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島宗理

Profile

1964年埼玉県生まれ。1986年、千葉大学文学部行動科学科卒業、慶應義塾大学社会学研究科修了後、ウェスタンミシガン大学心理学部博士課程を修了しPh.D.を取得。鳴門教育大学を経て、現在、法政大学文学部心理学科教授。行動分析学を専門とし、世の中に役立つ心理学を研究・実践する。著書に『パフォーマンス・マネジメント』『インストラクショナルデザイン』(共に米田出版)、『人は、なぜ約束の時間に遅れるのか』(光文社)など。

Book Information

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いつでも改訂できる教科書を


――電子書籍についてはどのように考えていますか?


島宗理氏: よく使っている、購入している方だと思います。電車での通勤時間が片道30~40分はありますが、その時に日経新聞をiPhone版で読んだり、電子書籍を読んだりしています。

――電子書籍では最近、どんな本を読まれましたか?


島宗理氏: 電子書籍は、数がそれほどそろっていない。電子書籍になっているもので、かつ、通勤時間に読んでいるので、それほど考えなくてもいいような本です(笑)、流れで読める本が多い。池上彰さんの経済のニュースとか、小説です。伊坂幸太郎さんの小説や、昔読んだ筒井康隆さんの本なんかをもう1回読んでみようといった感じです。Amazonは英語の本がたくさん出ていますので、日本語になっていない本が英語でそのまま読めて安い。ですから、そういった本を読むことが多いです。

――ご自分の専門領域に限らず色々な本を読まれているのですね。


島宗理氏: 専門領域の本は、電子書籍になっている本が少ないというのもありますが、あまり電子書籍では読まないです。電子書籍でダウンロードできる英語の論文もあって、一応ダウンロードはしますが、読まない。英語の論文は電子では非常に読みにくい。私は、日本語の方が電子書籍には合っていると思う。英語だと、画面が小さくて1行に収まる単語の量がどうしても少なくなる。改行の問題もあるから一画面に収まる情報量がすごく少ない。日本語は改行の問題がないから情報がビッシリ詰まった状態で読める。だから、日本語の方が有利だと思います。

――電子書籍の可能性について、どう思われますか?


島宗理氏: 教える方からすれば、教科書を書いて出しますが、実際に授業で使ってみると、学生がこれだと分かりにくいとか、こういう風に誤解するとか、そういうのがどんどん分かってくる。だから本当は、授業をしながらどんどん改定したい。それが、電子書籍ならできる可能性があると思います。例えば学期ごとに改定するとか、学期内でも改定するとか。「分かりにくかったから少し変えておいた」っていうようにしたら、読み直して試験までに違う情報で勉強できるとか、そんなこともできたら面白いなという風に思っています。

――それは大きな可能性ですね。


島宗理氏: サバティカルの間、色々なプロジェクトを作り過ぎているのでできるかどうか分かりませんが、電子書籍を作るオーサリングソフトで、来年度する授業の教科書を電子書籍で書き始めてみようかなと考えています。
マロット先生たちの本を日本人の著者3人で日本語化した『行動分析学入門』という教科書がありますが、これは自費出版で始めて、毎年それぞれがやっている授業で学生から分かりにくいところ、良いところの感想をもらって、毎年毎年、改定していったんです。最終的には産業図書から出版しましたが、それまでの数年間は、そうした形で毎年改訂していった。そういう意味ではやりたかったことがアナログ的にできた本なんです。それを今度は電子版でやってみたいなと思っています。

幸せになる方法を探す本


――オーサリングソフトなどの登場で出版社の役割、流通の役割が少なくなっているかと思いますが、そういう時代だからこその出版社や編集者の役割をどうお考えですか?


島宗理氏: 私は、すべての本が電子版になるとは思っていません。電子版では読めない本、読みたくない本はあると思うんです。電子版で読むのと、広げて読むのとでは違います。特に、読みながら書き込みができるとか、熟読している本だと大体この辺にこれが書いてあるという風に指が覚えているところがある。電子書籍にはそれがない。手の動作と感覚で関連するところを1冊の本から見つけていくようなことができない媒体ですから。そういうことも含めて、多分、紙の本は生き残る。そういう本はきちんと作ってほしいですね。
もう一つは、私のような執筆業が専門ではない、教育研究に携わっていて執筆もしている者にとっては、執筆行動の優先順位が低い。研究や教育が優先なので、どうしても時間を取るのが最後になりがちです。ですから、書くと約束しても、なかなか本が出ないというのがあります。そういう意味では、出版社や編集者に執筆支援をしていただければ助かります。「書けたらいいですよ」と投げっぱなしにしておくのではなく、例えば週1で何ページ、1ヶ月で何ページというような形で締め切り設定みたいなことをやっていただいて、進めていただきたいです。
実は行動分析学にはそういうテクノロジーもあるので、使って執筆者支援をやっていただくとうれしいなというのはあります。



――執筆活動も含め、今後の展望をお聞かせください。


島宗理氏: いま書く約束をしている本が2冊あって、1冊は「自分実験」という名前を付けようかと思っているんです。自分の行動を題材に実験をしていって、それで幸せになる方法を探しましょうという本です。「幸せになる本」や「幸せって何だろう」という本はたくさんありますが、実際にどうやっていいのか書いてある本はどこにもない。だからそれを書いています。でも、どうしたらいいのかは結局、自分を題材にして探さないと見つからないので、その見つけ方を書く本になります。
もう1冊は、もう少し学問的な応用行動分析学の本です。応用行動分析はいままで日本では、発達障害や学校教育などでよく紹介されていますが、それ以外にも色々な応用領域がある。スポーツ指導や企業、公衆衛生など、色んなところの研究、あるいは研究方法を紹介できる本にしたいなと思っています。その2冊を少なくともこの1年で仕上げるのが目標です。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 島宗理

この著者のタグ: 『大学教授』 『心理学』 『可能性』 『研究』 『教育』 『書き方』 『行動分析学』

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