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世界中の本好きのために

水島広子

Profile

1968年東京生まれ。慶応義塾大学医学部卒業、同大学院を修了し医学博士号を取得。その後、同大医学部精神神経科勤務を経て対人関係療法専門クリニックを開設。「対人関係療法」の日本における第一人者。摂食障害、気分障害、不安障害、パーソナリティ障害、思春期前後の問題や家族の病理、漢方医学などが専門。日本うつ病学会などの評議員も務める。衆議院議員(2期)などを歴任し、男女共同参画社会の実現や児童虐待防止法の抜本改正などに取り組んだ。その他の活動ではアティテューディナル・ヒーリング・ジャパン(AHJ)の代表も務める。近著に『すべてのイライラを根っこから断ち切る本』(永岡書店)、『小さなことに左右されない「本当の自信」を手に入れる9つのステップ』(大和出版)など。

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本は「人生のペース」に合った媒体


――さまざまなメディアがありますが、その中でも本はどういった存在でしょうか?


水島広子氏: 媒体として、私は本が1番好きです。なぜかと言うと自分のタイミングで読めるから。書く時も、出版社にもよりますが、雑誌よりは自分ペースで書けますからね。私はマイペース人間なので、自分のペースが守れないことが嫌いです。電話も仕事ではほとんど使わずに、メールでやり取りします。電話で自分のペースを乱されるのが嫌いです。携帯も自分がかける時しか使わない。本に比べるとテレビなどはとてもペースが速い業界ですね。元気にやっていますということを見せるために時々出ますけれども。

――メディアによって人への伝わり方も異なってきますね。


水島広子氏: ワークショップに来られる方の中には、私のAHの1番ベーシックな本である『怖れを手放す』を3年前に買って、本棚にあったけどなぜか読む気にならなくて、最近ふと手が伸びて読んだら、まさに今の自分が必要としている内容だったと言う方もいます。本って、ある時読んで、「今じゃないな」という時がある。捨てる気にもならないけど今読む気にもならない本が、人生のある時期にぴったりくる。本は人生のペースにも合っている。トラウマの方などは、精神的につらくて、「これ以上触れないで」みたいな時がある。そういう時、テレビだと嫌なのに目に入ってきてしまう。本なら閉じればいい。小学校2年生の時の私みたいに1日2、3冊読むこともできる。本というのは人生のテーマなり生活なり、いろいろな意味で自分のペースに合わせて読める。あと人に勧めるのも本が1番良いと思います。

『ONE PIECE』は究極のAH漫画である



水島広子氏: 文字で体験するのが1番本質に触れられる。変な意味で衝撃的ではない。ビジュアルに入ってくるものって人にトラウマすら与えます。だから私は津波をテレビで何度も流すのは止めてくれと震災時に主張していました。衝撃を受けてしまうと衝撃のところで止まってしまうので、本質をじっくり考えるのが怖くなる。私は本多勝一の本を読んで吐いてしまったんですけれども、私が吐きながらでも歴史に向き合おうと思ったのはやはり文字だったからです。

――漫画の良さ、活字の良さがそれぞれありますよね。


水島広子氏: どちらかというと私が文字派なのは、漫画だとどうしても集約され過ぎてしまって、深く思考しないからです。何で大人たちが漫画じゃなくて本を読みなさいと言うのか、子どものころは分からなかったけれども、漫画の方が結論を押し付けられる感じがあって、本はそれがモヤモヤって来るので、言いたいことを自分で考えたり自分で拾ったりできる。やっぱり本の方がマイペースだと感じています。ただ、『ONE PIECE』は大好きですよ(笑)。『ONE PIECE』は、多様性のあるものを投げかけてくるので、いろいろな解釈ができて、大人でも楽しめる。善悪が分かれてないところが良いんです。敵だった人が仲間になったり、決めつけがない。象徴的なのがカマバッカ王国のニューカマーたち(笑)。生まれた時は男だろうと女だろうと、好きな方で生きていけばいいという発想がいい。『ONE PIECE』は海外でも売れているらしいです。社会的マイノリティーが自分たちのことをくみ上げてくれていると感じる。私は『ONE PIECE』は究極のAH漫画って思っていて、各地に講演に行く度に、そこにいる大人を捕まえて勧めています。ただ、暴力シーンが多いのは困りますけれどもね(笑)。

電子書籍と紙、多様な選択肢があれば良い


――本の新しい形として電子書籍がありますが、水島さんはご利用になっていますか?


水島広子氏: AmazonのKindleの外国版を持ってはいるんですけれども、私は電子書籍を読むのが得意じゃないんですよ。小学校6年生の息子は大好きで、楽天がkoboをゴールドカード所持者に一斉にタダで大盤振る舞いしたことがあって、そのkoboを息子に貸すということで事実上あげたんですけど、一生懸命読んでいますね。それもおやじみたいにお風呂の中で読むんです(笑)。

――電子書籍の可能性についてはどうお考えですか?


水島広子氏: 電子書籍についてプラスなことは、やはり軽いということ。旅先とか出張の時とか、「あの本を読みたいな」とふと思った時に出してこられるのがいい。私は本を自炊したものをパソコンに入れているんですが、急に必要となった時に取り出せるというのは便利です。電子書籍は、先ほど言った自分のペースにさらに合わせられるというのはありますよね。ただ、自分が本を作っているからというのもあるのですが、紙の方が今のところ私は好きです。装丁も含めて、本はトータルの芸術だなと感じられますから。

――紙の本と電子書籍は共存していったほうが良いとお考えですか?


水島広子氏: やっぱり選択肢があったほうが良いということだと思いますよね。このごろ自分の書く本も、契約書が2通になってきていて、普通の契約書と電子書籍の契約書がある。見たら電子書籍の方が印税率が高いんです。じゃあ良いんじゃないかとか思ってサインするんですけれども(笑)。私はとにかく1人でも多く読んでくれたらいいので、どっちも排除せずにやっていった方がいいと思っています。あとはもう好みです。私も含めて紙が良いという人もいるので、紙の本もいつまでもあってくれたらいいなと思います。

著書一覧『 水島広子

この著者のタグ: 『漫画』 『心理学』 『医師』 『選択肢』 『精神科』 『依存』 『理解』 『文字』 『トラウマ』 『AH』

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