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世界中の本好きのために

吉野敬介

Profile

1966年神奈川県鎌倉市生まれ。中学校時代から暴走族に加わり、特攻隊長になる。高校卒業後、中古車販売店勤務を経て、20歳の9月に大学受験を決意。約4ヶ月間の受験勉強で国語の偏差値を25から86に上げ国学院大学に合格する。大学卒業後、代々木ゼミナールの講師採用試験を受け、史上最年少かつ最高得点で合格し講師となる。以後16年間、名実ともに代々木ゼミナール人気ナンバーワン古文講師として活躍。延べ100万人を志望校に合格させた実績を持つ。平成18年度をもって代々木ゼミナールを退職し吉野塾を設立。受験生の要望に応え、平成20年度から東進ハイスクールの講師として受験界に復帰。再びトップの座に君臨中。

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人間相手の商売をしたい。みんながハッピーになってほしいからね



吉野敬介さんは、暴走族の特攻隊長から一念発起し受験勉強に励み、大学に合格。大学卒業後は有名予備校の古文講師として多くの受験生を合格に導きました。また、作家としては「源氏物語」や「平家物語」、「徒然草」等の現代語訳を手がけるほか、異色の経験で培った人生論から、強烈なメッセージを放つ自己啓発書もヒットしています。吉野さんに、仕事への想い、執筆活動などについて伺いました。

1年のうち2か月は徹夜。でも、休む時は休む


――早速ですが、吉野さんの近況をお聞かせいただけますか?


吉野敬介氏: いまは東進の予備校講師になっているし、自分でも塾を運営しています。あと、講演がある。明日も講演だし、あさっても講演だし。結構、慌ただしいよね。

――『1日で読める平家物語』から約1年ぶりの新刊『1日で読める徒然草』(共に東京書籍)も刊行されましたね。待っていました、という方も多いのではないでしょうか?


吉野敬介氏: 俺は自分で書いているからね。ほかの人たちって結構ライターさんが書いている。もしくは講演とかで話した内容をそのまま本にしている形が多い。俺なんかもライターさんに少しは手伝ってもらうこともあるけど、『1日で読める徒然草』とか、『1日で読める平家物語』のような専門分野に関しては、全部、自分で書いているので1冊書き上げるのに、半年以上かかる。極端にいうと1年のうち2か月ぐらいは殆ど徹夜みたいな感じで書いているよね。

――スケジュールが埋まっている中、執筆の時間を確保するのは大変ではないですか?


吉野敬介氏: 結構きついよね。自宅で書いて、それをどんどん新幹線や飛行機の中で推敲していくとか、移動時間をうまく利用しています。それで原稿ができたら、バイク便で取りに来てもらう。でも出版社の修正が遅いんだよね。俺の場合、例えば「15日までに原稿を出すよ」となったら、まあ遅くても12日とか13日ぐらいに出すようにしている。15日が締め切りと決めた場合、たいがい16日に何か講演が入っているから、14日に終えないと間に合わない。だから、よく生徒にもスタッフにもいうんだけれど、「仕事っていうのは忙しい人に頼んだ方がいい。暇なやつっていうのは時間があるからなかなかやらない」って(笑)。

――休暇はある程度取られているんですか?


吉野敬介氏: 基本的には1年中働いている感じだけれど、年に2回は海外、特にハワイに行くね。俺のブログとかを見てもらえれば分かるんだけど、「突然ですが今日からハワイに行ってきます。いつ帰るか分かりません」みたいな感じ。休む時は休むし、休まないで仕事をし続けることもある。

生徒に影響を与え続けることに喜びを感じる。


――古典が「1日で読める」というコンセプトの本を執筆されることにはどのような想いがありますか?


吉野敬介氏: 「1日で読める平家物語」って、受験生は当然だけど、保護者の方もかなり読んでいるみたいですね。紀伊國屋か何かで買う時に20代、30代、40代とかって購入者の年齢層がレジで押せるんだって。それで40代、50代の人にたくさん読まれているって出版者の方が言っていた。「1日で読める徒然草」にしても、徒然草って入試で一番出るので受験生は当然としても、40代とか50代の人たちに読んでもらいたいなというのはある。いままでにないようなものを書いているつもりだし、徒然草もパーツパーツで訳されたものがあったとしても全部解説・現代語訳されている本って今までなかったと思う。だからそういうものを書いてみたかったんだよね。ビジネス書とか啓発本っていうのは何だかんだいって、その時その時1年ぐらいの勝負っていうのがある。でも俺の本の『だからお前は落ちるんだ、やれ!』(ロングセラーズ)とか、『今、頑張れないやつは一生頑張れない。』(世界文化社)とかは予備校講師をやっている間売れているし、『1日で読める源氏物語』とか『1日で読める平家物語』も、いまだにずっと売れ続けているわけよね。だからそういう本を書きたいなと思う。1日で読めるけれど、「1日で読むのはちょっともったいないな」というレベルの本を書き上げたいなと。

――吉野さんの最初の頃の授業を受けた方はいまおいくつくらいなんでしょうか?


吉野敬介氏: 俺いま46歳で、24の時に予備校講師になったから、その時18歳、19歳の生徒だといま、38とか37歳ぐらいじゃないかな。講演に行ったりすると講演スタッフや主催者が「先生の授業、受けていました」っていう風にいうんだよね。100万人ぐらい教えているんだから。それで代ゼミのテキストで、「さらば愛しの受験生」というのがあって、それをいまだにとってあって、それを持ってきてサインを書いてくれっていう風にいうのよ。大学を受かると、俺もそうだったけれど、参考書とかテキストなんてほとんど捨てちゃう。大学に入って何か月かすると大学のテキストも買わなきゃいけないから、掃除をしなきゃいけなくなって、全部捨てたりするんだけど、「これだけは捨てられませんでした。今回、先生が来るのでサイン書いてもらいたくて持ってきました。本当に捨てなくてよかったです」という風にいってくれたりするのはすごくうれしいよね。あと、やっぱり一番うれしいのは「先生の授業を受けて、自分もこういう風になろうと思いました」みたいにいわれること。そんなにうれしいことってない。

もし生まれ変わったとしても「俺」がいいな。


――さて、吉野さんといえば暴走族出身で、大学受験に挑戦するエピソードが有名ですが、どのような経緯で古文の講師になったのでしょうか?


吉野敬介氏: 俺、受験勉強するのが4か月ぐらいしかなかったから、もう英語は絶対に無理だと思ったのよ。だってアルファベットも全部いえなかったんだから。で、国語と日本史かな、みたいな感じになって、国語の中でも古文は結構好きだったっていうのがあった。古文の講師になったのは受験の時に通った予備校の師匠が国語の先生だからっていうのはあったよね。

――講師の経歴としては非常に珍しいのではないですか?




吉野敬介氏: 予備校講師って基本的に東大、早稲田、慶應とか、京大とか同志社とか名門大学を出ている人、それプラス大学院とかに行っている人が多いじゃない。で、俺は当然、中学高校時代はそういう友達がいたわけでも何でもなかったわけ。予備校講師になって東大とか早稲田とか慶應とか、大学院を出た先生たちと仲良くなって飲んでいると、その人たちが「暴走族時代ってどうだったの」って聞いてくる(笑)。「やっぱり気持ちいいの?」っていうから、「自分がトップで、先頭走っているわけだし、それは気持ちいいよ」っていうと、「俺もやってみたかったなあ」っていう人は多いよね。逆に俺たちからしてみると、東大とか行ったやつを見ると、「すげえな」とか思ったりするんだよ。結局みんな、ないものねだりなんじゃないの。ただ俺なんかは、もし生まれ変わってきても俺がいいな。東大卒業して予備校講師になったやつは腐るほどいるけど暴走族から予備校講師って、いまだかつて俺しかいないわけよ。それってすごくない?だからよく生徒にもいうんだけど「お前らがいっても、そのままの言葉で何も感動しないんだよ。俺がいうと邪道が芸術になるんだよ」って(笑)。

――吉野さんのように、人生を切り開くにはどうしたらよいでしょうか?


吉野敬介氏: やっぱり頑張ることじゃないのかな。本にも書いているけど、「今、頑張れないやつは一生頑張れない」ってよくいうの。「今、頑張らないでいつ頑張るんだよ」、みたいなね。そしてどうせ犠牲にするなら徹底的に犠牲にしろ。その犠牲も大学に受かった瞬間、いい思い出に変わるから。俺がいうから間違いない。それがお前らの財産じゃないか。財産っていうのは目に見えるものだけが財産ではない。目に見えないものが本物の財産なんだよってね。

「世の中金じゃない」。でも、金は手段になる。


――吉野さんの場合、受験勉強の際や講師として「頑張る」ことのモチベーションは何だったのでしょうか?


吉野敬介氏: 俺、基本的に貧乏人の息子で育ったんだけど。でもまあ俺が特別貧乏だったわけでもなく、うちらの時代って全体的に貧乏だった。だから何か漠然と「成りあがってやりてえ」とか、「うまいもんを食いてえ」とか、そういう感じだったよね。大学に受かった時、予備校の時の師匠の家にウイスキーを持って行ったわけね。そうしたらその先生が、「飯に行かねえか」って言って、赤坂の「フォンテーヌ」という店に行ったんです。そうしたらドリアが3,500円、ビーフシチューも3,500円ぐらい。そんなうまいものをいままで食ったことがないわけじゃない?二度と自分の金で来ることはないわけだから、ビーフシチューにするかドリアにするか迷った。で、「何を悩んでんのお前?」っていわれて、「いやあ、マジでいってもいいですか」っていったら「いえよ」っていうから、「ビーフシチューとドリア、どっちを頼もうか迷っているんですよ」っていったら、「じゃあビーフシチューをおかずにしてドリアを食えばいいじゃん」っていわれた時に、「俺、絶対金持ちになりたい」と思ったよ。

――お金は誰にとっても人生の大きなテーマの一つではないかと思いますが、お金についての吉野さんの考えをお聞かせください。


吉野敬介氏: 例えば俺も今回の東北の大震災で、被災地に何百万か寄付したり、参考書とかも寄付して、福島に講演に行ったりも色々しているけど、基本的には、自分にも余裕があるからできるんだよね。自分に余裕がなかったら助けられない。言い方は失礼かもしれないけど、それをやったところで、そんなに俺の生活に支障があるわけでもないしね。参考書を送れるのは自分で書いているからだし。自分の明日の生活がどうなるか分からければできないよね。でも中にはもう本当に助けたくて、そのためだけに行くっていう人もいるでしょ、そういう人には心の底から頭がさがるし、絶対かなわないなって思う。だから世の中ってお金だけじゃないと思うんだよ。金だけだったら人間、寂しいと思う。

中学、高校時代、金がなかったし、高校卒業して暴走族専門の中古車屋で働いて給料8万ぐらいしかもらえなくて。だけど、それをもらった時はそれはそれなりに楽しかった。いまは何十倍、何百倍の給料を稼いで、土地を買って、自宅兼仕事場で地下1階、地上3階あるんだけど、全部で2億6千万ぐらいキャッシュで買っちゃったけど、じゃあ何百倍、何千倍、当時よりも人生が面白くなったのかっていったら、あまり変わらないよね。「いままでで、いつが一番楽しかったですか?」って聞かれたら、いつも楽しいよね。中学は中学で楽しかったし、高校の時は高校の時で楽しかった、いまもいまで楽しい。ある程度のお金はあるし、入ってきたらまた使うしね。ただやっぱり男で生まれてきた以上、金を稼がぬ男はクズだと思う。金は時に「手段」として使えるから。

俺の本は、とにかく色々な人に読んでほしい。


――吉野さんと本とのかかわりについて伺いたいと思います。暴走族時代、本は読まれましたか?


吉野敬介氏: 読まない、読まない(笑)。矢沢永吉の『成りあがり』(角川文庫)ぐらいじゃない?あの本を読んで、「俺もこうなりてえなあ」みたいにあこがれて。いまはまあアトランダムに読んでいるけど、やっぱり古文の本は、捨てられないね。

――今回は電子書籍の話もお伺いしたいのですが、先生は電子書籍の利用はされていますか?


吉野敬介氏: いや、俺の中では電子書籍がよく分からないんだよね。出版社の人にたまに頼まれるんだけど、「やってもいいんじゃない」っていう感じなわけで。俺は別に本の印税で生活しているわけじゃないから。印税は数か月や半年に1回とか1年に1回ぐらい入ってくるかもしれないけど俺は分からない。あんまり気にしてないから。まあ、入ってりゃ入ったでうれしいし、入ってないなら入ってないでいいんじゃない、みたいな。ただ、紙の本を出す時には、必ず最後に「幾らにしましょうか」という話でもめる。俺としては安くしてたくさんの人に読んでもらいたいけど、出版社からするとある程度の厚さがあって、いま、紙の値段がすごく上がっているんで、「ちょっとこの値段だと無理ですね」みたいな感じで結構ぶつかったりする。お金が入ることに越したことはないわけだから、紙の本が売れればいいんだけど、電子書籍になるんだったらいろんな人に読んでもらいたいっていうのはあるよね。俺の本はいま中国とかで翻訳されたやつもあるけど、日本にこんなやつがいるのかみたいなことを海外の人も含め、色々な人に読んでもらいたい。

――電子書籍の可能性として、安く販売できて色々な人に広がっていくということを期待されているということでしょうか?


吉野敬介氏: 俺はそう思っているけど、だからといってそれが正しいわけじゃないと思う。やっぱり作家の人とか本の印税で生活している人からしてみれば、それこそ死活問題になってくるわけだから。ただ俺みたいに別に印税で生活していない人は、一人でも多くの人に読んでもらった方がいいかなと思ったりするよね。結局、紙と電子書籍がうまく共存した方がいいと思う。

「てっぺん」目指して最高にツッパって生きていく。


――あらためて、これまでを振り返って、講師という仕事はどのようなものですか?


吉野敬介氏: 俺自身平たんな道を歩いて来たわけじゃないし、色々なことがあった。中学1年からグレ始めて高校卒業するまでずっとツッパっていたけど、それってある程度のてっぺんが見える。暴走族になって自分が上になって、先輩たちが引退したら自分が特攻隊長になって。それがてっぺんなのよ。それ以上はないのよ。でも24歳で予備校講師になってもう22年たつんだけど、てっぺんが見えない。自分が決めるてっぺんと、相手が決めるてっぺんも違うし、それぞれの分野でそれぞれのてっぺんがいるわけだから。だから、達成感がないね。一瞬的な満足感とか一瞬的な充実感があっても、長く続かない。授業も去年よりも絶対、今年の方がいいのかなと思ったりするし。同じ授業をやっているんだけど、進歩しないと飽きてしまう。常に高いものをです。そして心を込めた仕事は必ず実を結ぶと思う。

――今後の展望としては、やはり講師の「てっぺん」を目指していくということでしょうか?




吉野敬介氏: でもね、予備校講師もいつまでやれるか分からないな。飽きたら辞めたいなと思う。契約も複数年契約を結ぶ人もいるけど、俺は単年度契約しか結ばない。だって複数年契約を結んだら辞められない。何か新しいものがあるなと思ったらそっちに進む。ただ、何をやるにしても人間相手の商売はしたいよね。みんながハッピーになってほしいから。ただ何をやっていくのかはまだ分からない。また来年、再来年、予備校講師をやっているかもしれないし、やっていないかもしれない。変な話、日本にいないかもしれないし。人生って他人から見たらどうでもいいことなのに、全力投球している。そんな何をやっているか分からないから面白い。現状に満足していることがつまらないんだよね。「次へ、次へ」みたいな感じで、新たな刺激を求めているんだね。「いまが最高にツッパってます」みたいな感じだよね。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 吉野敬介

この著者のタグ: 『考え方』 『生き方』 『働き方』 『教育』 『お金』 『古典』 『手段』 『財産』 『講師』

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