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世界中の本好きのために

小黒一正

Profile

1974年生まれ、東京都出身。京都大学理学部卒業後、同大学院経済学研究科修士課程を修了。2010年には一橋大学大学院経済学研究科博士課程を修了(経済学博士)。1997年に大蔵省(現財務省)入省後、大臣官房文書課法令審査官補、関税局監視課総括補佐、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授等を歴任。公共経済学を専門とし、世代間衡平や財政・社会保障を中心に研究している。著書に『Matlabによるマクロ経済モデル入門 』(日本評論社)『2020年、日本が破綻する日』(日本経済新聞出版社) 『人口減少社会の社会保障制度改革の研究』(中央経済社)など。

Book Information

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今の100倍の容量のiPadが欲しい


――電子書籍はお使いになりますか?


小黒一正氏: iPadでは容量が足りないくらいです。本当は、持っている本を全部入れたい。そうすれば、自分で気になった時にどこでも見られる。分厚い本を持ち歩く必要がない。それが可能になったら良いと思います。iPadの欠点は容量が今最大で64GBでしたっけ。最近128GBまで増えましたが、それでも足りない。100倍くらいの容量のものを作ってくれないかなと思います。

――特に専門書を読む機会が多いと思いますが、そういう意味では電子書籍の可能性は大いにあると思いますか?


小黒一正氏: あります。専門書になればなる程重たい。洋書も結構多い。1,000ページもある本を持ち歩くには非常に便利です。もう一つ便利なのは検索ができること。「そういえばどこかに書いてあった」という時にすぐ見つけられる。

――本の自炊はご自身でされるのですか?


小黒一正氏: 自分でやっています。裁断機も持っています。テキスト化して、PDFで入れるのが前提条件ですね。業者が一括で、例えば300冊くらい表紙も全部取り込んでくれたら良いですね。ニーズはすごくあると思います。学会があって海外へ行く時も、100冊持っていけるわけですから便利です。あとは、自宅で本棚を置くスペースが多いファミリーや、一人暮らしなら本がたくさんあっても気にしないと思いますが、結婚したり、子どもができたりで家が手狭になった時に、本のスペースはなくなってきます。それを電子の書棚に全部電子化してiPadなどに入れられれば、物理的なスペースができるので革新的だと思います。

――書き手として、ユーザーが紙の書籍を購入し後、電子化して読むことに対して何か特別な考えはありますか?


小黒一正氏: 違法コピーを気にする人はいると思いますが、僕はあまり気にしません。自分の書いている新書でも、Kindle版があるし、もともと値段も安いので。Amazonは、電子書籍に対応している本が、日本は圧倒的に少ない。最初から電子化されていた方が助かりますが、どうしても古い本は電子になっていない。なるべく速やかに電子化出来るような状態になってくれた方がありがたいです。

――電子化に抵抗がないのは、もともと論文などを電子で読まれていたからでしょうか?


小黒一正氏: 今、論文は全て電子化されています。昔は紙ベースの専門雑誌のみでしたから、必要な部分をコピーしなければいけなかった。今は電子で探して、契約して、そこからダウンロードして見る。便利さが全然違います。

問題解決のソリューションを伝えたい


――執筆について伺いたいと思います。


小黒一正氏: 執筆速度はそれほど速くないです。気をつけているのは、ソリューションをきちんと作った本にすることです。問題だけを書くのではなく、解決の方向を「完ぺきではないですがありますよ」ということを伝えたい。それを伝えたいという思いがないと、執筆が進まないです。批判されることもありますが、「色々と考えるとこの方向しかない」という思いがあって。完ぺきな文章ではないですが、なるべく落とし込んでいきたいと思っています。
私の研究領域は、基本には現実との関係があり架空のものではない。ですから、先に課題があって、それをよく見ようとする努力をしています。そして、それを分かりやすく説明する。難しい学術論文を、普通の専門家以外の方が読んだ時にも分かるように書かなくてはならないのが結構ジレンマです。そうすると、少し厳密性が落ちてしまうので、そのせめぎ合いが非常に悩ましい。
論文ではテクニカルワードがあって、プロならば知っていなければいけない話がありますが、それも知らない人向けに書いていかなければいけない。でも、そういう言葉を省きすぎてしまうと、うそではないですが、違う世界になってしまう。ただ、結局解決のソリューションにたどりつく方向に話を作っていく必要があるので、そこの部分で悩みますよね。なるべくうそにならないよう書くにはどうしたらいいか、いつも考えています。

――小黒さんが書きたい、伝えたいと思うものは何ですか?


小黒一正氏: 40年周期説というのがあります。今、NHKの大河ドラマ「八重の桜」でもやっていますが、明治維新が始まる前、江戸幕府がおかしくなり始めた。そこから日露戦争までの約40年で日本がピークになる。その後、下り坂になり、最後は太平洋戦争に突入して負けるわけです。そこまでが、また40年。戦後は、やはり約40年で高度経済成長がピーク、その後バブル崩壊も含めた下り坂の一番影の部分です。
今、われわれが直面している少子高齢化は、どの先進国よりも速いスピードで進んでいます。人口動態の動きをずっと追っていくと、江戸幕府で2~3千人前後でしたが、その後、明治維新を境に急激に人口が増えていった。その中で作り上げられた年金システムに、今苦しめられています。人口が増加すると見込んで作られた時限爆弾のようなものが、どんどん成長していっている状況です。
1千兆円という政府の借金もすごいです。この状態がずっと続くと思う人はいないわけで、それをどうやって処理していくのか考えるのが、まさにわれわれのテーマです。私だけではなく、皆で考えて何か良いソリューションを考えていかなければ、そのうち本当に立ち行かなくなります。特に今の大学生は、これから社会人になり、そういう問題に直面していくわけです。

――そういう意味で小黒さんは、一番メッセージを伝えなければいけない世代に近いところにいるのですね。


小黒一正氏: 高齢者も含め全員が、「将来の日本に何を残すのか」を考えることが1つのキーワードです。財源は限られるので、「困っていない人が困っている人を助ける」という視点も組み合わせながら政策の方向感をつけていかなければ、限界が来るのは明らかだと思います。
だから、どこかの時点で、ルールが全部変わってしまうと思います。今はまだ、耐えているところです。人口増を前提に作られた社会システムが、レイバーマーケット(労働市場)もそうですが、高齢者がどんどん増えていく。今度65歳定年義務化になって、昔ならば引退していた世代が働き続ける。すると、企業の賃金は限られているので、働き盛りの人の賃金カーブがスラット化させられるという問題に直面していきます。
人口減少や少子高齢化が進んでいく状態がもう当たり前で、それに適合した社会システムに変わってくという大転換点が起こると思います。その時に、どういうシステムが良いのかを考えていく素材を提供していくことが重要だと思っています。

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この著者のタグ: 『大学教授』 『勉強法』 『本質』 『目的』

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