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世界中の本好きのために

鹿島茂

Profile

1949年生まれ、神奈川県出身。東京大学文学部仏文学科卒業。共立女子大学助教授・教授を経て現職。19世紀フランスを専門とし、幅広い分野での評論活動を行っている。フランス文学の研究翻訳を行っていたが、1990年代に入り活発な執筆活動を開始。『馬車が買いたい!』でサントリー学芸賞受賞、『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞、『パリ風俗』で読売文学賞受賞。古書のコレクターとしても有名で、「NOEMA images STUDIO」では、書庫を貸しスタジオ兼貸しギャラリーとして一般開放している。

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古書の価値を持った電子書籍を


――鹿島さんは電子書籍についてはどのようにお考えですか?


鹿島茂氏: 今、電子書籍はダウンロードの数というものを第一に考えています。そうするとダウンロードの頻度の高いものだけを並べれば良いという結論になりますが、それでは、だめなんです。電子書籍の本来の良さは網羅性であって、どこの図書館にもないけど、電子書籍にはある本が大切です。極端に言えば値段は高くても良い。普通の本が千円だったら希少本は1万円にしたって構わない。そうしたら1回ダウンロードしてくれたら、10冊分の金が入ってくる。
今電子書籍が狙っているのは新刊市場だけです。でも古本の価値観というものも取り入れて、古本で高いものを書籍化するっていう風にした方が僕らにとっては非常に良い。本当に必要な資料は、なかなか見つからないのだけど、ないと仕事が始まらないということもある。例えば、今ランボーのことを書いているのですが、ランボーの翻訳は小林秀雄しかいない。他の翻訳、特に中原中也の翻訳が必要なんですが、なかなか見つからない。それが青空文庫を探すと一発で出て、「良かった、良かった」という感じなんです。
最近の図書館はどこも網羅性を考えてないから、ないとなったらどこにもないんです。国立国会図書館では本によってはコピーさせてくれませんから。電子書籍で、国会図書館の様なものを構想する形にしなきゃいけない。それこそバベルの図書館みたいなものにならなければ、本当に良いものにはならないですね。

――電子書籍の登場で編集者の役割も変わるでしょうか?


鹿島茂氏: 紙の本でも電子書籍でも、書かれたものをリーダブルにする作業が必要なことは変わらないですよね。僕はブログをやっていますが、誤植もよくあります。そういうのはやはり、編集者の目が必要ですので、電子専門の編集者が誕生しても良いと思います。人から預かった原稿を校正者としてチェックして出す。僕は、そういうのは出版社を退職した人がやればいいと思っています。アメリカのAmazonでは、ど素人が書いたものがいきなりベストセラーになるということがありますが、そういうことを編集者を介してやれば良いんじゃないかなと思います。

背表紙、挿絵、紙の本の美しさ


――紙の本は物としての美しさもありますが、こちらの本棚も本がきれいに並べられていますね。




鹿島茂氏: フランスの本屋の並べ方を倣っています。並べてみると分かるけど、フランスの本は大体色が決まっていて、深緑と赤と黒と茶色の4色しかない。それは皮なめしの皮の色がその4色しか出なかったからで、それによって統一感が出ています。逆に日本みたいにどんな色も出ると、「目もあやに」なんて言葉にすれば良いけど、でたらめになっている感じもあります。

――こちらの本棚は美しいだけではなくて、大量の本が収められるように工夫してあると感じます。


鹿島茂氏: 工学的に散々工夫した挙げ句、最大表面積を獲得するには、ラジエーター型がベストだという結論に達しました。こことは別に、書庫として借りた部屋があるんです。息子がカメラマンで、この引きがあればスタジオに使えると言われまして、そこは一般に開放して、写真スタジオにしているんです。僕は商売屋の生まれですから、元を取るために本に家賃を稼いでもらおうと(笑)。

――ところで、本の美しさという点では、鹿島さんの本は奥様が挿絵を担当されていますね。


鹿島茂氏: 彼女はごく普通の主婦だったんだけど、僕が書いていた本に挿絵を入れる必要が生まれた時、あまりに安い値段だったので引き受ける人がいなかったんです。それで彼女が「私がやってみる」って言って始めました。岸リューリが彼女のペンネームですが、今は僕の書いている本は、大抵彼女のイラストです。僕がぎりぎりに書くから、すぐ近くにいる人間じゃないと無理なんです。「これじゃ描けない」とか「この文章は良くない」などいろいろ批判されます。彼女が最初の読者です。

著書一覧『 鹿島茂

この著者のタグ: 『大学教授』 『アイディア』 『漫画』 『教育』 『美術』 『無駄』 『コレクション』

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