くすぶっていた青春時代への「リベンジ」
――読書の体験も絡めまして、幼少時代からの経歴をお伺いできればと思います。池田さんは福島のご出身ですね。
池田千恵氏: はい。今も両親は福島に住んでいます。子どものころは、親からは特に勉強しろと言われたことはありませんでしたが、文字を読むのが好きでした。新学年になると教科書がもらえますが、国語の教科書を、もらってきてすぐに最初から最後まで読んでしまったり、学校の図書館で片っ端から伝記を借りて読みあさったりしていました。
実は少女漫画もすごく好きでした。幼稚園の時に『りぼん』を買い始めて、そこで字の読み方を覚えました。小学校に入った時に国語の時間に先生に朗読で指されて、私は漫画を読んでいたので割とスラスラと読むことができましたね。漫画は『りぼん』と『なかよし』、『マーガレット』、『キャロル』と色々ありましたが、全部読んでいました。
――現在は作家としても活躍されていますが、子どものころから文章を書くことはされていましたか?
池田千恵氏: 文章を書くことはなかったですが、漫画が好きだったので、休み時間に女の子の絵とか、イラストを描いて友達にあげたりしていました。今も昔取ったきねづかで、iPadでお絵描きしてFacebookに載せたりしています(笑)。
――利発で、同級生からも人気があるお子さんだったのですね。
池田千恵氏: いえ、そんなことはないです。本好きな地味な子だったと思います。中学校の時は、担任の先生に「IQが低い」と言われたことがショックで、長年ひきずっていました。私、成績は割と良かったのですが、先生が、周りの人たちにカツを入れるために私をネタにして、「お前ら、千恵はIQが低いのにこんなに成績が良いんだぞ。それに比べてお前らは何だ」と授業中に言い出したのです。先生は何気なく言ったから覚えていないと思いますけれど、それがトラウマになりました。それからは、自分が失敗すると何でもIQのせいにして、「どうせ私はIQが低いですよ!」とか言って、ずっとくすぶっていました。
――大学受験でも苦労されたそうですね。
池田千恵氏: 志望大学に2回落ちてしまって、2回目の時に滑り止めで受かった女子大に入りました。前期は普通に過ごしていましたが、どうしても合わないと感じたんです。夏休みに入った時に、このままなんとなく4年間過ごしてしまっていいのだろうか、このままで人生終わりたくない、と思って、9月に休学をして、勉強をし直しました。失敗したっていう悔しさ、くすぶり感があるまま過ごしていたので、それをどうにかして変えたいとも思いました。
――4時起きの習慣もそのころからだとお聞きしました。
池田千恵氏: 最初は5時半起きからスタートしましたが、確かに早起きを始めたのはこの時期です。それまで夜型で勉強していたけれども、9月から半年しか時間がないので、今までのやり方だと絶対に無理だと思って、心を入れ替えて早起きをして頑張りました。私は何か行動を起こす時も、最初はポジティブな原因ではなかった。「リベンジ人生」なんです。
自分の価値に気づくことで人は変わる
――リベンジという言葉がありましたが、自分にとってマイナスな要素を発奮材料にするにはどうすればよいのでしょうか?

池田千恵氏: 現在「私であるための企画力講座」、通称「iプラ」という、女性が目的意識を持って頭を整理することで自分のやりたいことを見つけるためのセミナーをしていますが、そこでは過去の経験を皆さんに図にしてもらっています。自分の人生を図にすることでニュートラルな気分で振り返り、誕生から現在までを横軸にして感情の浮き沈みを細かく書いてもらうと、感情が下がっている時って、誰かの言葉が原因であることが多い。親とか先生の言葉は特にそうです。
例えば親から「お前は橋の下から拾ってきた」と言われことが意外と心にチクリと残っていたり、学校の先生に「親の育て方が悪いからこうなった」と言われた傷などが行動を制限していたりする。そういうことを思い出してもらいながら、今動けない原因を探って、前に進んでもらいます。原因がわかったらそれをプラスに転換すればいいだけだと思います。
――実際にセミナーに参加された方の反応はいかがですか?
池田千恵氏: まだ初めて1年で、4か月コースで今4期がスタートしている段階ですけれど、もう既に希望の部署に異動が決まった方とか、異業種に転職が決まった方、やりたかったことができる様になったという好意的なご報告をいただいています。
このままじゃ嫌だとか、徹底的に生まれ変わりたいと思っている人が、自分を分析していくと、実は生まれ変わらなくてもいいんだということがわかるんです。例えば引っ込み思案で人に伝えることができないとか、リーダーなのに後輩にうまく注意することができないという悩みを持っていたとしても、それは裏返したら相手を傷つけてはいけないといった配慮ができる人であるということです。もともと持っていることに価値があるということに気づいて、前に進む勇気が生まれた瞬間、顔が変わって行動も変わります。それを見ているとうれしくて、私自身も彼女たちに育ててもらっていると感じています。