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内山昭一

Profile

1950年長野県生まれ。昆虫料理研究家、昆虫料理研究会代表、食用昆虫科学研究会会員。幼少より昆虫食に親しみ、99年より本格的に研究活動に入る。どうすれば昆虫はよりおいしく食べられるのか、味や食感、栄養をはじめ、あらゆる角度から食材としての可能性を追究。著書に、その成果をまとめた『楽しい昆虫料理』(ビジネス社)、『昆虫食入門』(平凡社新書)があるほか、テレビ、ラジオ、雑誌、新聞、インターネットなどあらゆるメディアで昆虫食の普及・啓蒙に努めている。東京都日野市在住。
昆虫食彩館】(昆虫料理研究会ホームページ)

Book Information

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セミ、タガメ、毛虫…豊かな昆虫食の世界


――内山さんの活動も、「バッタ会」からどんどん広がって行ったんですね。ほかにはどのような「会」がありますか?


内山昭一氏: 夏は「セミ会」をやっています。セミの成虫は中ががらんどうじゃないですか。だから、素揚げとか天ぷらとかフライとかにすると、サクサクとしていて食感がいいんですけれども、幼虫の方が中身がギッチリ詰まっているので美味しいですよ。明るいうちに成虫をとって、暗くなってきたら幼虫を捕まえて、近くの調理施設を借りてみんなで食べる。幼虫は最近、燻製がすごくはやっていて、簡易燻製器で30分ぐらいでできちゃいます。「セミ会」はうちの会では人気があって、50人ぐらい集まりますね。ところが幼虫の出るポイントですから、ほかの方の観察会とかと重ならないようにというのが非常に大変です。われわれの後に来て、「今日は出ませんね」とかになっちゃうとまずい。ですから恐る恐る、でも大胆に(笑)。今までセミ会は年に一度東京でやっていたんですけれども、今年は筑波や千葉でもやりました。関西では5回ぐらいになりますけれども、向こうはクマゼミっていうデカいセミが結構いるんですが、ちょっと大味なんです(笑)。味はアブラゼミに落ちるといえば落ちるんですけれども、大きいから食べ応え十分だし、いっぱいいるので、大阪とか、最近2年ぐらいは伊丹でやっています。

――身近なところに食べられる虫はたくさんいるのですね。


内山昭一氏: そうですね。セミなんてここら辺でいっぱい鳴いていますしね。バッタも河原へ行けばトノサマバッタだけじゃなくてオンブバッタとかショウリョウバッタとか結構います。バッタとセミぐらいは、どこでも見つかるんじゃないでしょうかね。

――ご自著に「アブラゼミはナッツ味」と書かれていましたけど、やはりそれぞれの虫には味わいの違いがありますか?


内山昭一氏: はい。セミは素揚げしてそのまま食べるとナッツというか植物的な味がします。サクラケムシという桜の葉っぱを食べる毛虫は、食べると桜の香りがするんですよ。これはみんな驚きますよね。あとタイ産のタイワンタガメは洋ナシの味というか香りがする。体の格好に似合わず、さわやかな香りがするんですよね。これはうどんに香り付けをしてさっぱり食べようというイメージですね。

――内山さんの文章では、虫の味の説明に本当に面白いものが多いのですが、ご自身で考えられるんですか?


内山昭一氏: 考えます。「アミノ酸のうまみに富んだスズメバチと、さわやかなかんきつ系の香りのコラボレーション」とか(笑)。こういうキャッチを考えるのも面白いじゃないですか。

――韓国の屋台でも、カイコのサナギがよく売っていますね。


内山昭一氏: ポンテギっていいますね。缶詰でもよくあります。デカい鍋で煮て、紙コップか何かに入れてくれる。でもカイコのサナギは糸を取るために一度煮るんですよね。そうするとゆで汁の中にうまみとか栄養とかある程度逃げてしまう。それから乾燥させて売り出すので味が抜けたみたいになっちゃう。日本ではまき餌とかコイの色付けとか、そんなものに今は使われている位で、ほとんど用途が少なくなってきていますよね。それでも昔はそれなりに栄養もあったのでわれわれも、売りに来たのを買って食べるみたいなことはしていました。それと、皮と身の辺りに油があるんですけれども、その油分が劣化して、どうしても臭みの元になるので、鼻に抜けるにおいというのがやっぱりちょっと気になるっていう人が多いですよね。まあ食べ慣れるとそれはそれで美味しいんですけどね。

日本にも「くさや」とか、もっともっと臭いものがありますよね。だから慣れると別にあれがむしろ病み付きになるんだと思うんです。もうちょっと美味しいものですと、繭をカットして、生きたものをそのまま冷凍しておくと、栄養分もうまみも逃げないです。京都の塩野屋さんというところからいつも頂くんですけれども、そこが14代続いている織元さんなんですね。今シルクが斜陽産業で、ほかの色んな要素、可能性をちょっと考えている方で、化粧品とか色々ありますけれども、食べる方でももうちょっと美味しく食べられる方法を考え出したんです。カイコのサナギの既成概念をかなり覆すもので、やっぱり鮮度がいいと違うんだなという風に思いますよね。

優れた日本の食生活を元に戻す食育活動


――内山さんは食品衛生責任者の資格をお持ちですが、調理で気を付けることはありますか?


内山昭一氏: 基本的には生で食べないということですよね。必ず火を通す。少数ですけれども毒がある昆虫も中にはいますので、それはやっぱり避ける。まあその2つぐらいじゃないでしょうかね。基本的にはほとんどの昆虫は食べられます。例えばきのこなんてわからないじゃないですか。ものすごい毒があったりして。今まで食べられていたのが毒になったきのこもあったりします。しかもかなり毒性が強い。きのことか山菜に比べれば、そういう恐れは少ないので、比較的大丈夫だと思います。

――虫を食べる文化を広める活動の目的や、想いをお聞かせください。


内山昭一氏: 広めるというよりも元へ戻している感じですね。食文化を正しいものに戻していくという流れの中の一環として昆虫食もあるんじゃないかと思っています。和食というのは優れた食文化で、栄養バランスも非常にいい。だからこそ年上の人は長生きしているんですけれども、それがオリンピックとか万博とかを境にしてどんどん海外のファストフードが入ってきました。ファストフードが一概に悪いとは言いませんけれども、食生活がガラッと変わってしまって、色んな病気の元にもなっているし、自分で素材から作るということがなくなってきてしまっているというのはありますよね。そういう食の在り方というのは、見直そうということです。

野菜は、家庭菜園で土日に作るという動きがありますよね。地元のものをもうちょっとよく知ろうとか。昆虫だって昔はそこらにいたものを普通に食べていた。食べられるものとして昆虫は存在していました。それがちょっとゆがめられているので元に戻そうというのがベースだと思います。ただ、元へ戻すといってもなかなか壁が厚いので、どうそれを崩していくかということになると、多少はエンターテインメント的要素も必要になってきますので、虫フェスとかで若い人の好奇心をできるだけ発揮してもらって、昆虫食に親しんでもらう層を増やしていこうかなという風に思っています。

――スーパーで売られている食品のもともとの姿を知らない子どもも増えていると言われますね。


内山昭一氏: 魚が切り身で泳いでいるとかね(笑)。最近、食品偽装とか色々あるじゃないですか。加工食品に何が入っているのかわからないみたいな疑惑もあります。でも、ちゃんとバッタから料理すればこれはバッタだなってわかります(笑)。昆虫食を紹介していると、よく一般の方は「粉末にしちゃえばわからないから食べやすいんじゃないか」とかおっしゃいますけれども、ちょっと抵抗があるんですよね。やっぱりもともと、バッタってこんな味がするんだとか、サクラケムシって形はちょっとグロテスクだけれども、でも食べてみたらすごく美味しいとか、ものの存在を認めて、味を確認してもらうということが一番大事じゃないでしょうか。特に今、虫と接する機会ってすごく少ないじゃないですか。家ではお母さん、学校では先生がどう啓発するか、理解してもらえるかということですね。本当は小学校で昆虫食の教室みたいなのがあると、すごく面白いなと思いますけれども、なかなかPTAが難しいでしょうね(笑)。

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この著者のタグ: 『考え方』 『食』 『きっかけ』 『昆虫』 『理解』 『食文化』

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