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世界中の本好きのために

吉野敬介

Profile

1966年神奈川県鎌倉市生まれ。中学校時代から暴走族に加わり、特攻隊長になる。高校卒業後、中古車販売店勤務を経て、20歳の9月に大学受験を決意。約4ヶ月間の受験勉強で国語の偏差値を25から86に上げ国学院大学に合格する。大学卒業後、代々木ゼミナールの講師採用試験を受け、史上最年少かつ最高得点で合格し講師となる。以後16年間、名実ともに代々木ゼミナール人気ナンバーワン古文講師として活躍。延べ100万人を志望校に合格させた実績を持つ。平成18年度をもって代々木ゼミナールを退職し吉野塾を設立。受験生の要望に応え、平成20年度から東進ハイスクールの講師として受験界に復帰。再びトップの座に君臨中。

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「世の中金じゃない」。でも、金は手段になる。


――吉野さんの場合、受験勉強の際や講師として「頑張る」ことのモチベーションは何だったのでしょうか?


吉野敬介氏: 俺、基本的に貧乏人の息子で育ったんだけど。でもまあ俺が特別貧乏だったわけでもなく、うちらの時代って全体的に貧乏だった。だから何か漠然と「成りあがってやりてえ」とか、「うまいもんを食いてえ」とか、そういう感じだったよね。大学に受かった時、予備校の時の師匠の家にウイスキーを持って行ったわけね。そうしたらその先生が、「飯に行かねえか」って言って、赤坂の「フォンテーヌ」という店に行ったんです。そうしたらドリアが3,500円、ビーフシチューも3,500円ぐらい。そんなうまいものをいままで食ったことがないわけじゃない?二度と自分の金で来ることはないわけだから、ビーフシチューにするかドリアにするか迷った。で、「何を悩んでんのお前?」っていわれて、「いやあ、マジでいってもいいですか」っていったら「いえよ」っていうから、「ビーフシチューとドリア、どっちを頼もうか迷っているんですよ」っていったら、「じゃあビーフシチューをおかずにしてドリアを食えばいいじゃん」っていわれた時に、「俺、絶対金持ちになりたい」と思ったよ。

――お金は誰にとっても人生の大きなテーマの一つではないかと思いますが、お金についての吉野さんの考えをお聞かせください。


吉野敬介氏: 例えば俺も今回の東北の大震災で、被災地に何百万か寄付したり、参考書とかも寄付して、福島に講演に行ったりも色々しているけど、基本的には、自分にも余裕があるからできるんだよね。自分に余裕がなかったら助けられない。言い方は失礼かもしれないけど、それをやったところで、そんなに俺の生活に支障があるわけでもないしね。参考書を送れるのは自分で書いているからだし。自分の明日の生活がどうなるか分からければできないよね。でも中にはもう本当に助けたくて、そのためだけに行くっていう人もいるでしょ、そういう人には心の底から頭がさがるし、絶対かなわないなって思う。だから世の中ってお金だけじゃないと思うんだよ。金だけだったら人間、寂しいと思う。

中学、高校時代、金がなかったし、高校卒業して暴走族専門の中古車屋で働いて給料8万ぐらいしかもらえなくて。だけど、それをもらった時はそれはそれなりに楽しかった。いまは何十倍、何百倍の給料を稼いで、土地を買って、自宅兼仕事場で地下1階、地上3階あるんだけど、全部で2億6千万ぐらいキャッシュで買っちゃったけど、じゃあ何百倍、何千倍、当時よりも人生が面白くなったのかっていったら、あまり変わらないよね。「いままでで、いつが一番楽しかったですか?」って聞かれたら、いつも楽しいよね。中学は中学で楽しかったし、高校の時は高校の時で楽しかった、いまもいまで楽しい。ある程度のお金はあるし、入ってきたらまた使うしね。ただやっぱり男で生まれてきた以上、金を稼がぬ男はクズだと思う。金は時に「手段」として使えるから。

俺の本は、とにかく色々な人に読んでほしい。


――吉野さんと本とのかかわりについて伺いたいと思います。暴走族時代、本は読まれましたか?


吉野敬介氏: 読まない、読まない(笑)。矢沢永吉の『成りあがり』(角川文庫)ぐらいじゃない?あの本を読んで、「俺もこうなりてえなあ」みたいにあこがれて。いまはまあアトランダムに読んでいるけど、やっぱり古文の本は、捨てられないね。

――今回は電子書籍の話もお伺いしたいのですが、先生は電子書籍の利用はされていますか?


吉野敬介氏: いや、俺の中では電子書籍がよく分からないんだよね。出版社の人にたまに頼まれるんだけど、「やってもいいんじゃない」っていう感じなわけで。俺は別に本の印税で生活しているわけじゃないから。印税は数か月や半年に1回とか1年に1回ぐらい入ってくるかもしれないけど俺は分からない。あんまり気にしてないから。まあ、入ってりゃ入ったでうれしいし、入ってないなら入ってないでいいんじゃない、みたいな。ただ、紙の本を出す時には、必ず最後に「幾らにしましょうか」という話でもめる。俺としては安くしてたくさんの人に読んでもらいたいけど、出版社からするとある程度の厚さがあって、いま、紙の値段がすごく上がっているんで、「ちょっとこの値段だと無理ですね」みたいな感じで結構ぶつかったりする。お金が入ることに越したことはないわけだから、紙の本が売れればいいんだけど、電子書籍になるんだったらいろんな人に読んでもらいたいっていうのはあるよね。俺の本はいま中国とかで翻訳されたやつもあるけど、日本にこんなやつがいるのかみたいなことを海外の人も含め、色々な人に読んでもらいたい。

――電子書籍の可能性として、安く販売できて色々な人に広がっていくということを期待されているということでしょうか?


吉野敬介氏: 俺はそう思っているけど、だからといってそれが正しいわけじゃないと思う。やっぱり作家の人とか本の印税で生活している人からしてみれば、それこそ死活問題になってくるわけだから。ただ俺みたいに別に印税で生活していない人は、一人でも多くの人に読んでもらった方がいいかなと思ったりするよね。結局、紙と電子書籍がうまく共存した方がいいと思う。

「てっぺん」目指して最高にツッパって生きていく。


――あらためて、これまでを振り返って、講師という仕事はどのようなものですか?


吉野敬介氏: 俺自身平たんな道を歩いて来たわけじゃないし、色々なことがあった。中学1年からグレ始めて高校卒業するまでずっとツッパっていたけど、それってある程度のてっぺんが見える。暴走族になって自分が上になって、先輩たちが引退したら自分が特攻隊長になって。それがてっぺんなのよ。それ以上はないのよ。でも24歳で予備校講師になってもう22年たつんだけど、てっぺんが見えない。自分が決めるてっぺんと、相手が決めるてっぺんも違うし、それぞれの分野でそれぞれのてっぺんがいるわけだから。だから、達成感がないね。一瞬的な満足感とか一瞬的な充実感があっても、長く続かない。授業も去年よりも絶対、今年の方がいいのかなと思ったりするし。同じ授業をやっているんだけど、進歩しないと飽きてしまう。常に高いものをです。そして心を込めた仕事は必ず実を結ぶと思う。

――今後の展望としては、やはり講師の「てっぺん」を目指していくということでしょうか?




吉野敬介氏: でもね、予備校講師もいつまでやれるか分からないな。飽きたら辞めたいなと思う。契約も複数年契約を結ぶ人もいるけど、俺は単年度契約しか結ばない。だって複数年契約を結んだら辞められない。何か新しいものがあるなと思ったらそっちに進む。ただ、何をやるにしても人間相手の商売はしたいよね。みんながハッピーになってほしいから。ただ何をやっていくのかはまだ分からない。また来年、再来年、予備校講師をやっているかもしれないし、やっていないかもしれない。変な話、日本にいないかもしれないし。人生って他人から見たらどうでもいいことなのに、全力投球している。そんな何をやっているか分からないから面白い。現状に満足していることがつまらないんだよね。「次へ、次へ」みたいな感じで、新たな刺激を求めているんだね。「いまが最高にツッパってます」みたいな感じだよね。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 吉野敬介

この著者のタグ: 『考え方』 『生き方』 『働き方』 『教育』 『お金』 『古典』 『手段』 『財産』 『講師』

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