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世界中の本好きのために

和田秀樹

Profile

1960年大阪市生まれ。85年東京大学医学部卒業。東京大学付属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)、川崎幸病院精神科顧問、一橋大学経済学部非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック院長。日本人として初めて、アメリカでもっとも人気のある精神分析学派である自己心理学の国際年鑑に論文を掲載するなど海外での評価も高い。2007年12月劇映画初監督作品『受験のシンデレラ』でモナコ国際映画祭最優秀作品賞受賞、本年8月には第二回作品『「わたし」の人生』を公開し映画監督としても活躍。

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変説することの重要性


――執筆されるときのご自分なりのこだわりございますか?


和田秀樹氏: こだわりはないですよ。日本の場合っていうのは、これまでと違うことを言うと変節したとか言ってさ、いいかげんなやつだと見るんですよね。だけど、時代が変わったんだったら、これまでと書く内容は変わって当然。何で変わって当然かと言ったら、25年前は日本人の学力って世界一だったわけだし、それから90年代の半ばごろから中国や韓国、台湾あたりに学力で負けだして、現在だったら中国人の中学生というのは、学校と家と塾で一日14時間ぐらい勉強しているのに、日本人は学校も含めて8.5時間しかやっていない。だから学校を除いたら中国人の3分の1か4分の1ですよね。

――そんなに違うんですね。


和田秀樹氏: だからそういう意味では、世の中が変わってきたのに同じことを言ってはいけない。つまり勉強のやりすぎの時は「ちょっと手を抜いていいんじゃないの」と言うだろうけど、やっていない時に「やらなきゃだめだよ」と言うのは当たり前のわけで。そこで前と同じことを言っているほうがよっぽど怖いですよね。それで、「あいつは変節した」とか、「昔と違うじゃないか」と言われたって、僕らは受験というのを商売にしてやっているから、問題の傾向が変わったら対策を変えるのは当たり前なわけです。だから本も自分の視点を変えてくれそうな本や、これって面白そうかもと思える様な本を読まないと、あんまりブランドで選びすぎるというのは得策ではないですよね。

和田さんが影響を受けた本とは


――今でもご自身の行動や考えに深く影響を及ぼしている本、もしくはある一時期でもガツンと来た本というのはありますか?




和田秀樹氏: 非常に影響を及ぼしたというのは、アメリカに留学中に読んだ『Object Relations in Psychoanalytic Theory』という、精神分析における対象関係という本ですが、これは精神分析の流派が別の20も30もの有名な学者たちの意見を、いわゆる精神分析というのは治療者と患者さんの関係性で治すのか、それとも治療者が患者の欲望をコントロールできるようにすることで治すのかということについての、どっちのタイプなんだということを分けて論じた本ですね。精神分析の色々な理論がクリアカットにわかるようになる本ですね。それは今でも僕が臨床心理の教員をやっている上で役に立ってます。物事っていうのは、やっぱりちゃんとした切り口で分けてみないと、一人一人の理論をみんな覚えていたところで、頭が混乱するだけなんです。物事というのはちゃんとした切り口で分類していくことによって、色々な理論というのははるかに読みやすくなるんだということを教えてくれた、とてもいい本だったと思いますね。で、あとはシリーズで読んでいくと、フロイトや私が一番信じている精神分析学者であるハインツ・コフートだとかという人たちというのは、一生涯が変節の連続のわけです。だから理論家というのはモデルチェンジをするものだということを、その長い流れの中で教えてくれるわけですよね。そういう物が、1冊の本でガンっと影響を受けたというよりは、フロイト、コフートが一生に書いていったものを読むということで受けた影響のほうが大きいですね。

和田さんにとっての読書とは


――最後に、和田先生にとって、読書または本というのはどういう存在ですか?


和田秀樹氏: 僕の場合は実際、文筆業をやる関係で、1冊丸々読む機会というのは随分減っているんですね。つまみ食いみたいなことばっかりをやっているから、そういう意味ではろくなもんじゃないんだけど。でも、テレビを見ていて、この中に出ている人同士で、考え方全然違うよなと思うようなことってあまりないんですね。だけど本はそれがある。そういう意味では、読書、本というのはなんやかんや言っても自分が年に40冊も書いているからすごい手抜きだろうとか思われるかもしれないけど、売れてくれないかなとかも思いつつも、一冊一冊意外に気合を入れて書くわけですよ。今映画とか作って思うんですが、映画監督とかでもそういうところがあって、テレビのディレクターとかはこれでずっと一生の代表作にするんだと思うような作品が仕事でできるかはわからないわけだけど、映画って何か知らないけど、役者もスタッフも監督も気合がなぜか入る。いまだにね(笑)。もう古いメディアで、テレビと比べものにならないぐらい見てくれる人が少ないのに、本編というと、低予算の物であったとしても気合を入れて撮るんだよ、なぜか(笑)。でも、一人の人間が気合を入れるということは、これはやっぱり読む側からするとラッキーだと思います。自分の代わりに調べてくれて、考えてくれてるんだからね。1冊二百何十ページにまとめるというのは、大変なんですよ。

――これからも映画もお忙しいとは思うんですけれども、またご執筆もされますか?


和田秀樹氏: 出し続けるでしょうね。だから僕自身はこれから考え方が変わるかもしれないけど、少なくても現時点で多作は恥ずかしいことではなくて、多作であるから自分自身の色々なことに好奇心をもっていけるし、多作であるから色々な視点が開けてくると信じています。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 和田秀樹

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