのに、見せしめにあった。図に乗ったことで損をしたのだと僕は思います。

要らないものを買わせる「仕掛け」


――西田さんは、電子書籍についてはどのようにお考えでしょうか?


西田文郎氏: やはりこれからは便利だし、楽ですから、電子書籍になっていくでしょう。通販会社をやっている卒業生の方がいますが、今はもうテレビ通販の売り上げが大幅に落ちて、圧倒的にネットになっていますし、これから益々ネットになっていくでしょう。テレビ通販は、ネットをしない層にターゲットを絞っていますが、若者たちはネットでものを買いますから、書籍もそうなるのではないでしょうか。僕自身は、紙でも電子でも読みます。買い方は計画的ではなくて、新幹線に乗る前や、面白そうだと感じた時に買って、あっという間に読みます。その時の関心が大事で、すぐに感動する方ですから、これ良いなと思ったらすぐに買います。

――ネットの登場で出版業界のみならずビジネスの世界は激変していますが、現状をどのようにご覧になっていますか?


西田文郎氏: 戦争で日本は崩壊したと思われたのが、我々の親の世代の人たちが一生懸命、ただ生きるためだけに頑張って繁栄しました。しかし繁栄すると、必ず崩壊が始まります。政治も経済もビジネスモデルの仕組みも、過去のことをまだやっていますが、もう壊れています。ネット時代になって、今までのリアル店舗の売り方は、業種によっては古くなっています。僕らの勉強会には若い子たちも出てきていますが、ネットを利用してわずか3年、28歳で年商100億の会社にして上場した人がいます。そういう人は、今までの仕組みではない仕組みで顧客のニーズをつかんでいる。昔は作れば売れたのですが、日本は成熟して、良いものだらけなので、良いものを作れば売れるという時代ではない。居酒屋も、今は冷凍食品の技術が発達していますから、まずいものを出しているところなどないので、商品が良いというだけではもう売れません。

――今の時代にものを売るためには何を心がければよいでしょうか?


西田文郎氏: 僕は「おかずの法則」って言っていますが、例えばここに100円で白米を売っている。もう片方では100円で白米と梅干しを売っていると、梅干しが好きな人はおかずに梅干しがついている方を取る。嫌いな人は白米だけを取る。だけど、おかずが3、4個ついていたら、その中に要らないものがあっても、消費者はおかずがたくさんついてる方を必ず取る。商品に対してだけではなくて、売り方やサービスなどに対しても、おかずをくっつけると爆発的に売れる。数少ない要る人に売ろうとすると、値段のたたきあいになってしまいますので、ブランディングの仕掛けで、要らない人にものを売らなければいけません。
書店の話に戻ると、Amazonが出てきて、ネットの方がはるかに便利ですから、従来の本屋さんは苦しい。電子辞書には便利というおかずがある。今、ターゲットを女性客だけにして、仕掛け始めている書店さんが出てきています。ターゲットを絞るとアイディアが出てきますし、セグメントされると、しなければいけないことがはっきりする。全てのお客さんにサービスするということでは、良いサービスにならないのです。ターゲットを絞って、要らなかったのに仕方なく買ってしまうという状況を作らなければだめなのです。

鳥の目でグランドデザインを描け



西田文郎氏: これは個人的な見解ですが、どう見ても日本はまずい状態にあると思うのです。少子高齢化が益々進み、今まで後進国だと思っていた国が、非常に強くなってきていて、このまま行ったら、日本との逆転現象が起こる可能性がある。私には孫がいますが、孫の世代では後進国だと思っていた国の方々に、低賃金で使われているかもしれない。

なぜ僕が還暦を過ぎてから、表に出て、いろいろな活動を始めているのかと言えば、日本の経営者をもっと強くしないと日本が滅びるという危機感があるからです。昔から政治家が日本を救ったことはなく、日本を救っているのは税金を払っている人たちなのです。だから、もっと中小企業の経営者を強くしなければいけない。優秀な経営者というのは鳥の目で、ものを見ています。成功しない人は、虫の目で目先のことばかり考えて、これをやってみよう、あれをやってみようと無計画に始めます。
今、新しい会社で早い期間にグループ年商1000億を作ろうとしているのですが、どういう業種がいいかと、百数十個分のビジネスモデルを分析して、その中から4つ始めることになりました。それを実現することで、1%の10億を寄付できる。優秀な経営者は、グランドデザイナーであり、グランドデザインの中に理念がある。だから、理念がなく、ただ目標があるだけでは組織力もできないし、繁栄は続かないですよね。

――最後に、何かにチャレンジしようと考えている若者へのメッセージをお聞かせください。


西田文郎氏: 今、素質が大したことなくても、将来こうなれるというイメージから自分を見ている人が最終的に勝ちます。右の脳でイメージしたことを左脳で詰めていく、つまり分析して問題点を詰めていくのであって、決して夢見る右脳馬鹿、誇大妄想ではありません。根拠のない自信から根拠のある自信、確信にするには、鳥かん図で見られるように勉強をしてください。スポーツ選手でいうと、オリンピックで金メダル取ろう、日本代表になろうと思ったら、その長期イメージを達成するために、しなければいけないことがたくさん出てくる。仕事に関しても生活のためだけではやはり悲し過ぎますから、仕事で何を残そうとしているかという、目的、グランドデザインが必要です。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 西田文郎

この著者のタグ: 『アドバイス』 『経営者』 『メッセージ』 『トレーニング』 『脳』 『メンタル』 『成功』 『能力』

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