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島宗理

Profile

1964年埼玉県生まれ。1986年、千葉大学文学部行動科学科卒業、慶應義塾大学社会学研究科修了後、ウェスタンミシガン大学心理学部博士課程を修了しPh.D.を取得。鳴門教育大学を経て、現在、法政大学文学部心理学科教授。行動分析学を専門とし、世の中に役立つ心理学を研究・実践する。著書に『パフォーマンス・マネジメント』『インストラクショナルデザイン』(共に米田出版)、『人は、なぜ約束の時間に遅れるのか』(光文社)など。

Book Information

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学問を分かりやすく伝える


――どんな会社に就職されましたか?


島宗理氏: ソフトウェア会社です。その会社の社長がすごく応援してくれました。働いてお金をためてから大学院に行こうと思っていたのですが、なかなかお金がたまらず、修士の2年間は働きながら大学院に通わせてもらいました。社長には個人的な相談にも色々乗っていただきました。バブル初期の80年代だったから、景気が良かったのもあるのでしょう。会社にも余裕があったのかもしれません。

――働きながら大学院に通うのは大変ではなかったですか?


島宗理氏: 忙しかったですが、楽しかったです。若かったから無理もききました。仕事をしながら色々な実験もしました。保育所で子供さんを相手に実験したり、ハトの動物実験をしたり、本当にあちこちを行ったり来たりしました。それに、めちゃくちゃ遊びました(笑)。風呂もない、トイレも台所も共同の恵比寿の汚いアパートに住んで、六本木がすぐ近くで、日比谷や六本木で遊んではタクシーで帰ってくるような生活をしていました。

――大学院を卒業後に、アメリカにも行かれていますが。


島宗理氏: 修士が終わった頃、アメリカでの私の指導教員となるマロット先生が日本にサバティカルで来ていたんです。話を聞いて論文も読んで「これは本当に面白い」と思いました。
マロット先生は24時間開いてるコンビニみたいに、24時間ずっと行動分析家であり続けている人です。もう相当なお年ですが、Facebookもやっていて、「少しおなかがたるんできたから毎日何マイル走ります」と宣言して、皆に報告することで自分のパフォーマンス・マネジメントをやっていくような人です。変わっているけど、本質的に正しい。この人のもとで勉強したいと思った。
それを社長に言ったら「ぜひ行ってきてください」と、会社から行かせてくださった。本当に恵まれていたと思います。社長には感謝してもし尽くせない。3年間アメリカのマロット先生の下で研究して帰って来ました。
帰国後、バブルがはじけた後で景気も悪くなっていたので、学んできたことを会社の運営にいかそうと、3年間、コンサルタントとして勤めました。

――本を書こうと思われたきっかけは何ですか?


島宗理氏: 行動分析学という学問が世の中にまだ知られていなかったことです。もっとたくさんの人に知ってもらえれば、多くの人がテクノロジーの恩恵にあずかれると思った。最初に書いた『パフォーマンス・マネジメント』は、実は会社の社内報に書いていたものです。会社の立て直しに使うのに、「行動分析学ってこんな学問です」とか、「こんなことができます」ということを、社員に理解してもらうために記事を書いた。その原稿がもとになっていますから、できるだけ簡単に、分かりやすく、正確に理解してもらうことを目指した本になっています。

――いわゆる論文として書くものとは全くテイストが違うのですね。


島宗理氏: 全然違います。ただ、本当は論文も難しい言葉を使ってはいけないと思います。簡単に書くべきですが、なぜかみんな難しい言葉で書いてしまいがちです。論文ではもちろん専門用語を使うのは当たり前ですが、文章自体は非常にシンプルにプレーンに短文で書いていくべきだと思う。人によっては非常に複雑でよじれているような文章を書く人たちも多い。それは良くないことだと、私は思っています。
一昨年まで、日本行動分析学会という学会で、機関誌の編集委員長をやっていたんですが、雑誌に載る記事を読んでみて一番の問題は、研究内容の質もありますが文章の書き方だと思いました。もう少し分かりやすく、正確な作文をしてほしい。ですから、一般読者向け、学会向けにかかわらず、文章の簡潔さや正確さは大切だと思っています。

――書く時には、どんな思いで書かれていますか?


島宗理氏: 私の書くものは、研究・学問がベースです。小説を書いているわけではないので、学問として正しい、きちんとしたエビデンスがある、証拠があるものを書くことです。ただ、学問の証拠をそのまま書くだけでは、ピンと来なかったり分かりにくかったりするので、ある程度、話を単純にして、話が伝わりやすいストーリーや背景を用意します。そのあたりを工夫しています。
もう一つは、自分の体験を書きます。賢明な読者の方は、そういう学問を知って、自分の生活に置き換える作業をされると思います。でも、何かサンプルがないと、実際の生活への置き換え作業がしにくい。ですから、実際にこの学問は自分の生活でこういう風に置き換えができますよということを書きます。身を削ってと言ったら変ですが、自分の生活の例を使って分かりやすく置き換えてみせています。

――例として自分の生活を書くのに抵抗はないのですか?


島宗理氏: 創作ではうまくいかないんです。ある行動について、どうしてその行動が起こるのか、起こらないのかをわれわれ専門家は考える。行動を起こすような要因や、起こさせないようにする原因を「変数」と言いますが、その「変数」を見つける作業が、偽物の話、創作の話だと本当に何が「変数」なのか分からない。でも、リアルな現実に起こっている行動で、その行動が起こる背景や文脈がよく分かれば、これが「変数」かもしれないというあたりがつく。だから、自分がよく知っている例を使うのが一番です。そのために自己開示をしないといけませんが、それに関してはあまり恥ずかしいと思わない。本には書けないようなことでも、授業では学生に自己開示しています。開示したことで、本当に聞き手や読み手が分かってくれるのであれば、自分にとっては大した問題ではないと考えています。

著書一覧『 島宗理

この著者のタグ: 『大学教授』 『心理学』 『可能性』 『研究』 『教育』 『書き方』 『行動分析学』

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