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世界中の本好きのために

飯尾潤

Profile

1962年神戸市生まれ。東京大学法学部卒業、同大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。埼玉大学大学院政策科学研究科助教授等を経て現職。この間に、ハーバード大学客員研究員や、政策研究大学院大学副学長なども経験した。政治学・現代日本政治論を専門分野とし、日本政治を対象にその具体的な現れ方の分析、政治制度の運用や政治主体に関する考察をすすめている。雑誌・新聞に政治状況についての寄稿・コメントを行い、時にテレビの報道番組にも出演している。著書『日本の統治構造』(中公新書)でサントリー学芸賞、読売・吉野作造賞を受賞。

Book Information

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「背伸び」する読書は大切な経験


――飯尾さんの読書体験について、幼少期からお聞きしたいと思います。


飯尾潤氏: 私は神戸で育って、小さい時から家には本があって、本を読むことはよいことだとみんなが思っているような家でした。だから本はよく読んで、絵本みたいなものから始まって、小学校に行くようになると伝記の全集や、日本の歴史を易しく書いたシリーズものとかを何回も読んでいました。いろいろなことに興味があったので、科学の雑誌も取っていて、小学校の高学年になると、大人向けの文庫本を買うようになりました。

――意識して読まれるようになった作家はどういった方でしたか?


飯尾潤氏: 最初に買った文庫は今でも覚えていて、新潮文庫の芥川龍之介でした。そうしたら、もっと読みたくなって、出ているものは全部読みました。あとは、「新潮文庫の100冊」とか、「岩波文庫の100冊」とかあるでしょう。あれを中学生のころ、全部読んでやろうと思いました。当時は今に比べると、非常に難しい本も入っていましたが、とにかく読もうと。

――「全部読む」というような読書への欲求があったのはなぜだと思いますか?


飯尾潤氏: もっと賢くなれると思いました。哲学とかはよくわからないけど、あこがれもありました。そういう風に、自分の能力よりもちょっと背伸びするのが大切だと思います。面白いと思うものだけを読んでいては実力がつかない。
さらに高校に行くと、昔からの教養主義的な文化を持っている先生がたくさんいて、その影響で中国の古典なんかに親しんで、漢文なんかも得意でした。私は村上春樹さんと同じ高校で、彼の方がずいぶん上だから、直接は知らないけども、同じ英語の先生に習ったんです。その彼女の方針で、休みに英語の本を1冊読むということになっていて、サマセット・モームとかジャック・ロンドンを、英語で読むようになりました。

――政治学に関する書籍はいつごろ触れられたのでしょうか?


飯尾潤氏: 高校のころ、丸山真男先生の本を読みました。丸山先生の本は受験でも重要でしたから『日本の思想』は読んでいたのです。ただ、図書館に行って手に取った『日本政治思想史研究』は、箱に入って旧活字で、読んでもよくわからなかった。でも大学に行けばそういう本が読めるようになるんだろうと思っていたのです。それで、東大に入って、まず教養学部で勉強したのですが、本の読み方がずいぶん変わった。村上陽一郎先生の、科学史・科学哲学の授業が私にとって衝撃的だった。なぜかというと、受験勉強では正解を見つけることをしていたのですが、自然科学でも、みんな間違いながら進んできたということを教えられたからです。
当時、80年代の初めですが、学問的にも相対主義が強かったから、さまざまに違った見方をすることを教わって、自分が気に入らないものも読んでみなければならないと思いました。やっぱり社会科学に興味が出て、法律も政治も読んで、学部は違ったけれど経済本も、経済に詳しい友達からも刺激を受けて読んでいました。アダム・スミスはわかりやすかったけれど、マルクスの資本論は、本当に長いし往生しました(笑)。おそらくそんなもの全部を読んだ世代としては、最後の方でしょう。資本論は仲間の勉強会で読みましたが、みんなあんまりマルクス主義にはシンパシーを感じてはいなかった。どうでもいいエピソードは思い出せるけど、理屈の方はすぐに忘れてしまいました(笑)。でも、それは大学生らしい暮らしだったと思いますね。

本と本が「つながる」楽しみ



飯尾潤氏: 大学院に行くと、また読み方が変わる。それまでは本は前から順番に読んでいたんです。楽しみの本はそれでいい、でもそれではとても自分の専門の本は読み切れない。教えられたのは、目次や索引を使ってどの本を読むべきかを決めること、一部分だけでも、読まないよりはずっといいので読むことです。仕事になるとそういう読み方をしています。あとは、語学は得意じゃないけれど、英語の本は読まなくてはならない。でもたくさんは読めないから、ますますそういう読み方になる。読書の楽しみは減るけれど、しょうがない。現代日本政治についての本は、かつてほど楽しんで読めなくなってしまいました。たまにはじっくり読んでみたいと思いますけれど。最近は毎週のように本を頂いて、全部読みたいけれど、来たなと思ったら次が来るようになってなかなか読めない。本当に楽しいのは、自分の専門外の本を読むことです。読まなければいけないということもないので、気楽に読める。あと面白いのは、バラバラに読んでいる、遊びのための本でも、読んでいると本同士がつながってくることがあります。

――「本同士がつながる」とはどういったことでしょうか?


飯尾潤氏: 私は何か一事に入れあげるということがありません。そのことだけをしていると自分を小さくするようでイヤなので、いろんなものを読みたい。書店で手に取ることもあるし、新聞や雑誌の書評が出ていたものを買うこともあります。若いころはお金がないから、買おうかどうかをずいぶん迷ったけれど、最近本代には不自由がないので、まず買ってみる。家には読もうと思っている本を並べる本棚があって、いっぱいになると精神的によろしくない(笑)。それでいろいろなタイプの本をぐるぐると読むけれど、全然関係なく読んでいるものが内面的につながってくるということがあります。1年で4冊か5冊ぐらいつながってきます。例えば歴史でいうと、同じ王様が、全然関係ないつもりで読んできた本に出てきたりする。そうすると、前はわからなかったことがわかるような感じがして、世界が深まって、楽しいです。

著書一覧『 飯尾潤

この著者のタグ: 『大学教授』 『政治』 『知識』 『情報』 『つながる』

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