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世界中の本好きのために

加藤諦三

Profile

1938年、東京生まれ。63年、東京大学教養学部教養学科卒。70年、週刊朝日11/27号「いま頼られている日本の『ココロのボス』10人」に当時最年少(32歳)で選ばれる。76年、TVKテレビ[学歴社会を考える]シリ−ズの構成および総合司会でギャラクシ−賞受賞。77年早稲田大学教授。この間、73-75年にハーヴァード大学イエンチン研究所准研究員。99年、毎日新聞「読書世論調査:二十世紀の心に残った作家」で八十位「註、同じ八十位には石川啄木、手塚治虫等」。現在は、ハーヴァード大学ライシャウアー研究所客員研究員、ニッポン放送系ラジオ番組「テレフォン人生相談」レギュラーパーソナリティーなどを務める。

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いまの時代、「良い紙の本」はとても手に入りにくいと思います



20代の頃から人間の心理や生き方などについての書籍を執筆し、日本のベストセラー作家として半世紀以上にわたって活躍してきた加藤諦三さん。ラジオ番組「テレフォン人生相談」の名パーソナリティとしても、有名です。日本の出版界を古くから支えてきた加藤さんに、ご自身の読書に対する考えや、現在の日本の出版・書店業界について、お話をお伺いしました。

100年後に、自分の本を電子書籍で読んでくれる人がいたら、すごく嬉しい


――加藤先生は本当にたくさん本を執筆なさっています。電子書籍化なさっているものも多いとお伺いしてますが。


加藤諦三氏: おっしゃるとおり、いまどんどん自分の本が電子書籍化されているんですが、版元さんによって、全然対応が違うんですよね。出版と同時に電子化するところもあれば、しばらく時間が経ってもしないところもある。

会社によって、かなり姿勢が違うんですよ。たとえば、PHP研究所なんかだと、文庫本を出したら、それと同時に電子書籍も出します。それに対して、他社の中には全然しない出版社がある。どんどん電子書籍化していく出版社がある一方で、全然しない出版社もあるんですよね。

――ご自分の本が電子書籍化していくことについては、どうお考えですか?


加藤諦三氏: 著者としては、自分の本がどんどん電子書籍化するのは嬉しいことです。というのは、電子書籍化すれば、たとえ100年後でも読みたい人がいれば読んでくれるわけです。でも、紙だと、20年後に僕の本が絶版になっている可能性もあります。これはあくまで推測ですが、紙の本の場合は、1年間で数千部は売れないと増刷は、きっと割に合わないんでしょうね。経営上しかたがないことだとは思うんですが、電子書籍の場合、すぐに大量に売れるわけではないけれど、データなら消えないから、その本のデータが存在する限り、長いスパンでじっくりゆっくり読んでくれる人がいる。書く方にしてみれば、読んでもらえないよりは、たとえ年に十数人しか読んでくれなくても、すごくありがたい話ですよね。

――レイアウトや装丁などは気にされませんか?


加藤諦三氏: 内容を読んでもらえれば、それで十分なので。表紙やレイアウトはあまり気にしません。ただ、電子書籍は紙の出版社にとっては、今の時代では経営的に赤字なんですよ。ただ、電子書籍の時代が来たときに遅れるといけない…という意識があるから、赤字でもやろうとする出版社が多いんでしょうね。

ただ、僕が書いているものは、人間の心理です。つまり、心の問題だから、正直いって、いま書いているものが20年前に読まれたとしても、その読者に当てはまるものなんですよね。これが、経済的な内容の本だったら、欧州危機や日本の首相が変わったりしてしまえば、一気に内容が意味をなさなくなってしまう。読まれる可能性を考えたら、研究者が後から資料として読む…というケースぐらいでしょうか。

「好きな本を置こう」「日本の文化を担おう」という意識の本屋が減っている


――先生は、すごく普遍的な内容を扱われているので、たしかにいつの時代に読まれても問題ありませんよね。


加藤諦三氏: ただ、最近の出版業界の一番の問題は、書店が変わってしまったことでしょうね。昔は、書店の店主さんっていうのは、経済的合理性だけで経営するものではなかった。もっと、「文化の担い手」という意識を強く持っている人ばかりだったんです。たとえば、好きな著者がいたら、その人の本を多く置いておく。新刊が出れば平積みする…とか。

――好きな本や気になる著者がいたら、目立つところに置いていましたよね。


加藤諦三氏: そうなんです。店主さんが「こういう本が世の中には大切だ」と思うと、なんとかその本を売ろうと努力してくれていたんですよね。でも、最近はそういう小さい良い本屋さんはどんどん潰れてしまって、そういう書店はなくなってしまっています。こういう中小の書店がなくなって、大型書店ばかりになってしまった。

大型書店の場合、経営効率を考えないといけないので、仕入れ担当者はソロバン勘定がうまくなっていくんです。もちろん、大型書店の全部が全部、そういうわけではないとは思うのですが。「自分がこの著者が好きだ」「この本は社会に普及するべきだ」「自分が日本の文化を支えているんだ」と考えるわけではなくて、「この本は売れるだろうか」「どのくらい利益が出るだろうか」という考えで本を選んで、書店に置くようになる。

――本屋さんが効率ばかりを重視するようになってしまった、ということでしょうか。


加藤諦三氏: そうですね。そして、その結果、どういうことが起きているか。100年前にできたすごく良い本はなくて、新刊本ばかりになってしまっているんです。幸い僕の本は、40年以上前に書いた本もいまだに増刷がかかっていますが、最近は増刷しないで初版だけで終わってしまう本もあります。



あと、もうひとつあります。昔は、日本全国の中小の出版社が出した本も、大切に売っていた。でも、書店さんの意識が以前と変わってしまったので、大手出版社の作品ばかりで、中小出版社の本は仕入れないし、売らないようになってしまったんです。要は、いまの書店は「本が好きな人」じゃなくて、経営のプロが運営するようになってきているから、しかたがないんでしょうけど。

著書一覧『 加藤諦三

この著者のタグ: 『大学教授』 『心理学』 『出版業界』 『本屋』 『書店』 『心』 『コンビニ』 『調査』 『普遍的』

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