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栗田昌裕

Profile

1951年生まれ。東京大学理学部卒、同大学院修士課程修了、同医学部卒。医師、医学博士、薬学博士。薬物動態学、肝臓病学、医学統計、システム理論などの研究を進める一方、講演や執筆も行う。日本初の速読1級の検定試験合格後、速読を入り口としたSRS(スーパー・リーディング・システム)能力開発法を提唱。「読む」ことを音韻言語のみの世界から視覚でキャッチするすべての情報に対応・発展させた情報処理を教える。世界伝統医学大会3回連続グランプリ受賞をはじめ、毎日21世紀賞、2001年提言賞等受賞も多数。指回し体操創案者。手相も指導。大学・大学院で医療・医学・薬学・リハビリ等を講義。著書百冊以上。

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知的情報処理と、情緒的なハピネスを高めたい


――栗田さんの今後の展望をお伺いできますでしょうか?


栗田昌裕氏: 私のできる範囲のことを、1つずつきちんと教えていくという、それだけのことを願っています。時代が変わっていきますから、価値観もニーズも変わっていきます。
だから私も時代の変化に適応しながら、何がそのときどきの時代に必要なのかと新たに考え工夫しながら、出すべきものをタイムリーに世の中に出していけたらいいなと思います。
しかし、「知的情報処理を高めたい」というのは普遍的なテーマです。
身体の健康さ、生活の健全さも普遍的なテーマです。
あとは情緒的なハピネスも重要なテーマです。

――情緒的なハピネスとはどういったことでしょうか?


栗田昌裕氏: 幸せに過ごしたい、ということです。これを追求することにも普遍性があります。
通常私は、心身の仕組みをわかりやすくとらえてもらうために、受講生には以下のように左手に結びつけて説明しています。
親指から小指までをまず1から5の番号で呼ぶことにしましょう。

このとき、1、2指は「知性」を表します。3指は「感情、情緒」を表します。4、5指は「身体」を示します。これはものごとをわかりやすくとらえるための約束だと思ってください。
もう少し細かくそれを分類すると、親指は「言語系」と呼び、言語的な知性を表します。人さし指は「心象系」と呼び、感覚とイメージ機能を表します。これら言語系と心象系の2つを合わせて知性の軸と考えます。薬指は「自律系」と呼び、自律神経の司る内臓の働きを表します。小指は「運動系」と呼び、運動を司る筋肉や関節の働きを表します。薬指と小指を合わせたものが身体の働きです。
これら5本の指の表すものの中で1番重要なものが実は「感情、情緒」です。というのは私たちがよいと思ったり悪いと思ったりする元になる価値観は感情、情緒に根ざしているからです。
「人生で何がしたいですか、何がうれしいですか、何が美しいですか、何が幸せですか、何が生きがいですか」などと考えてみてください。いずれの根底にも、感情、情緒があることがわかるでしょうか。だから最終的にはこの中指の表す感情、情緒の働きが人で生1番大事なことだと分かってくると思います。



すなわち、感情・情緒を強力にかつ有意義な仕方で動かせるかどうかが、人生でよく適応できるかどうかの大事なところなのです。たとえば、感情が枯れてしまうと世の中に出て行く意志も消えてしまいます。するとニートになって、引きこもったりすることになります。
感情・情緒を輝かせて、身体を活発に重かし、活発な知性の働きを上乗せすることを目指すのです。身体を動かす力は活力、感情の働きは気力と言い換えてみましょう。
すると、人生で重要な働きは、「知力と気力と活力」となります。
この3つを高めることが私のテーマです。それが総合的に最も容易に最速で実現できるような技術をより多くの人に紹介していきたいと思っているのです。

音の時代から目の時代へ、日本人を転換させる



栗田昌裕氏: あともう1つ、音の時代から目の時代に行くことが大事です。

――音から目ですか?


栗田昌裕氏: 音の時代から目の時代への移行。それが私が速読を教える際の目標です。
「音の時代」というのは、しゃべる、聞くという「音韻に基いた言語回路」を主として用いて生活している状態を言います。この回路を「音の回路」と呼びましょう。
私たちの読書の出発点はそこにあります。小学校に入ると、「さいた、さいた、さくらがさいた」などと音読して、つぶやきながら一文字一文字本を読むことを覚えます。これは読書の始まりが音の回路に根ざしていることを示します。

そもそも、子供は読書を始める以前には、両親や兄弟と会話をすることを学んでいます。こうして、聞いてしゃべるという大本の「音の回路」がまず出来上がります。
その後で、目で見た文字をつぶやくという作業を接ぎ木するのが一般的な読書です。これは視覚を接ぎ木した「音の回路」です。日本人も世界中の人も皆、この音の回路に読書の基礎があり、それを操って思考をしています。この段階を「音の時代」と言うのです。
しかし、この「音の回路」は遅いのです。どうしようもなく遅いコンピューターに似ています。日常会話をしたり、スピーチをしたりするときはそれでいいのですが、大量の情報をすばやく受け取るには遅すぎるのです。
ところが目の働きは音の回路のはるか先を行く性能を秘めています。音をとらえる聴覚の神経細胞はせいぜい2、3万本です。それに対して目の神経細胞は1億2千万本もあります。そこには5千倍の違いがあるのです。

例えばスカイツリーの上から東京を見下ろすと、一気に何十万軒という建物が見えます。しかし、その建物を、電話の向こうにいる人に1軒1軒説明してみてください。一体どのくらい時間がかかることでしょう、おそらく目で見て分かる時間の何百倍もの時間がかかるのではないでしょうか。言い換えると、視覚の秘めた能力を上手に使うと、何百倍も加速できるということです。そのような目の力を高めた知性の領域を私は「光の回路」と呼びます。速読は「光の回路」で行うものなのです。「光の回路」を活かす生活を「光の時代」と呼びます。
音の時代から目の時代への移行は、音の回路から光の回路への移行を促すことにほかなりません。
つぶやきながら音の回路で情報を伝えることは、糸電話で伝えることに似ています。私たちの音の回路を用いた読書の方式も、糸電話のように1次元的に伝わる方式で情報のやり取りしています。そのことは耳の奥の仕組みが、鼓膜から槌骨、砧骨、鐙骨と順番に骨伝導で伝わって聴神経に続いていることでも分かります。会話はまさしく糸電話の方式で情報を得ているのです。音読も同じです。
ところが目はカメラと同様に何万画素もの情報を一瞬でつかまえることができます。効率が全く違うことに注目してください。

――全然違いますね。


栗田昌裕氏: 世の中では、効率の良い情報伝達をするために通信機器がどんどん進歩しています。それが可能な時代なのです。カメラはフィルム方式からデジカメに変わりました。さらに携帯のような通信にもどんどん画像や映像が乗るようになってきました。
しかし、人間だけがまだ糸電話の方式になっているのです。そのギャップをおかしいことと感じてください。だからこそ速読への変革が必要なのです。これは時代の必然なのです。

しかし、情報処理の方式の変化、すなわちクオリティーの変革が伴わなければそれは実現しません。私が伝えたいのはそこなのですが、その問題意識がまだ十分伝わってるとは言えないのです。
多くの人が誤解をしています。インターネットで見ると、速読に関して誤解をしている人が極めて多いように見えます。そこにはビジネス上、商品として安易なものを売りたいと思う人もいるし、実際、安易なものが売れる時代でもあります。しかし、安易な方向に進むと大事な本質が失われてしまうことになりがちです。だから、そのような傾向とは戦わないといけないのが私の立場です。そこを克服しないと、時代を超えて新しい流れを作り出すことはできないと思います。

技術が進歩して、良いものほど安く売れるのでよく広がるという傾向のおかげで、短期間でインターネットの仕組みの活用が世界に広がり、クラウドも日常的に使用される時代になりました。だから頭の中でもそういう変化が起きてくるといいのです。子どもたちはすでにそういう時代に適応し始めています。大人のほうが取り残されてしまうかもしれません。
100年もたったら「昔はゆっくりと音読をしていたんだって。すごいね」と笑い話が交わされる時代が間違いなく来ると思います。

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この著者のタグ: 『考え方』 『速読』 『情報』 『テーマ』 『本質』 『文化』 『記憶』 『音』

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